■ 1. ロシアによる停戦案の拒否
- ザハロワ報道官の発言: 3月7日、ロシア外務省のザハロワ報道官がウクライナとフランスやイギリス側から提示された停戦案を拒否
- 停戦案の内容: 第1段階として1ヶ月のミサイル攻撃やドローン攻撃による両軍の兵站・軍事施設への攻撃停止
- ロシアの主張: 和平の基盤は確固たる停戦合意によってのみなる、ウクライナはこの間に戦力を貯めロシアへの報復行為に及ぶつもりである
- 交渉の姿勢: ウクライナやEU諸国側が提示する案について合意する考えを持たないことを示している
■ 2. トランプ政権の苦境
- 交渉の困難: トランプが鉱物資源の取引でウクライナ側が譲歩したとしてもロシア側を納得させることができるのか
- 交渉カード: 一旦トランプは軍事支援の凍結などを停止することを交渉カードとして使ったことでウクライナやEU諸国にかなりの譲歩を迫ることには成功しているのかもしれない
- 打開策の不在: トランプが望む合意のためにはロシアが求める停戦条件、すなわちウクライナへの平和維持軍の派遣を拒否するというロシアの主張を妥協させる必要があるが、ここを打開する術が今のところない
- ウクライナの拒否: ウクライナ側がその条件まで受け入れることはまずない
■ 3. ゼレンスキー降ろしの試みと失敗
- アメリカの画策: 最近の報道ではアメリカの政府高官がウクライナでの大統領選挙の実施、そしてゼレンスキーを大統領の座から下ろすことを画策してウクライナの野党代表者と協議した
- 野党の反応: 野党代表者はアメリカ側の意図を突っぱねる形で停戦が実現しなければ選挙は行われないと公言
- 計画の頓挫: トランプ政権の野望は打ち砕かれてしまった印象
- 意図: ゼレンスキーを下ろして親米あるいは親露政権を樹立して交渉をスムーズに進ませることにあった
- 実現の困難: ウクライナの憲法的にも無理だし、大多数の国民も望んでいない
■ 4. 次期大統領候補の現実
- ザルジニの存在: ゼレンスキーが大統領を降りたとしても次の最有力候補はザルジニ総司令官
- トランプの誤算: 大統領選挙を実施しようがしまいがトランプ政権の思惑は実現しなさそう
- 実情への無知: トランプ政権の高官らがウクライナ国内の実情についてよく知らないままトランプの主張を受け入れている節がある
■ 5. 中国の台頭
- 特をする存在: アメリカが国際的な信頼を落とす行為で得をするのが誰かといえば実は中国
- EUの方針転換: EU諸国はアメリカを信頼できる国ではなくなったと見て外交方針を変更している
- 結びつきの強化: EU諸国と中国は実際に結びつきを強めつつある
- 騒動の結果: この一連の騒動の結果としてもたらされるのはEU諸国の団結とアメリカの国際的プレゼンスの低下、そして中国の台頭
■ 6. サウジアラビアでの停戦交渉
- 交渉の予定: ゼレンスキー大統領は来週にもサウジアラビアでアメリカのチームとの会合を行うこと、ここで停戦交渉についての協議を行うことを発表
- 出席者: アメリカ側からはキース大統領補佐官、ルビオ国務長官が出席すると見られている
- トランプへの忠誠: トランプ政権の閣僚たちは基本的にトランプへの個人的忠誠が高いメンバーで固められている
- 懸念: サウジアラビアでの停戦交渉もあまりウクライナにとっていい方向に進むとは到底思えない
■ 7. ウクライナにとっての最悪のシナリオ
- 交渉カード: 軍事支援の凍結継続やインテリジェンス情報共有の完全停止を交渉カードとしロシアが要求する条件をウクライナに飲ませようとすること
- ロシアの要求: NATO非加盟、現在のロシア占領地からの撤退以外にはウクライナ軍の規模縮小、ウクライナ東部4州からの完全撤退、欧州平和維持軍のウクライナへの派遣の禁止、さらにはゼレンスキーらの退陣などが上げられている
- 平和維持軍の重要性: トランプ政権が本当に平和なるものを望んでいるのならウクライナへの平和維持軍の派遣を拒否する理由は絶対にない
■ 8. バンス副大統領の問題発言
