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冷凍ケーキの件

この文は似たような業種の会社に勤めていた時の事情を元に

たぶんそうじゃないかなあ、程度の俺のあくまで勝手な妄想です。

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冷凍ケーキの件だけど、ブランド先製造ってこの手の大規模な製造問題を起こさない、

または起きても責任の所在をはっきりさせるために、

定期的に工場監査して問題発生時のトレース能力の確認を求めてくる。

分かりやすく言えば金と工数だけかかるクソ面倒なISO認証(食品だとFSSC)とかも求めてくるし、

力量怪しければ信頼できる業界大手を元請けに入れたりコンサル投入してくる。

なんでクリティカルポイントの管理や記録確認程度ではなく、

受託製造の人間による記録外の原因究明力とか改善力とかそこまで見ている。

そんな状態で製造ラインに乗せて出ていった冷凍ケーキの多数が崩れていましたなんて

明らかに製造・搬送ラインまたは付帯設備のコントロールポイント管理を極めて重篤に怠ってないと出てこないので

受託製造の社員クラスなら原因100理解ってるし、発注元のブランドも検討つく程度には理解ってる。

ではなぜ原因特定不能と言い張るのか。

これは断片的な報道からの俺の予想というか、受託製造あるあるだけど

製造ロット数の見極めやら、発注元の要求による難製造工程でライン大規模調整とか

発注自体がかなり遅いとか、原料入手の情勢が極端に悪化とかで(ケーキで言うと濃縮乳、鶏卵、生果物とか怪しいよね)

結果的に発注側の責任か情勢悪化による、受託側に責任のない難納が発生するときがある。

そんなときでも特定の期間商品では結構な割合で発注側の利益優先で、

万が一があっても知らんですよと受託側が折れて製造することがある。

まあそうよね、超超超特定の期間商品で大した違いもないのに百貨店ブランドで安くない値段取って

Amazonのセール期間みたくお届け遅れました原因は百貨店側ですなんて、百貨店ブランドの面で客に言えるわけがない。

受託「この納期無理です」発注「いやなんとか!ここなんとかすればいいでしょ、後の責任持つんで~」みたいな風景、

B2Bの会社だったらあるでしょ、風景見えてこない?見える見える。

結果理解してたのか理解してなかったのか、見えないアウトの線を踏み越えて製造をしてしまったことになる。

見えないアウトの線ってのが今回のミソ。

製造の話に移るけど、

食品製造ラインは一定の品質保つために工程毎の温度管理と時間管理を徹底していて、

これは基本的には食品の汚染を防ぐ事が主目的であるんだけど、形状とか見た目の品質維持にも効果がある。

ある程度経験上や理論上の安全率を付加した設定になってて、

大きく逸脱しない限りはほぼ同質の製品が得られるようにされている。

似たような物を扱っていた会社にかつて居たので冷凍ケーキの経験はないが、

まあ下記の工程が標準工程として監査や認証時、そして試験製造にて確認されているはず。

滅茶苦茶ざっくり書けば

スポンジは何処其処でウン度の低定温庫で入庫ウン時間からウン時間で使用して

クリームの温度はウン度冷蔵で仕込みはウン日前で、オーバーランのエアはウン度で粘度はどうだ。

充填と手加工や機械加工の通過時間はウン分までで定期的な風味検査。

窒素トンネルはウン度でウン分、トンネルフリーザーはウン度ウン時間で定期的に固化状態見る。

箱詰めのタイミングは冷凍前か後か知らんが、恐らくトンネル出てからウン分の間に封函。

冷凍工程に紙入れたら結露してふにゃってコーティング紙でもかなり強度落ちるからたぶんそう。

パレ積みされてリフトで冷凍倉庫に置いてその間に細菌検査の結果見て出荷準備して、

細菌検査の結果次第でブランド元の出荷許可が降りたら出荷。

ここでちょっと考えてほしいのが冷凍の工程で、

冷凍ケーキほどの大きさでなくても、窒素トンネルやトンネルフリーザー程度では表面が固化するだけで、

サニタリサーモぶっ刺して-18℃でも中のスポンジは良くて5℃とかそんなもんと思われる。

(空気の層ってかなり冷えづらくて、家を二重窓にしたらなかなか屋外と熱交換しないのと一緒)

