「戦争中、小学校に代用教員が二人いて、ときどき抜身の日本刀をひっさげて歩くのを得意にしていた。この先生方は純粋な理想主義者で「天皇陛下」という言葉を口にするとき、気をつけをするのが一瞬でも遅れると頬を殴るのであったが、その眼は大変美しく澄んでいたものである。」
「この代用教員たちは、反戦後しばらくして学校から姿を消したが、次に見かけたときには赤旗を押し立てたトラックの上で、大音声をはりあげて共産党の選挙演説をやっていた。その時も、やはり彼らの眼は美しく澄んでいたので、私は少々呆れたのであった。」
「私は白刃を嫌ったように、赤旗を押し立てたトラックを好まなかった。「正義派」たちはいつも「美しい」眼を輝かせて叫ぶ。