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山上徹也被告だけではない、高まる「ローン・オフェンダー」の脅威…ネット言説で思想が過激化、攻撃や...

要約:

■ ローン・オフェンダーの定義と背景

  • 定義: 警察庁は「特定のテロ組織に関わりのない過激化した個人」と定義している。
  • 呼称の変遷: かつては「ローン・ウルフ(一匹狼)」と呼ばれていたが、この言葉に犯罪を美化するニュアンスがあるとして、「ローン・オフェンダー」に置き換えられた。
  • 犯行の特徴: 計画、準備、実行を単独で行い、過激派組織や特定の宗教団体には属していない。
  • 心理的背景: インターネットでの情報収集を通じて「自分の敵」を発見したり、「自分を不遇にさせたもの」への憎悪を募らせたりした結果、妄想の世界に入り込んで犯行に至るとされる。
  • 範疇とされる人物: インターネットスラングでいう「失うものが何もなく、犯罪へのためらいがない」「無敵の人」もローン・オフェンダーの範疇に含まれる。

■ 日本国内の具体的な事例と動機

  • 岸田首相襲撃事件(2023年4月): 選挙の応援演説中に爆発物を投げ込んだ無職の男(当時25歳)が逮捕された。
    • 犯行の特徴: 警察の調べで組織や思想とは無縁であり、爆発物の作り方をインターネットで調べ、材料をネット通販で購入していた。
    • 動機: 政治家志望であったが立候補を断念し、公職選挙法に不備があるとして国を提訴して敗訴した。SNSで反応がなかったため、「世間の関心を集めるためには騒ぎを起こすしかない」と考え犯行に及んだ。
  • 鉄製パイプ銃製造事件(2024年4月): 自宅でパイプ銃を製造し逮捕された男(26歳)は、「母親が多額の献金をした旧統一教会への恨み」と、「社会への不満」を動機に挙げた。
  • 自民党本部前での火炎瓶・官邸突入事件(2024年10月): 50歳の男が、事前に安倍元首相や岸田首相の襲撃事件に関連する情報をインターネットで調べていたことが判明している。

■ 警察の対策と事件防止への課題

  • 脅威の認識: 警察白書(2023年)は、ローン・オフェンダーの脅威が現実化しているとして、従来の組織監視型では対応できないことを認めている。
  • 専門部署の新設: 警視庁は2024年3月に、ローン・オフェンダーを専門に捜査する「公安3課」を新設し、情報の一元的な集約・分析を開始した。
  • 情報統合センターの設置: 警察庁は2024年6月に、前兆情報を察知・集約・分析するための「LO脅威情報統合センター」を庁内に設置した。
  • 対策の課題: ローン・オフェンダーは単独で活動するため予兆の把握が極めて困難である。また、警察に寄せられる情報が不確かで玉石混交であり、AIを活用しても元の情報精度が低ければ捜査は難航する。
  • FBIの調査結果: FBIの報告によると、ローン・オフェンダーの7割に友人や家族がいた。彼らの多くは犯行前に危険な言動を示しており、周囲の人々がその予兆に気づける立場にあった。
  • 解決策の方向性: 家族や仲間が最後の砦となり、ローン・オフェンダーとなり得る人が発する警告サイン(危険な言動)について周囲の人々を教育し、懸念を報告できる仕組みを整えることが重要である。