赤穂市民病院脳神経外科に在職中、上司から暴行を受けたほか専門医試験の受験を妨害されたなどとして、男性医師が科長と当時の院長、赤穂市を相手取り、慰謝料として合計2000万円の損害賠償を求めた民事訴訟の判決で、神戸地裁姫路支部は17日、「(原告の主張は)いずれも事実的または法律的根拠を欠く」などとして訴えを棄却した。
判決で池上尚子裁判長は、「(上司の科長から)故意に階段から突き落とされ、うつ病に罹患するほど精神的苦痛を被った」などとする男性医師の主張を「原告が誤って足を踏み外した結果、生じた可能性を排斥できない」として退けた。また、血管内治療専門医試験の申し込みに必要な症例報告リストに科長が署名せず、「受験を妨害された」との訴えについては、「リストの記載内容に誤りがある疑いが残っていた」とし、署名しなかった科長の正当性を認定。その上で、院長の過失や赤穂市の使用者責任を否定した。
一方、科長が男性医師を相手取り、「虚偽の訴えにより精神的苦痛を受けた」などとして慰謝料など330万円の支払いを求めた反訴についても棄却した。
男性医師は2019年7月から21年8月まで赤穂市民病院に在籍。その間、脳神経外科手術で8件の医療事故を起こしたとして、院長から手術の執刀中止を言い渡された。このうち、病院が医療過誤を認めた症例をめぐっては、病院と連帯して約8900万円を患者と家族に支払うよう命じた同地裁支部判決が今年5月に確定し、神戸地検姫路支部が業務上過失傷害罪で起訴した刑事裁判が今後行われる。
判決を受けた各関係者のコメント(9月17日午後5時時点)は次のとおり。
▽科長=「こちらの主張が通り本当にほっとしました。被告側の各弁護士、関係者に本当に感謝しています」
▽赤穂市(赤穂市民病院総務課)=「まだ判決文を見ていないため、回答は差し控える」