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フローレンスのふるさと納税に関する論評

年末から色々と議論を呼んでいるフローレンスさんの渋谷区のふるさと納税の件です。

結論、「問題があるか?」というと問題はあると思います。

また、適法とも言い切れない微妙さがあり、なかなか難しい話なように思えます

ふるさと納税のルールと対照して分析している方がいない様子なのでせっかくなのでまとめてみました。

この記事で説明している通り、ふるさと納税の返礼品のような「対価」を用いた寄付金募集をNPO(認定NPO含む)は行えません。

もし仮にやった場合、集まった資金は収益事業収入という課税収入になってしまいますし、認定NPOの場合は寄付者が控除を受けられなくなるので、集金の難易度が格段に上がります。

ちなみに何を以て「対価」と見なすかどうかは、寄付に対する返礼品に経済的価値があるか、寄付対象のNPOとの関連性があるか等に基づいて総合的に判断されます。上述したフローレンスの返礼品が「対価」であることに疑いはないでしょう。

しかしふるさと納税の寄付先に指定されたNPOは返礼品という「対価」を活用して実質的に寄付を募ることが可能になっていますので、フローレンスはこれをうまく利用した形です。

フローレンスは同様の手法で一昨年は1億円、昨年は8,000万円あまりを集めています。返礼品という対価があるからこそ集まった金額だと思います。

しかし上記の通り、本件のような資金集めは本来、団体単独ではなかなか難しいです。対価がなければ多額の資金は集めにくいですが、対価があると寄付者が税控除を受けられなくなるという矛盾があるからです。

しかしフローレンスは渋谷区のふるさと納税をトンネルにすることで、①渋谷区は税収を得られてヨシ、②フローレンスは非課税収入(自治体からの交付金)を得られてヨシ、③寄付者は単に認定NPOへ寄付するよりお得な税額控除を受けられる上に返礼品までもらえてヨシ、という三方ヨシのスキームを作り上げて多額の集金を成功させています。

当たり前ですが、そんじょそこらのNPOが自治体に対して「うちはおたくが本拠の事業者じゃない(後述)し、集まった資金は別におたくの地域向けってわけではない活動全般に使うけど(後述)、おたくのふるさと納税にいっちょ噛ませてよ」と声を掛けても門前払いされることが大半だと思います。

そうならず、そんな「力技」がまかり通っているのはフローレンスと渋谷区との結びつきが強いことや、広報力の高さを背景に自治体にも税収という形でメリットを提示できるからです。

業界のパイオニアであり、大手団体であることが、ある種の特権を確立させているとも言えます。

そんなことが健全であるとは言い難いですし、またその特権を駆使した「力技」が完全に適法であるかというと、以下の通りそうでもないように思えます。

総務省の告示で不適当と定められているのは、「特定の者に対して謝金その他の経済的利益の供与を行うことを約して、当該特定の者に第一号寄附金を支出する者(以下「寄附者」という。)を紹介させる方法その他の不当な方法による募集」等です。

フローレンスは多数のインフルエンサーに自身への寄付に繋がる宣伝を呼び掛けたようです。

有形の利益ではなく、また明示的でないにしても、実質的に無形の利益(下記で示唆されているのは保育士の無償提供?)を提供する対価としてステルスマーケティングが行われているのだとしたら、問題がある可能性があります。

しかし、繰り返しになりますが、自治体に対して「うちはおたくが本拠の事業者じゃないし、集まった資金は別におたくの地域向けってわけではない活動全般に使うけど、おたくのふるさと納税にいっちょ噛ませてよ」と声をかけてそれを成立させた上に、インフルエンサーを動員して大規模な広告宣伝を行ない、実際に集金を成功させられる事業者はごくごく一部の特権的な地位の団体に限られます。またその行為がふるさと納税の趣旨に合致するかどうかはかなり疑わしいです。

フェアな競争環境だとはとても思えません。涙を呑んでいるNPO等も多いのではないでしょうか。