■ 1. ソ連の目指した社会主義
- 思想: カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスのマルクス主義に基づき、貧困や格差のない平等な社会を目指した。
- 最終目標: 共産主義社会の実現。これは、階級がなくなり、警察や軍隊、政府などの国家権力が不要となる、完全に平等で自立的な社会である。
- 初期段階: 1917年のロシア革命後、ウラジミール・レーニン率いるボリシェヴィキ党が権力を掌握し、社会主義国家ソ連を建設した。
■ 2. スターリン時代に確立された社会主義制度
- 一国社会主義: ヨシフ・スターリンは、他国での革命を待たずソ連単独で社会主義を完成させる方針を掲げた。
- 主要な制度:
- 生産手段の国有化: 工場や農地などの経済資源をすべて国家が管理し、私有財産を禁止した。
- 計画経済: 国家が生産や流通の全てを決定し、市場原理を否定した。
- 階級の廃止: 資本家などを廃止し、すべての国民を労働者として扱った。
- 労働者による権力: 名目上は労働者の代表が国を動かすとされたが、実際には共産党幹部による一党独裁体制が確立した。
■ 3. ソ連がうまくいかなかった3つの理由
- 計画経済の非効率性:
- 実態の把握困難: 広大な国土の需要を中央で把握することは不可能だった。
- ノルマの弊害: ノルマ達成が優先され、品質を無視した大量生産が横行した。
- 物資の不足: 国民生活に必要なトイレットペーパーや食料などが慢性的に不足した。
- 改革を阻む社会構造:
- 恐怖政治: スターリンによる大粛清により、有能な人材が失われ、国民は自由に発言できなくなった。
- 特権階級の出現: 共産党幹部が特権階級化し、改革を拒んで自らの地位を守ろうとした。
- 軍事・宇宙開発費の増大:
- 冷戦の影響: アメリカとの冷戦により、軍事や宇宙開発に莫大な予算が投入された。
- 経済の停滞: 国民生活に関わる産業への投資が後回しにされ、消費財の不足やインフラの老朽化が進み、経済が停滞した。
■ 4. ゴルバチョフの改革とソ連の崩壊
- 改革の試み: ミハイル・ゴルバチョフは、「ペレストロイカ」(経済改革)と「グラスノスチ」(情報公開)を掲げて改革を試みた。
- 改革の失敗:
- 不満の噴出: グラスノスチにより、過去の歴史への不満や共産党への不信感が噴出した。
- 独立運動の活発化: 各地の共和国が次々と独立を求め、国家の統一が揺らいだ。
- 経済の混乱: ペレストロイカは計画経済と市場原理が混在し、物価上昇や物資不足を招いた。
- 権力の喪失: 改革は失敗し、ゴルバチョフは求心力を失った。
- ソ連の解体: ボリス・エリツィンが民衆の支持を得て台頭し、1991年12月にソビエト連邦は正式に解体された。