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「懲役」と「禁錮」 きょうから「拘禁刑」に一本化【Q&Aも】

罪を犯した人への刑罰の「懲役」と「禁錮」が刑法の改正で廃止され、6月1日から「拘禁刑」という新たな刑罰に一本化されます。新たな刑罰の導入は118年前の刑法制定以来、初めてで、刑務所では再び罪を犯すことがないよう、立ち直りに重点を置いた指導へと大きな転換が図られます。

“懲らしめ”から“立ち直りに必要な指導”へ

明治40年に刑法が制定されて以来、日本の刑罰は主に、刑務所での労働などの刑務作業が義務づけられた「懲役」と、こうした作業の義務がない「禁錮」に分かれていましたが、刑法の改正に伴い、1日から「拘禁刑」に一本化されます。

「拘禁刑」では、懲らしめの意味合いでの刑務作業がなくなり、高齢者や障害者、依存症の人など、受刑者の特性に合わせて必要な指導をすることとされています。

背景には、出所した人が再び罪を犯すケースが多い現状があり、受刑者が社会に戻って再び罪を犯すことがないよう、立ち直りを重視しています。

受刑者の立ち直りに詳しい龍谷大学の浜井浩一教授は「社会と隔絶されてきた刑務所がなるべく社会に近い環境となり、立ち直りに向けて機能すれば再犯防止につながる。一般の人たちも、刑務所の変化を理解し、サポートすることが重要だ」と話しています。

Q.懲役、禁錮と拘禁刑の違いは?

いずれも刑務所に収容する刑罰ですが、作業の内容や指導方法に違いがあります。

改正前の刑法にあった懲役は労働などの刑務作業が義務づけられているのに対し、禁錮は刑務作業の義務がありませんでした。実際は禁錮の受刑者のほとんども、希望して作業を行っているのが実情でした。今の刑務作業は「懲らしめ」の意味合いが強く、立ち直りや社会復帰のための時間を確保しにくいという指摘もありました。

新たに導入された拘禁刑では、懲らしめの意味合いの刑務作業がなくなり、その分、立ち直りに向けた作業や指導が行われます。

法務省によりますと、高齢者、障害のある人、薬物などの依存症がある人など、特性に応じた24の立ち直りのプログラムが用意されているということです。

Q.なぜ、立ち直りに重点が置かれるのか?

再犯をして刑務所に入る人たちがあとを絶たないからです。

法務省によりますと、おととし新たに刑務所に入った人の2人に1人、55%が2回目以上の入所でした。こうした状況は20年ほど変わらず、高止まりが続いています。特に生活に困窮した高齢者などの窃盗や無銭飲食、依存症を背景とした薬物事件などが相次いでいます。

本来であれば福祉の支援が必要な人たちが刑務所に繰り返し入所していて、こうした状況を変えようと、大きな転換が図られました。

Q.拘禁刑の導入は再犯の防止につながるのか?

受刑者の立ち直りに詳しい龍谷大学の浜井浩一教授は「これまでの受刑者は起床から食事、会話、作業まで完全に管理され、自分で考える必要がなかった。このため出所後に仕事に就いても同僚とのコミュニケーションが難しくなるなど、社会生活での大きな障害になっていた」と指摘しています。そのうえで「拘禁刑の仕組みが機能すれば社会になじむ出所者が増え、再犯防止につながるのではないか」と話しています。

一方、刑務所だけでなく、私たち社会の側の意識も変える必要があるといいます。

浜井教授によりますと、イタリアやノルウェーでは、受刑者が刑務所の外に出て働く機会を設けるなど、受刑者と地域の交流を増やして再犯率を下げた例があるということです。

浜井教授は「海外で成功したケースでは、受刑者の立ち直りについて市民も交えた議論が長年続いていた。日本でも一般の人たちが刑務所のあり方について関心を持ち、理解を深めることが再犯防止につながるのではないか」と指摘しています。