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「女子枠」は効果すら怪しい…私が「女子枠」に反対し続ける理由(週刊現代,國武 悠人)

要約:

■ 1. 女子枠導入の経緯

  • 文部科学省の要項: 文部科学省の入学者選抜実施要項で、「理工系分野における女子」を「多様性を確保する例」の一つとして挙げたことが、女子枠の急増につながった。
  • 補助金・助成金の評価指標: 大学への補助金や助成金の評価指標に女性比率が含まれることが、女子枠導入の動機になっている可能性が指摘されている。
  • 「アファーマティブ・アクション」: 一部の大学は、女子枠を「女性が理系に進みにくい環境」を是正するアファーマティブ・アクション(AA)と位置付けている。

■ 2. 女子枠の問題点

  • 性別のみの特権化: 文科省の要項が家庭環境、居住地、国籍など多様な要素を挙げているにもかかわらず、女子枠は「女性」という性別のみを特別扱いしている。これにより、より深刻な困難を抱える男子生徒を排除し、受験機会を奪うという不公平が生じている。
  • 正当性の欠如: 「ロールモデル不足」を理由に女子枠の正当性を主張する反論があるが、同様の理由で地方出身者や貧困層も支援を必要としている。このため、性別のみに特化した女子枠の正当性は導き出せない。
  • 違法性の疑い: 憲法違反の疑いや、欧米で性差別として禁止されていることが指摘されている。
  • 効果の不確実性:
    • 効率の悪さ: ロールモデルを育成するには、博士課程を経て准教授になるまで15年もの歳月がかかり、効率が悪い。
    • 「上澄み」効果: 女子枠は、元々中堅難関大学に進学する予定だった女性を難関大学に吸い上げる「クリーム・スキミング」効果しかない可能性が示唆されている。理工系に進学する女性全体の総数を増やす効果は不明確である。
    • 女子生徒の意識: ある調査によると、女子生徒の文理選択や志望校決定に女子枠が影響を与えた割合は非常に低い。女子枠が、元々理系志望だった女子生徒が楽に入学する手段となっている可能性が高い。

■ 3. 推進派の主張に対する反論

  • 「構造的差別」の証明困難性: 親や社会からの干渉を受けている女性が多いとする「構造的差別」の主張は、反証可能性に乏しく、その存在や度合いを明確に証明することは難しい。内閣府の調査では、男性の方が進路選択で親からの干渉を受けている可能性さえある。
  • 男性の進路選択の困難: 統計的に上昇婚を志向する女性が多いため、男性は高収入につながる理系や特定の文系学部に進むよう、親からの圧力を受けている可能性がある。男性の方が進路選択の幅が狭くなっているとも言える。

■ 4. 現場での問題と代替案

  • 学力レベルの不一致: 女子枠で入学した学生は、一般入試の学生と比べて学力レベルが低いという声が教員から上がっている。
  • 代替案「逆境指数」: 貧富の格差、居住地域、教育投資の差など、複数の要素を総合的に評価する「逆境指数」の導入が妥当である。
    • 優位性: 貧困層や地方出身者、両親が非大卒の学生など、より深刻な困難を抱える受験生を公平に評価できる。
    • 公平性: 複数の項目で評価することで、特定の要素(例:所得の一時的な操作)による不正対策を薄めることができる。
    • コスト: 女子枠より事務コストはかかるが、社会正義を追求するアファーマティブ・アクションとして当然支払うべきコストである。