■ 1. AI有権者による投票予測の精度
- AI有権者の生成: 年齢、性別、居住地などを設定した1万人分の「AI有権者」を生成し、参院選の投票先を尋ねた。
- 予測精度の高さ: 実際の有権者の投票先との比較で、20代の予測が最も高い精度で一致した。
- 上位政党の的中: 20代の比例代表の政党別得票率上位を「国民民主」「参政」「自民」の順に的中させた。
- 精度の要因: AIが主にインターネット上の公開情報を学習しており、ネット利用者の割合が高い若年層のデータ量が予測の正確さにつながったと考えられる。
■ 2. AIによる深層心理の反映と社会実験
- 有権者の本音を代弁: AI有権者は投票先を決めた理由として、「外国人政策が地に足のついた感じがして好感」(国民民主党に投票と回答した20代女性の設定)や「自民党は日本人を後回しにしている」(参政党に投票と回答した20代男性の設定)など、率直な本音を語り始めた。
- 深層心理の鏡: ネット上の言葉を大量に学習したAIは、人々の深層心理を映し出す鏡といえる。
- 仮想空間での社会形成: 米スタートアップのシミュレーションで、最大1000人分のAIをオンラインゲーム上で共同生活させたところ、職業に分かれて社会を形成する過程が確認された。
- 独自の経済圏と協調性: AIは宝石を通貨とする経済圏を構築し、仲間の捜索で連携するといった協調性を示した。
- 人間の行動原理の解明: 仮想空間上の社会実験は「人間の行動原理を解明する手がかり」であり、人類の未来予測能力を拡張し、文明の発展を推進する技術になりうると期待されている。
■ 3. 情報拡散の加速と超知能開発競争のリスク
- 社会の不安定化: SNSの普及に伴い情報の拡散スピードが高まり、民意は移ろいやすくなった結果、世界の経済政策不確実性指数は過去20年間上昇基調が続いている。
- 「神の視座」の実現: AIにSNS上の膨大なデータを学習させることで、社会を見渡して将来を予見する「神の視座」が現実のものとなる可能性がある。
- テクノロジー企業の動向:
- 米xAI: イーロン・マスク氏が率い、X(旧ツイッター)を買収して約6億人のユーザーの投稿を学習させ、「人類の進歩を加速させるプラットフォームを構築」することを目指す。
- 米メタ: 約35億人のSNS利用者を抱え、超知能開発を目指す新組織を立ち上げ、「数年の時間軸で我々のシステム全体を根本から変える」ことを企図する。
- 深刻なリスク: 人間の心の奥底を代弁できる高度なAIは、プライバシー侵害のリスクが従来とは次元の異なるものとなる。
- 民主主義への脅威: AIが人々の心理操作や世論誘導に使われ、民主主義の基盤を損なう恐れがある。
- 悪用と社会の監視: SNS運営企業は偽情報流布や投資詐欺アカウント放置など、テクノロジーの悪用を防ぐことに繰り返し失敗してきたため、社会全体が超知能の開発の行方と使い道に目を凝らす必要がある。