/note/social

【特別対談】林芳正とエコノミスト吉崎達彦が語る 後半 part2 (国外、アメリカ情勢について)

要約:

■ 1. 日米合意の特異性と成果

  • 従来と異なる交渉: 今回の日米合意は従来の貿易交渉と大きく異なり、評価が非常に難しい内容である
  • 交渉の基本構造の変化: 従来の交渉では必ずスコーピング(アジェンダ設定)があり、関税を下げる自由化交渉が基本だったが、今回は上げられた関税を下げてもらう交渉という前例のないものだった
  • 関税の維持: 出来上がりとしては関税がほとんど触られておらず、全く触っていない状態でまとまった
  • 赤澤氏の貢献: 週末ごとにワシントンに通い、疲れも見せずにラトニック商務長官との個人的な関係を気づき上げた
  • SNSの活用: 元官僚出身の議員らしからぬ弾けたSNSで「べっちゃんラトちゃん」と呼び、一緒に枠組みを作っていこうという方向に持っていった

■ 2. 投資重視の戦略転換

  • 貿易協定の限界: 日米貿易協定は2019年に既に作られており、関税も下がっているため、さらに関税を下げても貿易赤字が本当に減るかは疑問である
  • 投資による雇用創出: 関税よりもアメリカに投資してアメリカに雇用を戻し、仕事を増やし、そこから輸出が出る方が効果的である
  • 日本の投資実績: 現在アメリカに最も投資をしているのは日本である
  • 政策金融の活用: 日本が支援パッケージを作り、JBIC(国際協力銀行)とNEXI(日本貿易保険)を使ってアメリカへの投資を促進する仕組みを構築した
  • 商務長官の関与: 当初はベッセント財務長官が担当とされたが、投資を増やす枠組みという性質上、ラトニック商務長官が中心となった

■ 3. 自動車関税引き下げの世界的影響

  • 分野別関税の引き下げ: 総合関税だけでなく分野別関税も全ての国に対して25%から15%に引き下げられた
  • 他国への波及効果: 日本の成功をすぐにEUと韓国が真似し、世界標準のようになった
  • 他国の諦めと日本の成果: EUも韓国も自動車関税が下がるとは思っておらず25%で諦めていたが、日本が引き下げに成功した
  • 感謝されるべき成果: 韓国やヨーロッパからお礼してもらってもいいぐらいの話であり、投資の枠組みをしっかりやっていくためにも重要だった

■ 4. プラザ合意40周年との対比

  • 40年間の変化: 総裁選告示日の9月22日はプラザ合意40周年にあたり、40年前は円高が大変だったが今は円安が辛いという状況に変化した
  • 変わらない構図: 多くのことが変わったが、日本がアメリカに振り回されるパターンは変わっていない
  • 安全保障の基盤: 昔は貿易摩擦があっても安全保障がしっかり繋がっているという安心感があったが、トランプ政権では経済と安全保障が入り混じってきている
  • 日米安保の不変性: 経済分野と安全保障分野の組み合わせの中で、日米安保体制が変わっていないことが根底にある
  • 同盟の成功: 40年間の日米関係は色々あったが、同盟関係としてはかなりの成功と言える

■ 5. アメリカの現状維持勢力からの転換

  • 現状維持勢力としての日米: 日米関係が40年間安定していた大きな理由は、両国が共に現状維持勢力でゲームチェンジャーではなかったからである
  • トランプ政権の変化: 最近のトランプ大統領は現状に不満を持つ勢力であり、アメリカが現状維持ではなくなってきた
  • 製造業の空洞化: バンス氏の著書やパットナム教授の研究が示すように、アメリカは3つに分かれてアメリカンドリームが望めない人が増えている
  • 良い仕事の減少: 製造業が外に出て安い賃金を求め、サービス業やプラットフォームに置き換わり、工場の良い仕事が減っていった
  • ゲームチェンジャーとしてのトランプ: メイク・アメリカ・グレート・アゲインの意味では、少なくとも国内においてはゲームチェンジャーである

■ 6. JBICとNEXIの新しい役割

  • 中間層復活への貢献: アメリカに再び分厚い中間層が戻ってくるために、この枠組みを使って投資・雇用・賃金支払いを実現し、日本が最も貢献したという結果を目指す
  • 同盟関係の深化: 中長期的には同盟関係がさらに深まることを目指す展開である
  • 従来の役割: JBICとNEXIは元々発展途上国の危険な国で仕事をするための輸出保険機関だった
  • 新しいミッション: 新興国のリスクがなくなってきた今、アメリカの製造業を立て直すという新しいミッションを持つことになった
  • 本来業務の遂行: 便利なお財布として困っているわけではなく、本来業務を先進国のアメリカでやることで、投資がうまくいけば中長期的に日米の絆が深まる
  • 実例の重要性: 説明を広げないと誤解が広がるため、しっかりと実例を作ることが重要である