/note/social

参政党の躍進は民主主義の脅威か、健全なダイナミズムか?...「イギリスの失敗」が照らす参議院の存在意義

要約:

■ 1. 参議院選挙におけるポピュリズム政党の躍進

  • 参政党躍進の背景: 参議院は選挙区・比例区の範囲が広く、知名度やネット選挙が有効であるため、参政党のような新興のポピュリズム政党が議席を得やすい。衆議院より比例的な選挙制度も追い風となる。
  • 支持者層の類似性: 参政党の支持層は、英国のEU離脱(Brexit)支持層と類似しており、既存政党から離反した保守層や、経済のグローバル化に取り残された労働者などが挙げられる。

■ 2. 参議院が持つ民主政治の安定性

  • 「調整弁」としての機能: 参議院は、ポピュリズムという民意の激流を一度受け止め、穏やかに政策へと導く「ダム」や「調整弁」として機能する。
  • 急激な変化の抑制: 半数改選であり、権限が衆議院に劣るため、参政党の議席数が少ない(15/248議席)現状では、政策が急激に変わることはない。
  • 政策への穏健な変換: 参政党の躍進は、自公政権に外国人政策などの対応を迫り、有権者の不満が政策へと穏健に変換される契機となった。
  • 「予選」としての機能: 次期衆院選に先立ち、メディアの注目を集めることで、参政党の力量や実態をチェックする「予選」として機能する。また、他党との連携や期間が空くことで、支持者の熱狂が薄れ、政策が丸くなる可能性もある。

■ 3. 参議院研究における見立ての変化

  • 筆者の旧見解: 筆者はこれまでの著書で、参議院を「ポピュリズムへの防波堤」と論じていた。選挙区・比例区が広いため、大規模な組織票(業界団体、労働組合など)が重要性を増し、小選挙区制の衆議院では拾い切れない多元的民意を反映すると考えていた。
  • 新たな課題: 今回の参政党の躍進は、この「防波堤」という見立てを揺るがすものであった。

■ 4. 参政党との共存と「打算的な多元主義」

  • 「寛容」の必要性: 参政党の主張には問題があるが、支持者の「声なき声」を頭ごなしに否定すれば、社会の分断は一層深まる。不寛容を過度に抑圧すると、かえって狂信を生むという渡辺一夫の警句が示唆的である。
  • 「打算的な多元主義」: 渡辺一夫は、人間の「想像力と利害打算」が、必然的に寛容を選ぶようになると信じていた。寛容や多元主義はリベラルの専売特許ではなく、利害で動く普通の人々もその価値を理解し得る。
  • 参議院の真価: 参議院は「無意味な第二院」ではなく、ポピュリズムと共存しながら民主主義の健全なダイナミズムを担う「意味のある緩衝装置」として、その真価を試されている。
  • 結論: 参政党の動向は、日本の民主主義が「現実を否定せず、理想に溺れず、その間で揺れながら対話を続ける」という強靭さ(レジリエンス)を持っているかの試金石となる。