■ 1. 日弁連による支援の本格化
- プロジェクトチーム発足: 日弁連が加害者家族支援への本格的取り組みに着手し、近々プロジェクトチームが発足する
- 会長のマニフェスト: 渕上玲子会長が会長選で加害者家族支援をマニフェストに掲げ、2025年度の会務執行方針に「犯罪加害者家族支援」を明記した
- 制度の未整備: 犯罪者の家族が社会的・経済的・精神的に深刻なダメージを受けるにもかかわらず、支援制度は未整備のままである
- 歴史的意義: 加害者家族が被害者でもあるという認識に基づく支援概念は新しく、日弁連が本格的に取り組むのは歴史的出来事である
■ 2. 日本社会における加害者家族への差別
- 家族単位の責任追及: 日本は欧米に比べて個の確立が遅れ、家という観念が強いため、家族ぐるみでバッシングを受ける
- オウム事件の事例: 松本智津夫元教祖の三女・松本麗華氏は就職困難、銀行口座開設不可、3つの大学全てから入学を拒否された
- 大学の入学拒否: 和光大学は差別問題に造詣が深いリベラルな学長の下で、父母からの電話殺到を受けて苦渋の決断として入学を拒否した
- 同調圧力の強さ: 学長が個人の信条を曲げざるを得ないほど、社会の同調圧力が強かった
- 自殺に追い込まれる事例: 埼玉連続幼女殺害事件では宮﨑勤元死刑囚の父親が自殺し、加害者家族が自殺に追い込まれる事例は複数存在する
■ 3. マスコミ報道の問題
- 心ない落書き: 和歌山カレー事件の林眞須美氏の自宅の塀は落書きで埋め尽くされ、そこに住む4人の子どもたちへの配慮がなされなかった
- 過剰な取材: 事件が起こるたびにマスコミが容疑者の自宅に押し掛け、身内の逮捕で衝撃を受けている家族にチャイムを押し続ける
- 加害者と家族の区別の欠如: 加害者家族を加害者と区別して考えるという当たり前のことを、社会が認識できていない
- 社会構造の問題: 欧米のように個が確立されておらず、家族と犯罪当事者が区別されずに同時に責任追及される風潮がある
■ 4. 関東弁護士会連合会の宣言
- 画期的な宣言: 2023年9月29日、関東弁護士会連合会の定期大会で「刑事加害者家族の支援に向けた宣言」が採択された
- シンポジウムの開催: 関東弁護士会連合会と埼玉弁護士会が主催したシンポジウム「刑事加害者家族の支援について考える」が開催された
- メディアへの配慮要請: 事件報道には加害者家族への影響の考慮と心情への配慮が必要であると指摘された
- 長期的取り組みの必要性: 社会的背景に根付いている問題であり、理屈だけでは解決できず長期的な取り組みが必要である
■ 5. 支援活動の歴史と展開
- World Open Heartの設立: 阿部恭子氏が2008年に仙台でNPO法人を立ち上げ、加害者家族支援を自覚的に始めた最初の例として知られる
- 全国からの相談殺到: 2008年12月に河北新報で報道されて以降、全国から相談や問い合わせが殺到した
- 無料のボランティア活動: 加害者家族からお金をいただかず基本的にボランティアで活動し、ホームページに電話番号を公開して連絡を取りやすくした
- マスコミ対応の支援: 最近は事件発生初期のマスコミ対応が大きな仕事となり、取材陣との窓口を担当している
- 山形県弁護士会の取り組み: 2018年から弁護士会として取り組みを始め、「犯罪加害者家族支援センター」を立ち上げた
- 日弁連の関心: 現会長の会務方針に取り上げられており、いずれ何らかの組織が立ち上がる見込みである
■ 6. 松本麗華氏の著書出版
- 書籍化の経緯: 創出版から松本麗華氏の著書『加害者家族として生きて』が出版される予定である
- 記事のまとめ: 月刊『創』でのインタビューや寄稿記事をまとめたもので、彼女が13歳の時から折に触れて記録してきた内容である
- 映画の公開: 2025年6月公開のドキュメンタリー映画『それでも私は Though I'm His Daughter』がきっかけとなった
- 情報不足の解消: ネット上にきちんとした情報が少ないため、過去の記事をまとめて書き下ろしを加えて刊行することにした