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元ケースワーカーの視点から家出少女にコンドームを配る意義について

過去にケースワーカーをしていた。生活保護とか、障害者福祉とか、その辺の。その時に、家出少女とも何度も接触した。

私はケースワーカーの立場だったので、彼女たちに何か物資を用立てることはできなかったけど、できるならコンドームだって配りたかった。それは売春を奨励しているわけではなくて、いとも簡単にセックスしてしまう少女たちに、君たちがセックスしてしまうのはわかったから、せめて病気と妊娠だけはしてくれるなよ、という思いからだ。

家出少女が家にいたくない理由は色々あるだろうけど、私の関わった子はシンプルに貧困またはヤングケアラーとしての人生に嫌気がさして路上に溜まっていた。家に帰ればプライベートのない空間(保護費で住めるアパートは選択肢が少なく、自室をもらっている子はほぼいなかった)で、家庭内はよくてギスギスしてる、悪ければ虐待がある(そして少女たちが被虐待者になる確率は相当に高かった)ことがザラだった。家に障害者がいれば、少女たちは、当たり前のようにケアを求められる。15歳くらいでも、障害者の親兄弟のおむつ替えや、家事(生活費の確保のためのアルバイトを含む)を役割として担わされる。少女たちは自然と家に帰らなくなる。

担当ケースに頼まれて家出したケース宅の娘さんを探しに行くと、なかなかの確率で男性と一緒にいた。家出少女と一緒にいる20歳前後の男性は、同じく家庭環境が悪い子か、別に家庭環境は悪くないが家出少女とは簡単にセックスできるので周りをうろちょろしている子が多い印象だった。環境が悪い者同士なら、傷の舐め合い的な恋愛関係になっていたし、そこまでいかなくとも寂しさやストレス由来で気軽にセックスしていた。男の子側の家庭環境が悪くない場合は、彼の家に少女を連れて帰ることもあった(実家暮らしなのに家出少女を連れて帰る子もいた)。その時に、彼らは家賃代わりにセックスを要求していた。少女たちも彼に家において欲しいと頼む原資がないのと、投げやりになっていたり、彼に恋していると思い込んだりで、簡単に要求を受け入れていた。

家出少女と一緒にいる成年者は、ワーカー相手には絶対に手を出していないと言い張ったが、後で少女から聞くと彼氏です、とか、売春していた、みたいなことも普通にあった。少女たちからすればファミレスで先にご飯を食べさせてくれた!とか、一万円くれるって言った!みたいなのも大事なので、声をかけられると容易くなびいてしまう。迎えに行った帰り道に、もう絶対こんなことはしないで、と言い含めても、少女からすればコンビニのバイトと成年者とホテルに行くことの違いがわからない。どちらもキツくて辛いんだから、じゃあ手っ取り早くてより稼げる方がよくない?と売春に流れてしまう。売春常習の子はなんとか家からひっぺがして施設に入れたりしたけど、高校生くらいの困難を抱える女の子を受け入れてくれる公的施設はメチャクチャ少ないため、施設の空きを待つように言いながら家に帰したこともある。だけど、施設入居を待てず、また家出しちゃう子も少なくなかった。

家出しても親戚や友人、彼氏の家に行けるような子はまだいい。だけど、私の担当していた少女たちはそうした頼れる相手を持たず、路上でよく知らない相手と関係性を構築していた。そして、彼女たちはストレス、さみしさ、お金、居場所、いろんな理由からやすやすとセックスする。多分、少女たちがストレスなく暮らせる、安心な環境を用意しないと、このセックスに対する敷居の低さは直らないと思う。だけど実際問題、少女たちが安心して寝泊まりできるような児童養護施設もシェルターも空きがないのである。(特に、本人の知能に問題がなく、世帯収入はそれなりにある家のヤングケアラーは、親から離して保護する理由も場所もなかった)。だったら、せめて少女たちが性感染症や望まない妊娠を避けられるように、コンドームを配ろう、となるのは理にかなっていると思う。

「コンドームを行き場のない少女に配布することが売春を奨励している」とツイートしている人もいるが、家出少女たちは別にコンドームがあろうがなかろうがセックスするし売春もする。制度や公的支援のキャパシティ上、すぐに彼女たちを安易なセックスや売春から引き離せないのなら、せめてこれ以上よくない事を招かないように、コンドームを持たせることの何が悪いのだろうか。

なお、私の書いている話は、「家出しても、少なくとも迎えに来てくれて、身の振り方を考えてくれる大人がいる少女」の話なので、世の中にはそうした大人のサポートが一切ない少女もいることを書き添えておく。私見だけど、そういう子は生き延びるためなら、私の相対した少女たちよりもっと容易くセックスするだろうな、と思う。そういう子に一時的な手当として、公的機関がコンドームを配布したっていいと思う。その結果として家出少女が病気になったり、望まない妊娠を避けられるのは、喜びこそすれ責めることではなくないか?と思う。