/note/social

オープンレター訴訟の和解成立のお知らせ

この度、オープンレター「女性差別的な文化を脱するために」(以下、オープンレターと略します)差出人のうち12名を相手とする名誉損害訴訟(以下、OL訴訟と略します)において、和解が成立して訴訟が終了しましたので、ご報告いたします。訴状、反訴状、準備書面などの訴訟資料一式につきましては、改めて公開いたします。

和解内容の概要を整理すると、以下のようなものです。

①呉座は、オープンレターが呉座の名誉を毀損する違法な文書であるとの主張、北村紗衣准教授(当時、現在は教授)についてのTwitter(現X)投稿に関する主張を撤回する。

②呉座は、Twitter(現X)において、過去数年にわたって北村紗衣准教授に誹謗中傷を続けていたことを認める。

③オープンレターが、呉座を「歴史修正主義者」であると断定したものではないこと、呉座が「歴史修正主義に同調する振る舞いをした」とまで断定したものでもないことを、当事者は確認する。

本訴訟は、オープンレター差出人(原告)の債務不存在確認(名誉毀損)から始まりましたが、それとともに、不法行為(生活権侵害、名誉感情侵害)に基づく損害賠償も請求されていました。この“不法行為”とは、 私の代理人(吉峯耕平弁護士)のTwitter(X)での投稿、 通知書を指しており、差出人は、私の権利行使を 「女性差別撤廃に対するバックラッシュ(反動)」と主張していました。この不法行為の請求は、和解に先立ち、令和4年5月に取り下げられています。

私が和解に応じたのは、オープンレターが私を「歴史修正主義(者)」と断定するものではないとの確認が得られたことにより、本訴訟を提起した最低限の目的が達せられたと考えたためです。また、オープンレターは、私の投稿の何を指して「歴史修正主義」云々と指摘しているのかが全く不明でしたが、法的措置を通して、それが数件の「いいね」(私が備忘のためにメモ的に押したもの)でしかないことが明らかになっています。

和解のため、私は違法主張を撤回しましたが、和解条項はオープンレターの功罪については全く言及していません。

和解交渉の中では、オープンレターの趣旨に賛同することを原告側から再三求められましたが、それはキャンセルカルチャーを肯定することと同義です。オープンレターは、「女性差別的な文化」から「距離を取る」という名の下に、差出人らが女性差別的とみなした人物を社会的に排斥することを推奨し、署名運動によって対象者を追いつめる、典型的なキャンセルカルチャーです。私は、オープンレターの目的である女性差別の撤廃には賛同するが、その目的を達成する手段としてキャンセルカルチャーを肯定することはできないとして、上記要求は拒否しています。

オープンレターは公衆に向けられた公開意見書であり、自らの意見を顕名で公衆に問うもので、その評価は公衆に委ねられています。オープンレターが差出人・署名者の責任の下で公衆に問題提起するものである以上、オープンレター、さらには差出人・署名者に対し積極・消極の評価がなされることは当然のことあり、寄せられた様々な批判を一括して「女性差別撤廃に対するバックラッシュ(反動)」と断定することには疑問があります。

私は、オープンレターが強い批判を受けた原因は、キャンセルカルチャーという手法(その影響で日文研が私のテニュアを取り消したこと)や署名管理の不備であると考えています。オープンレターの社会的評価は、それが違法・適法かという法的評価とは別次元であり、和解成立後も公衆がオープンレターの意義や問題点を論じることは自由です。キャンセルカルチャーについて論じた準備書面も近日中に公開する予定ですので、キャンセルカルチャーの是非を考える材料にしていただければ幸いです。