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10代の妊娠を防ぐため「育児シミュレーションプログラム」を導入したところ逆に10代で妊娠する女性が増えて...

赤ちゃんシミュレーションプログラムでは、ワークブックやドキュメンタリー鑑賞を用いた教育プログラムに加え、週末には「赤ちゃんロボット」を使用して赤ちゃんの世話を疑似体験しました。被験者は赤ちゃんロボットを相手に授乳やげっぷの世話をしたり、寝付かせたり、オムツを替えたりといった作業を行う必要があったとのこと。

赤ちゃんシミュレーションプログラムの目的は、育児がどれほど大変なことなのかを少女らに実感してもらい、不用意な妊娠を思いとどまらせることでした。ワークブックにも赤ちゃんを産むことの経済的コストや健康問題についてのセッションが含まれており、ドキュメンタリーは10代で出産した母親に焦点を当てたものでした。

ところが、被験者の医療記録を20歳になるまでの6年間にわたり追跡した結果、標準的な妊娠予防プログラムに参加した少女の約11%が妊娠したのに対し、赤ちゃんシミュレーションプログラムに参加した少女は約17%が妊娠したことが判明。赤ちゃんシミュレーションプログラムは10代の妊娠を予防するどころか、逆に妊娠する割合を増やしてしまうことがわかりました。

また、標準的な妊娠予防プログラムに参加した少女は60%超が中絶を選択したのに対し、赤ちゃんシミュレーションプログラムに参加した少女の中絶率は50%未満でした。結果的に、赤ちゃんシミュレーションプログラムに参加した少女の約8%が10代で赤ちゃんを産み、対照群の4%と比較して2倍も10代で母親になる可能性が高いことが示されました。

この研究では妊娠した被験者に対するアンケート調査などは行われませんでしたが、ブリンクマン氏の推測では、赤ちゃんシミュレーションプログラムにおいて家族からのサポートや前向きな対応を受けた少女が、「自分でも赤ちゃんを育てられる」と自信を持ってしまった可能性があるとのこと。

今回の研究には関与していないモナシュ大学の研究員であるヘザー・ロウ氏は、確かに赤ちゃんシミュレーションプログラムは育児が非常に大変なことであり、24時間対応で十分に休憩も取れないものだと伝えるために設計されていたと指摘。それでも、もともと「赤ちゃんを愛して、世話をしてあげたい」と考えていた少女らにとっては、真逆のメッセージを送ることになってしまう可能性があると主張しました。

論文の査読者の1人であるノートルダムオーストラリア大学のジュリー・クィンリヴァン博士は、10代の妊娠における根本的な原因は社会的・心理的・教育的なディスアドバンテージであると、海外メディアのCNNに語っています。クィンリヴァン氏は、「今後の研究では、10代の妊娠を減らすための戦略として、脆弱(ぜいじゃく)な立場にある少女たちの教育機会の改善を促進する戦略を検討する必要があります。脆弱な女性に教育の機会を与えれば与えるほど、彼女らが就職して自分自身と子どもたちのヘルスケアを向上させる可能性が高くなり、早すぎる子育てを『キャリアパス』と見なす可能性も低くなります」と述べました。

本人が「赤ちゃんを愛して、世話をしてあげたい」なら、それはその意思が尊重されるべきなのでは?