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元市民病院脳外科医 転職先でも医療トラブル 透析治療せず患者死亡か

医療過誤を含む複数の医療事故に関与して2021年8月に赤穂市民病院を依願退職した40代男性医師を採用した医療法人医誠会(大阪市北区)が5日、必要な透析治療を行わずに患者を死亡させたとして、遺族から慰謝料など約4960万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こされた。訴状によれば、同医師が「入院理由の確認を怠った」ことなどで患者への透析治療が実施されず、入院から4日後に死亡したという。

訴状などによると、死亡したのは大阪府内の男性(当時90歳)。腎臓に慢性的な疾患があり、同法人が運営するクリニックで週3回の人工透析を受けていた。透析予定日だった昨年1月7日、新型コロナ検査で陽性となり、クリニックと同系列の医誠会病院(大阪市東淀川区、当時)の救急外来に搬送された。

クリニックからは患者が透析を必要としている旨がファクスで送られていたにも関わらず、初期対応した同医師は「どういう適応で入院との判断となったかは不明」などとカルテに記載。患者は翌日になっても透析治療を受けられず容態が悪化し、本人が望んでいなかった延命措置を施された上で「窒息による低酸素脳症」で11日に死亡した。

原告は「透析治療が行われなかったことにより肺に水が溜まり、溢水を原因とする肺水腫を引き起こし、それにより窒息によって低酸素脳症となり、亡くなった」と因果関係を指摘。患者の受け入れ後、「直ちに透析治療を行う義務を怠った」などとして、病院側の注意義務違反を訴えている。

遺族によると、患者の入院後、長女が看護師に病状説明を求めたが「救急医は救急対応で忙しいため話せない」などとして説明対応や医師との面談を拒否され、入院3日目の9日夜に患者が心拍停止の状態で発見された後に病院から呼び出された。また、その後の病院との話し合いの中で院長は、患者を受け入れてから容態が急変するまでの間、一度も「医師の診察はなかった」と認めたという。

原告として提訴した患者の長女は「父が延命措置を受けた翌日に別の医師から説明を受けましたが、新型コロナが原因との説明は一切ありませんでした。窒息による低酸素脳症を引き起こしたのは透析治療の不実施以外に考えられません」と話す。長女は現職の看護師で「父がなぜこのような亡くなり方になってしまったのか不審に思って確認する中で、最初に対応した救急医が赤穂市民病院でいくつもの医療事故に関わった医師だと知った」という。被告病院のあまりの杜撰さに医療従事者としてこのままではいけないという強い思いから訴訟提起を決意した。

原告代理人の平井健太郎弁護士は「入院時に患者の基本的な診療情報を確認さえしていれば亡くなることはなかった」と初動対応した医師をはじめ病院側の落ち度を指摘する。

医誠会は6日、赤穂民報の取材に「訴状が届いていないのでコメントしかねる」と回答した。

同医師は2019年7月から赤穂市民病院に脳神経外科医として在籍。医療過誤1件を含む8件の医療事故を起こしたとされ、当時の院長から手術禁止を命じられたまま依願退職し、その翌日に医誠会病院に救急医として採用された。関係者によると、現在は別の医療法人が運営する大阪府内の医療機関で勤務しているという。

同医師をめぐっては、赤穂市民病院での医療過誤の被害患者側から民事と刑事の両方で訴えられている一方、自身は専門医試験の受験を妨害されたなどとして、赤穂市と前院長、上司だった科長を相手取り、昨年10月に損害賠償請求訴訟を起こしている。

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