こうしたデザインや仕様の違いを知ると、「なんで男性の服の方が便利なの?!同じ価格払っているのに、女性ばかりが損する!」と怒りが湧く人がいるのもわからないではありません。
ただこれが、女性差別の結果生まれているのか、というと……。
もともとアパレルメーカーで企画をやっていた私の経験から考えると、決してそういうわけではないんだけどな…という思いがあります。
そもそも、女性服のデザインのほとんどは女性がやっていますしね。
デザイナーズブランドだったら女性服のデザインに男性もそこそこいますが、ユニクロとか、お手頃価格で買えるブランドの場合は、女性服のデザインは8割方女性がやっている、と思っていいんじゃないでしょうか。
上司に至るまで女性であるケースも少なくないので、「現場デザイナーの女性がポケットをつけても、上司である男性がそれを却下してしまう」みたいな構図も当てはまらないと思います。
例えばポケットやボアの厚みの話でいうと、シルエットを考慮した結果である可能性がまずは考えられます。
ポケットをつけるということは、そこに袋布といってポケットの物を入れる部分の布をつけることになります。するとその部分の布が単純に3重になることになりますよね。
これが結構ごわついて、シルエットに悪影響を及ぼすことも多いです。
レディースの服はメンズに比べてシルエットが細身で体に添っていることも多いため、この布の重なりが想像以上にシルエットを変えます。
そして、私がパーソナルスタイリストとして多くのお客様について洋服をお見立てした経験から言うと、服に機能性を求めてポケットが欲しい!と言う人と、シルエットが綺麗でいて欲しいから、ポケットなどごわつくのが気になると言う人と、人数はあまり変わりません。
「女性でもポケットが欲しい人はいる!」という主張なら大いに賛同できますが、「ポケットがあって困る女性はいないはずなのに、ないのはおかしい!」という主張は、それはそれでジェンダーに囚われすぎて多様性を無視した主張なんじゃないかと感じます。
また、メンズとレディースの服で最も違うのは、そのバリエーションの数です。
型数(デザイン数のことです)が、レディースはメンズと比じゃないくらい多いんです。
レディースの場合は「同じデザインの服をドバッと作ってコストカット!」っていうのが、男性に比べてしづらいんですね。
それに加えて、レディースの方がトレンドの移り変わりが早く、同じデザインを長期間売るのが本当に難しい。
だから余計に「たくさん作ってコストカット」ができないんですよね。