/note/social

東京都福祉保健局とColabo等との契約が越権行為な可能性が高い件

Colabo事業への監査結果を読んでみる

https://anond.hatelabo.jp/20221229122645

Colaboの監査請求と役人文学の話(追記あり)

https://anond.hatelabo.jp/20221229223951

の元増田です。

ちなみにこれも書いています。

Colabo・東京都の契約と公法上の契約について

https://anond.hatelabo.jp/20221221170225

Colaboと東京都の契約が公法上の契約に該当する可能性は極めて低く、また、仮に該当したとしても予定価格を算出しない根拠は不明であり、東京都には説明する責任がある

この度、東京都福祉保健局が、Colabo等と契約するにあたって財務局長から必要な委任を受けていなかったと話題になっています。

契約事務手続き、規則抵触か 東京都の若年女性ら支援事業

https://www.sankei.com/article/20230315-7LZXQVTDM5PJZAM66INOXQNPNU/?outputType=amp

これについて、『悪いのは東京都』だとか、『違反は違反だが大したものではない』とするブコメが散見されますが、役所の契約担当として極めて不自然なので少しコメントを残しておきます。

■ 根拠規定

東京都契約事務の委任等に関する規則

第三条(略)

2 前項に定めるもののほか、局の所掌に係る事項に関する契約のうち、次に掲げる契約に関する事務は、当該局の長に委任する。

一 予定価格が千万円未満(長期継続契約にあつては、月額に十二を乗じて得た額又は年額が千万円未満)の請負契約(印刷物の製作に係るものを除く。)、委託契約及び労働者派遣契約(略)

第十三条 局長は、特に必要があるときは、第三条第一項第一号、第二号及び第四号並びに同条第二項第一号及び第三号に掲げる契約で、その予定価格が当該各号に定める金額をこえるものにつき、財務局長を経て、知事に申請しその委任を受けることができる。

東京都福祉保健局は、今回これに違反していた可能性が高い、というわけですね。

■ これはほんの些細なミスなのか

本件について、『悪いのは団体ではなく東京都』『大した違反ではない』などというブコメがありましたが、個人的には極めて不自然な処理であり、なぜこうなったのか追及されるべきと考えます。

(上述の産経新聞のブコメより)

○結局のところ、悪いのはこらぼ等の金権支援団体ではなく東京都政だったということ。わかっていたことだけど。

○確かに転居したにもかかわらず住民票を移さない(==過料対象)のは悪いことだね。地方公共団体の長が規定する「規則」違反への罰則は過料なので住民票を移さないのと同じ罪度合い。まぁ良くはない。騒ぐことでもないが

○colaboは最初から何も悪くなかったということ。一方の行政側についても、「これはミスでしたでは済まされない話」なんて意見も主観に過ぎない。どういう事例ならミスでしたで済まないのかを決めているのが、規則。

官公庁の契約実務

実務的な話になりますが、契約権限・最終決裁者は誰だとか、どこまでなら随意契約の範囲かどうかというのは契約事務で担当者が最も気にする部分といっても過言ではありません。

例えば国の場合、本省で契約しようとすると大臣官房の会計担当課長が最終決裁者になる、すなわち、事業主体が○○局であったとしても大臣官房の会計担当課の合議(協議)がいるということで、時間もかかれば内容も微に入り細に入り詰められて非常に面倒です。

一方、同じ事業を○○局の出先機関たる地方✕✕所で契約しようとした場合、最終決裁者は地方✕✕所長になったりします。

※地方✕✕所は○○局の下部組織なので、明示的な違法不当がない限り、基本的に○○局のやりたいようにできます。大臣官房の会計担当課はどの省庁でも厳しい(めんどくさい)ので合議は避けたい人が多いと思います。

ここで、役人は本能的に、法令・内規の範囲内で最も楽に事務ができる方法を選択します。

今回の場合も、兆を越える予算を持つ東京都福祉保健局の契約担当者(Colabo事業担当者はともかく、福祉保健局内の契約事務担当者)がこれを知らなかったとは到底考えられず、あえて規則違反を犯したものと考えます。

その理由について最も容易に想像がつくのが政治家の介入ですが、これから明らかになることを望みます。

■ まとめ

○今回の規則違反が罰則的に軽いものだったとしても契約事務担当者の動きは極めて不自然と考えます。

○というか、事務規程については個別の罰則がないものがほとんどです。役人はそれを守ることが前提となっているため、ですね。守らなければ懲戒ですから。

○つまり、役人は罰則が軽かろうと、あるいは罰則がなかろうと、周知である法令・内規に違反することはしませんね。ポカミスならありますが。 追記

規則上、1000万円を越える契約でも、知事が指定する契約以外の委任契約は福祉保健局長に委任するとされています。

今回これに該当する可能性もありますが、仮にそれに該当するとしたら福祉保健局長か財務局長が議会答弁でそう回答するべきでしょうね。それがなされなかったということは、そういうことなんでしょう。

第三条(略)

2 前項に定めるもののほか、局の所掌に係る事項に関する契約のうち、次に掲げる契約に関する事務は、当該局の長に委任する。

(略)

二 前号に定めるもののほか、委託契約で、知事が指定する契約以外のもの及び修繕の請負契約(建物及び船舶の修繕に係るものを除く。)