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芸術家向けベーシックインカム制度の正式導入をアイルランドが決定。実証実験で約140億円の経済効果

要約:

■ 1. 制度の正式導入決定

  • 導入時期: アイルランドが2026年から芸術家向けベーシックインカム制度を正式に導入する
  • 給付額: 週あたり約375ドル(約5万6250円)、1カ月約1500ドル(約22万5000円)
  • 対象人数: 募集枠は2000人
  • 応募開始: 2026年9月に応募が開始される予定
  • 応募資格: 現時点では詳細な応募資格は発表されていない
  • 拡大の可能性: 追加予算が確保されれば対象者を拡大する可能性がある

■ 2. 試験導入の経緯

  • 検討開始: ポストコロナにおける芸術分野支援のために検討が始まった
  • 試験導入時期: 2022年秋に試験導入された
  • 延長期間: 今年初めに決まった6カ月間の延長を経て来年2月に終了する
  • 背景: コロナ禍でライブコンサートや各種イベントが軒並み中止され、数多くのアーティストが大幅な収入減など特に大きな影響を被った

■ 3. 試験導入の対象分野と選定方法

  • 対象分野: ビジュアルアート、演劇、文学、音楽、舞踊、オペラ、映画、サーカス、建築までの幅広い分野
  • 応募条件: 作品売上による収入があること、専門団体に所属していること、評論の対象となっていることなど、プロのカルチャーワーカーであることを証明するものを2点提出
  • 応募状況: 9000人を上回る申請者のうち8200人が適格と認められた
  • 選定方法: 適格者の中から2000人が無作為に選ばれて給付金を受け取った
  • 比較対照群: さらに1000人の適格申請者が比較対象の給付なしモニターに選定された

■ 4. 経済効果の評価

  • 評価機関: イギリスに拠点を置くコンサルティング会社アルマ・エコノミクスが第三者評価を実施
  • コスト: 試験導入によるこれまでのコストが7200万ユーロ(約126億円)
  • 経済効果: その経済効果は8000万ユーロ(約140億円)近い
  • 費用対効果: コストを上回る経済効果が確認された

■ 5. 受給者の収入変化

  • 芸術関連収入の増加: 受給者1人あたりの芸術関連収入が平均で月額500ユーロ(約8万7500円)以上増加した
  • 芸術関連以外の収入減少: 芸術関連以外の労働による収入は約280ユーロ(約4万9000円)減少した
  • 他の補助制度への依存度低下: 他の補助制度への依存度が低下し、参加者への給付額が1人当たり平均で月額100ユーロ(約1万7500円)減少した

■ 6. 政府の評価

  • 文化・通信・スポーツ大臣の声明: パトリック・オドノヴァン大臣がアーティストやクリエイティブワーカーへの投資による経済的リターンは当該分野だけでなくアイルランド経済全体に即効的なプラスの影響をもたらしていると指摘
  • 拡大時の予測: 対象を拡大した場合、芸術作品制作が22%増加し、消費者が支払う芸術作品の平均価格は9~25%低下するとの推定

■ 7. 世論調査の結果

  • 調査時期: 2024年10月にアイルランド政府が世論調査の結果を発表
  • 回答者数: 1万7000人
  • 支持率: 97%が同プログラムを支持している
  • 選定方法の希望:
    • 47%が経済的必要性に基づくべきだと回答
    • 37.5%が実績による選定を支持
    • 14%が無作為抽出を選択

■ 8. ベーシックインカムの位置づけ

  • 制度の性質: アイルランドの芸術家向けベーシックインカム制度(BIA)は、ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)の一形態
  • UBIの定義: 政府が必要最低限の金額を無条件で全国民に支給する制度
  • 注目の背景: AIをはじめとしたテクノロジーの進化による雇用喪失への懸念が高まる中で注目を集めている
  • 代表例としての評価: ベーシックインカム支持者の多くがこの制度の代表例としてアイルランドのBIAを挙げている

■ 9. UBI Labネットワークの主張

  • 組織の性質: UBIの可能性を追求する市民による世界的な分散型組織
  • 制度拡大の要求: アイルランド全体での制度実施を求めている
  • 必要性の強調: 試験導入プログラムが示すようにベーシックインカムは機能し、人々は今こそUBIを必要としている
  • 社会的意義: UBIによって初めて世界が直面する数多くの社会的・経済的・環境的危機に立ち向かい対処することができる
  • 今後の活動: 社会におけるベーシックインカムの実証実験を支援し、それが持続可能な政策であることを示す取り組みを継続する

■ 10. 専門家の見解

  • UBI Labリーズ主宰者の発言: ラインハルト・ハスが2024年6月にビジネスインサイダーの取材に応じた
  • 試験導入の十分性: これ以上の試験導入は必要ないと主張
  • 現在の必要性: 世界の人々は今まさに社会面、経済面、そして環境問題におけるさまざまな危機的状況に立ち向かうためベーシックインカムを必要としている

MEMO: