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赤の男が損をするのを願うのが女という性か

諸事情あっていわゆる子ども食堂のスタッフをしている。

訪れる子どもの大半が、軽度から重度のネグレクトを受けている様な子ども達だ。

お世辞にも子どもが好きそうなメニューを提供しているとは言えないので、食費を浮かせたいだけの馬鹿共からもあまり人気が無く

(もっともそういった輩は見れば大概分かるので追い返しているが)リピーターは自ずと本当に困っている子ども(と一部の親)が中心となる。

文字通り、お腹に入ってお腹いっぱいになれれば何でも良い。

もし自分達の様な活動が無ければ、飢える一方の子ども達だ。

ある種の社会的使命を持って手伝ってきたが、ある時から、妙なクレームが入る様になった。

端的に言うと「男子(男児)や父子家庭の子に食事を提供するのは如何なものか、控えて欲しい」というものだ。

要するに、男子は女子よりも食事量は多いし、父子家庭なら母子家庭よりも豊かだろうと。

それよりも女子や母子家庭への提供を優先すべきだと。彼女らへの支援が不足しては困るのだと。

クレームを言ってきた人間については、概ね見当がついていた。

30代後半~40代半ばか後半ぐらいの、女性達だ。

あまり良い職に恵まれていないのか、女性にしては貧相な格好か、

格好は貧相なのにスマホは最近機種だったり高そうな使い込まれたブランドバッグを持っていたり、そんな人達だ。

訪れた時に、ゴニョゴニョ文句を言うか、こちらの対応に不満そうな顔をしていたのが、悪い意味で印象的だった。

メールや電話では饒舌なのも、悪い意味で「ありがち」だった。

男子や父子家庭に多めに食事を提供しているから、彼女らにまで支援が回らないと言えば話はまだ分かるが、

勿論特定の家庭や男子だけに多く提供している訳でも無く、そもそも十分な程度には食事を提供している。

故に女子や母子家庭への支援不足などハッキリ言って被害妄想でしか無く、文句を言う暇があるなら

生活を改善する努力を少しはするべきだとすら思っている。

先にも書いたが、利用者の大半は、軽度から重度のネグレクトを受けている様な子ども達だ。

家でロクに食事も与えられず、コロナ禍での休校や長期休暇の間は、言葉通り我々が提供している食事は彼らにとっての生命線だ。

命の線をたかが性別で断ち切ってしまえなどと言うのは、異常差別者とすら個人的には思う。

オーナーも当初は相手にしていなかった。

しかし、特定していたクレーマーだけでなく、徐々に同種のクレームが増えていった。

さもネットで見ただけの様な、要領を得ない曖昧なクレーマー達。

誰が焚き付けたのかは知らんが、声だけが増えたクレームだった。

自分達に直接言えば、適当に処理・無視する事は可能だった。

しかし、オーナーが携わっている別会社や、支援団体の方に言われれば、対応せざるを得ない。

何かそういうクレームの手引に従ってやっているのか、という邪推すらしてしまう。

ベテランの女性スタッフは、クレームに影響されていった。

彼女と、彼女を支持する他の女性スタッフ達が中心のシフトの時は、

「レディースデー」などと称して、男子や父子家庭への提供をカットする様になってしまった。

オーナーも良くは思っておらず、自分も色々と直接文句は言ったが、ただでさえボランティアの様な活動だ。

ベテランスタッフの様な、出来る人材が辞めるのを避けたかった様で、

苦々しい調子で「なるべく控える様に」とオーナーが彼女らに言うのが精一杯だった。

ある日、よく訪れてたまに話す様になった男子が言った言葉が忘れられない。

「今日は食べれるの?」と。

勿論俺がスタッフにいる時は、男子らを拒絶する様な事はしていない。

自分がいない日に訪れて、そして断られたのだろう。

育ち盛りで伸びてきた小学校高学年の身長に似合わぬ、やせ細った体。

聞けば彼は母子家庭だが週に何度もロクに金も置いていかず遊びに行って帰って来ないらしい。

何度か、親子でも来た事はあるが、明らかに母の方には何らかの知的障害が学習障害がある様子だった。

悪い人では無さそうなのが、まだ救いだったが、親としての役割を果たせていないだろうというのは見て取れた。

このご時世に、満足な食事も出来ず、救いを求めてたどり着いた先で、「お前は男だから」と拒絶される絶望。

そんな思いをさせたくなんて無かった。

自分も、ネグレクトを受けてきたサバイバーだ。

飢えてロクに食べるものも無く、夜中に徘徊し飲食店のゴミ捨て場を漁って何とか生き延びてきた。

飢える辛さと悲しさと惨めさと苦しみはよく分かる。

少しでも、満足に食事を取れない子ども達を救いたいだけなのだ。

男子を拒絶するベテランスタッフが鬼畜なのか?と聞かれれば、少なくとも女子やシングルマザーらには親しく優しい。

聞けば彼女も俺の様にネグレクト体験があるサバイバーだ。

よくある放置子として、周囲の人々の善意に食らいついて何とか生き延びてきたらしい。

「自分の様な思いをする女の子を救いたい」

彼女がいつか言った事は、嘘では無いのだろう。

でなければ、こんなほぼボランティアで時には手弁当もある活動に熱心に参加など出来ない。

だからこそ余計に、「男だから」と拒否する事が、理解出来ない。

幼い弱者に、性別の違いなどある訳が無い。

「男子だから」救われない、拒絶される。そんな事はあってはならない。

例え男子や父子家庭への提供を辞めても、その分女子達に多く回る事は無い。

父子家庭に至ると、母子家庭の利用者と比較するとずっと少ない。

男子に二食、女子には一食、などと差別している事など絶対無い。

男子に提供しないから、女子に二食提供出来る様になる、という事も勿論無い。

なのに、一部の女は、男が少しでも得するのが許せない様だ。

男が損をするのが女の得になると思っているのかも知れない。

まるでフェミニズムだ。

それともこれが、女の性、本能、負の性欲とでも言うのだろうか?

だとしたら、あまりにも業が深いのでは無いか?

流石にこども食堂という活動の理念そのものをひっくり返すような事は起きていない(つまり釣りである)と信じたいが。