■ 1. 21世紀型支配者の破滅的思考
- 終末の日の救命ボート: 超富裕層は、環境破壊、核戦争、パンデミックなどの「事件」によって世界が終焉に向かっていると確信している。彼らは自らだけが生き残るための「救命ボート」、すなわち巨大なシェルターや宇宙移民を模索している。
- 「無意識の思考パターン」: 21世紀型の支配者(IT起業家やヘッジファンドのトップなど)は、アレクサンダー大王のような過去の支配者と根本的に異なる価値観を持っている。彼らは、自らが主導するITやデジタル経済による競争が世界を住みにくくしていることを自覚している。
- 誰も信じない未来への投資: 彼らの多くは、誰も成功を信じなかったビジネスに投資して成功を収めてきた経緯がある。この経験から、「誰も信じていない破滅」に投資し、生き残りを賭けることが合理的であると考えている。
- 社会性の欠如: 20世紀型の支配者(政治家や財閥トップ)は家族や社会に対する責任感を持っていたが、21世紀型の支配者にはそれが欠けている。彼らは家族の規模が小さく、特定の場所に縛られることなく、自己の利益を最優先して行動する。
■ 2. デジタル経済と社会の破壊
- 非人間化と道徳性の喪失: デジタル経済は、ウォルマートが地元の商店街を潰し、Amazonがさらに非人間的な労働を生み出したように、社会を非人間化させ、道徳性を失わせる。
- バグとしての人間性: Uberのようなデジタルプラットフォームは、道を知らない運転手や態度の悪い運転手といった「人間性」を、修正すべき「バグ」とみなしている。これは、我々にとっての利便性と引き換えに、社会の弱者を切り捨て、破滅へと向かわせるゲームである。
- 終わりのあるゲーム: 支配者たちが追求するデジタル経済は、世界を住みにくくしながら利益を得る「終わりのあるゲーム」である。彼らがどんなに富を蓄積しても、このゲームは最終的に世界そのものを破壊し、彼ら自身も住みにくい世界に取り残される。
■ 3. 破滅からの逃避と現実
- シェルタービジネスの隆盛: 核ミサイル基地を転用した居住施設や、農園付きの地下シェルターなど、富裕層向けの「終末対策」サービスが多数存在している。
- 道徳的ジレンマ: シェルター運営者は、暴徒よりも、飢えた赤ん坊を抱えた女性のような道徳的ジレンマを引き起こす存在を最も恐れている。彼らは、そのような苦悩から逃れるために完全な隔離を求めているが、現実にはそれは不可能である。
- 自己の欺瞞: 支配者たちは、世界の終わりを作り出しながらも、自分の子供や両親にはその悲惨な光景を見せたくないと考えている。彼らは自己の良心や家族を守るために、破滅を招く行動をとりながらも、その責任を一人で引き受けようとする奇妙なマッチョイズムを示している。
■ 4. 解決策
- 破滅を止めること: ラシコフは、破滅から逃れる唯一の方法は、破滅させない仕組みを社会全体で作り出すことだと主張している。
- 社会実験: 21世紀型の支配者が、社会性をほとんど持たないまま巨大な権力を握るという社会実験は、人類史上かつてない試みである。この実験が世界をどこに向かわせるか、我々は注視する必要がある。