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誰も使ってないのに「マイナ保険証」が「強制導入」へ…国がゴリ押しする「医療DX」がもたらす最悪の事態

今年12月から新規の保険証は発行されなくなり、マイナンバーに紐づいた保険証、いわゆる「マイナ保険証」へと移行する。それは必然的に病院や医師にデジタル化をうながすことになるが、高齢や資金難で対応できないケースもある。地方都市の医院や診療所においてはそれが顕著だ。前編記事『マイナ保険証で地方都市の医療は崩壊する…現役医師が実名で怒りの告発』より続いて、デジタル化に伴うサイバーセキュリティの問題についても考えてみよう。

国は「医療DX」の推進のため、すべて医療機関や薬局に、原則として昨年4月からオンライン化するよう求め、これを義務化してきた。これに従わないと、地方厚生局の集団指導の対象になり、最終的には保険医療機関の指定取り消しや保険医登録の取り消しもチラつかせ脅しをかけている。

こうしたネット環境の整備だけでも負担が大きい上に、将来的なランニングコストやセキュリティ管理の費用なども導入した医院がすべて負担しなくてはならない。

仮にセキュリティが完璧でないと、どこからウイルス攻撃を受けるかわからないし、一旦セキュリティに問題が発生したら責任を問われることになりかねない。

日本で起きているサイバー攻撃の多くは、病院のセキュリティーシステムの甘さに原因がある。だが、病院の本来業務は患者を治療することなので、よほど経営に余裕があるところを除きセキュリティの専門家を雇うのは難しいのが現実だ。

それなのに、なぜここまで性急な対応を求めるのかについて国からは合理的な説明がないのが現状だ。

こうした国のやり口に対して、すでに1415人もの医師たちが、国を相手に提訴を起こしている。医師免許という国からの認可をもらって活動している人たち。その医師たちが、国を相手に法廷闘争するというのは、なみなみならぬ事情があると言える。

[...]だが、大金を使ってPRしているにも関わらず、その利用率は6月の最新の数字でも1割に満たない9.9%に止まっている。9割以上の人が、病院や薬局の窓口で「健康保険証」を使っているわけだ。

言うまでもなく、多くの情報が紐付けされればされるほど、システムへの接続箇所も膨大に増え、脆弱な箇所からのウイルス侵入が容易になりかねない。

医療情報だけでなく、あらゆる個人情報が一枚のカードに紐づけられるということは、ハッカーにとってはそのぶん価値が上がるお宝になると言い換えてもいい。ウイルスの開発にはコストもかかるが、コストをかけてもやる価値が高まるということだ。

しかも、これだけあらゆるものをカードに詰め込んでも、それが使われているかは別問題。会計検査院が2022年度に調査した結果によると、マイナンバーシステムには1258もの機能があるが、そのうち4割が利用ゼロで、しかも多くが利用率1割未満だった。ところが、14〜22年度だけで全国的なネットワークの整備・運用、自治体システムの改修で2100億円も使っている。さまざまなものを一枚のカードに入れ込めば入れ込むほど、メンテナンスなどにかかる無駄金も増えていくということだ。

今の政府のやり方を見ると、第二次世界大戦の末期、すでに小回りが効く戦闘機の時代になっているにも関わらず巨大戦艦にこだわり続けて敗戦に至った、愚かで無責任な軍部を連想する。

そして、その暴挙の末の敗戦という痛手を一心に浴びたのは、日本国民だ。

医療機関がどんどん潰れ、「マイナ保険証」を渡されても便利さを感じる人が少なく、個人情報が漏れても政府は責任を負わない。こうした政府の姿勢に不信感さえある中で、それでも4ヵ月後は「保険証」を廃止するという。