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日本の賃金が上がらない理由(大企業の中の人目線で)

結果、日本の人事制度に基づく昇給は2%程度に落ち着いたが、この水準は何なのかというと、定年退職者を考慮すると、総人件費が増えない水準である。

総人件費が増えない水準に昇給を設定したら、2%だったというのが正しい。これを制度としてビルトインすることで、たまたまアホが社長になっても、

自動操縦され人件費倒産や人材流出が発生しないようにした。日本企業ではアホが社長になることがあるので、この仕組みがビルトインスタビライザーとして機能するのだが、一方で、有能な人が社長になっても人事システムが強固すぎて変えられなくなってしまった。採用、評価、育成、配属、報酬、代謝といった人的な仕組みが全て関係してくるのである。

アホ学者は日本の賃金が低いのは生産性が低いからというが、ぶっちゃけ生産性がどうのは賃金とほとんど関係ない。

なぜかというと、そもそも、人事制度に生産性をベースに給与を決める仕組みがビルトインされてないからである。計算式に入ってないのだから、関係ないのである。

また、そもそも、生産性が急上昇していく局面で人件費を生産性に比例されずに低く抑えるための給与制度だったわけなので、生産性向上しないと賃金が上がらないと言っているアホ学者は現実も歴史も知らないのである。

これは日本の賞与の特殊性が影響している。日本では月給に連動して残業代や社会保険料(多くの場合退職金や年金も)が決定されるため、企業は月給を増やしたくない。

このため、本来月給として支払うべき額を賞与として払うという慣行が強い。年間の賞与が5−6ヶ月であれば4ヶ月程度は固定賞与として赤字でも支払う。

つまり実質的に変動するのは1−2ヶ月分にすぎない。過去最高益でも賞与がせいぜい1ヶ月分増えるだけなので人件費の増加が抑制される。

なんでこんなインチキになっているのかといえば、企業側はとにかく残業代や社会保険料を抑制したい(昔は賞与に社会保険料がなかったし、その後も手当てにすると減らせるとか経費にできるとか、様々な財テクがあった)ということがあったし、

従業員側は賞与を安定支給してもらいたい(業績が悪い時にも安定支給してほしい、固定費化して欲しい)ということがあったので、このような「給与の賞与化」が行われてきた。

個人的には、解雇規制よりも賃金の透明性を高めることが競争を促し賃上げにつながるように思える。本来はあまり関係ないのだが、他社はどうなのか気になるマンが多い。

オープンになっている新卒初任給は唯一競争が一定程度働いている。これは透明性が高いからで、社内の理論はともかく、他社より少し高くしたいのである。

ガンとなっている人事制度を内部改革で頑張って変えること、賃金の透明性を高めて他社との比較を容易にすること、これが必要。

また、プレッシャーという点では役員報酬の開示も有効であると思われる。クソ業績でも報酬を増やしているオーナー社長が度々話題になるが、透明性が高められばふざけんなとなる。