2022年7月、事件の発端となった“ナメクジ大量発生”の投稿は瞬く間に拡散され、世間を賑わすことに。被告人は記者会見を開くなどしていた。
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その約1年半後の今年3月、仙台地検は被告人を偽計業務妨害などの罪で起訴。起訴内容は、同店舗内でナメクジが大量に発生している事実も、料理に混入させた事実もないのに、事実であるかのように装ってTwitter(現X)に複数回にわたり投稿して、運営会社を一時休業に陥らせるなどの業務を妨害したというものである。
検察側は、被告人の動機を「復讐心」であって、善意の告発ではないと判断。弁護側も動機について、悪意であることは争っていない。また、偽計業務妨害の罪などの適用についても、正当な方法を用いた告発ではないと認めている。
「『偽計』にはウソをつくことだけではなく、たとえ投稿が事実であっても社会通念上許されない手段で告発したことも含むと考えています。本件の告発方法はSNS上であり、度が過ぎているため『偽計』の成立は認めます。ただ、起訴内容で読み上げられたウソとされる投稿については、被告人はウソをついていないと考えています」(弁護人への取材から)
そして、この発信力を用いた“告発投稿”も後を絶たない。当然、本件のように「公益通報」にはならないため、告発投稿が発覚して会社を解雇されたとしても、解雇の不当性が認められずに有効となってしまう。さらにはSNSを用いると、告発の手段の相当性を欠くという理由から、告発者として十分な保護を受けられないまま「逮捕」という形も十分にあり得てしまうのだ。
本件も当初は、「威力業務妨害罪」で逮捕されており、SNSに投稿したことが営業妨害をさせた「威力」と判断されたものと思われる。その後、検察側はナメクジの大量発生はウソだということが立証できると判断し、「偽計業務妨害罪」で起訴となったのだろう。
9月27日の第5回公判で論告・弁論が行われた。検察側は被告人が労働環境や店長への不満から復讐しようとした動機について、身勝手で短絡的だと指摘。仙台中田店が閉店に追い込まれてしまったことや、本件投稿が広く拡散されたことなど、結果が重大だとして、懲役1年6か月を求刑した。
一方で、弁護側はナメクジの大量発生は事実だと主張。これまでの公判で明らかとなった、被告人の壮絶な生い立ちなどから、SNSが唯一信頼のできる存在だったことなどを強調して、寛大な判決を求めた。