現実問題、中身の固化は冷凍倉庫で入っている間に進んでいて、

通常の期間商品であれば中継の冷凍倉庫で場合によっては1ヶ月以上保管されることもあり、その間に固化している。

これは結構暗黙知な部分で、冷凍倉庫で固化が進むことを製造工程として書きたくても、

自社倉庫を出庫してからは運送屋や倉庫屋に固化の責任を負わせられないし、

では完全に固化するまで自社の冷凍倉庫に入れる事は現実的に無理。

ここに保管期間という見えないアウトの線が引かれている。

これ出荷指示してる人間が理解ってんだか理解ってないんだか知らないけど、

工程管理上にも書いてないんやからええやろ、クリスマス間に合わんかったらどうすんねん転がすぞコルァ!と

報道でもあるように冷凍時間を2週間から25時間に短縮すると、

(これを冷凍時間と呼ぶのかは微妙なところで諸事情で保管期間と言いたいが)

それはまあサーモグラフィで見ると真っ青で、抜き取りサンプルにサーモぶっ刺して-18℃の記録が取られてても、

中は全然凍ってませんがな、ということになる。

冷凍車やってる運送屋さんは、この手の事情は多少知っているので万が一があると丁重に扱うけど、

物流拠点のそれも冷庫仕分けなんて、息ゎ苦しいしマヂ苦しい酸欠で死にそうシュワッチ…シュワッチ!なマジのキツイ職場なんで、

そんな暗黙知は知らないし教えても理解しない奴しか来ないので、やっぱり雑に扱われて凍ってなければグシャッとなる。

ただ物流拠点に来た時点で中身凍っていることはそもそも前提だし、

凍ってないものを一般的な所作で流して潰れた責任までは彼らは負わされていない事だけは擁護したい。

よって

百貨店「運送屋が雑すぎ」

運送屋「落としてもないし荷崩れもないが?」

百貨店「物流拠点どうなってんねん」

物拠点「凍ってないもの扱わせて責任問うんか?」

百貨店「受託の製造がおかしい」

受託側「お宅の無茶な要求と出荷指示晒したろか?」

百貨店「(なんでや!俺悪ないのになんで俺が悪い言われるんやねん)」←悪い

御客様「オラァ!どないなってんねんや!ケーキみたいにグシャッと転がすぞコルァ!!」

百貨店「原因特定不能です(すっとぼけ)」

こうなります

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余談なんだけど、受託側の責任で難納期発生や製造上の問題が発生したら、

機会損失も含め損害賠償する契約になってることが結構あって、ブランド元が顔真っ赤で乗り込んでくるんよな。

もう受託側は全面謝罪と補償するしかない。

でも今回は報道で取材されてた受託側責任者が、百貨店に聞いてくれ責任はあっちなんて言う状況。

百貨店が青い顔してすっとぼけてのは、百貨店が何かしらでチョンボしてると見る。

あと一般的な期間商品の冷凍品てのは大体半年前までに試験製造入れて、

消費者に渡る2ヶ月前に生産ラインから製品として出てくる。

この消費者に渡るまでの時間差が倉庫料として効いてきて、

俺が知ってる頃でも倉庫料きつい言うてたので今はもっとギリギリ攻めてるかもしれん。

もっと余談なんだけど、冷凍庫の保管を冷凍工程としないのは

品質保証の規定作成に深く関わったことが無いから想定だけども、

恐らくそれはHACCPで定める清潔区域に出来ない都合であって、

例えば倉庫がトラック搬出の都合で外部と貫通せざるを得ないので汚染区域にするしかないとか。

結局工程扱い出来ないのだから冷庫保管の時間の根拠を示すことはないのだが、

実質工程扱いなので時間と根拠を示したら示したで汚染区域で製造工程とはけしからん。

となるはずなので現場の人間は、冷庫保管はあくまで検査結果待ちとか出荷指示待ちの建前で、

暗黙の了解で運用してきたと考えている。

これは誰がやりだしたんか知らんけど、

冷凍品の製造業と冷凍倉庫の関係を無視した汚染作業区域とか清潔区域を設定させて

冷庫で保管中の製品は保管中であり製造ラインではないし、

凍結具合を管理してないしコントロールしてないならそれ工程じゃないよね。

更に清潔区域ではない場所で製品凍結させてるとか駄目でしょ。(超要約)

とか言い出して杓子定規に適用しないと超絶難癖つけてくる認証機関とか、

現実知りつつ一度出た認証を突くのはやぶ蛇と放置してきたせいだと、今回の冷凍ケーキ事件について俺は勝手に思ってる笑