- 当初の姿勢: 以前トランプは欧州平和維持軍のウクライナへの派兵に関してこれを認めていた
- 方針転換: 最近のバンス副大統領の発言はこれに反するもの
- 具体的発言: アメリカに経済的利益を与えることの方が30年か40年も戦争をしていないどこかの国の2万人程度の軍勢よりはよほど安全保障になる
- 対象国: 30年か40年も戦争をしていないどこかの国というのはイギリスとフランス
- とんでも主張: アメリカに経済的利益を与えることの方が安全保障につながるというとんでも主張
■ 9. 経済的利益による安全保障論
- 意味合い: アメリカとウクライナが鉱物資源に関する取引を結んでいれば平和維持軍を派遣しなくとも十分にウクライナの安全保障として機能するだろうという意味合い
- めちゃくちゃな論理: アメリカがウクライナ東部の鉱物資源や開発地帯にある種の所有権を持っていればロシアがこれを攻撃することはないでしょうというあまりにもめちゃくちゃな論理
- 圧力の可能性: サウジアラビアでの会合でウクライナに対してロシアの要求に基づく停戦交渉を進めるように圧力をかける可能性の方が十分に高そう
■ 10. ウクライナの情報インフラ対応
- アメリカ抜きの戦争継続: ウクライナはもうアメリカ抜きでの戦争継続の可能性を考慮しなければ今後数年にわたって戦争遂行能力に支障をきたす可能性が常に突きまとう
- フランスの支援: アメリカのインテリジェンス情報共有が停止したことを皮切りに、これを代替する手段としてフランスのユーテルサット社の衛星情報をすでに共有している
- 能力の低下: アメリカの衛星と比べると衛星の数は半分に落ちることもあり、多少なりともウクライナ軍の通信情報能力が落ちることになるのは避けられない
- 依存の代償: アメリカは常に味方だろうと依存し続けてきた代償
■ 11. 停戦交渉実現の可能性
- 低い可能性: 今の状態のままで停戦交渉が実現する可能性は1%にも満たない
- 継続する苦境: 今後もロシアとウクライナは苦しい状況が続く
- アメリカの結果: アメリカがただ国際的信頼性を失ったという結果になるだけ
- 中国の狙い: そんなアメリカの信頼性失墜の隙を狙って国際的プレゼンスを獲得しようとしているのがまさに中国
■ 12. 中国の動き
- 駐英大使の発言: 中国の駐英大使であるルシェ大使は先日ウクライナ戦争を巡るロシアと米国の対話には欧州諸国も含めるべきだとしてEUよりの姿勢を見せた
- 欧州議会の制限撤廃: 3月7日には欧州議会は中国との議員会談に関するいくつかの制限を撤廃し、欧州議会の議員は一部の中国当局者と会談することが認められるようになった
- 農水産物の協定: 同日にはウクライナと中国の間で農水産物に関する議定書の取り交わしが決定されウクライナから中国に対する農水産物の輸出が拡大
- ブルームバーグ報道: 同日ブルームバーグはロシア当局はウクライナへの平和維持軍の派遣について欧州各国の軍が駐留することは認めないものの、中国軍など中立国家の軍勢であれば認める余地があると報道
- 可能性の高まり: 中国によるウクライナへの平和維持軍派遣の可能性が急激に高まっている
■ 13. ロシアの譲歩の真意
- 方針転換: 平和維持軍の派遣をこれまでずっと突っぱねていたロシアの主張を鑑みれば今回の動きは譲歩を示したものと思われる
- 真意不明: なぜここに来て譲歩に応じようとしたのかは本当によくわからない
- トランプの発言変化: ここ最近トランプ大統領は一連の停戦交渉の中でウクライナを動かすのは難しい、ロシアとの交渉の方が簡単だなる発言をした
- 対ロシア制裁の検討: ほぼ同時にロシアに対する大規模な制裁や関税の準備を検討しているという急にウクライナよりと見られる政策の可能性が報じられた
- ロシアの思惑: 先じてロシアは譲歩する姿勢を見せ、ロシアは停戦に前向きに努力しているという印象をトランプに与えたかったのかもしれない
■ 14. 各国の苦境
- アメリカの失敗: アメリカはウクライナの政治的掌握を掌握することに失敗
- 欧州諸国の対応: 欧州諸国はアメリカが軍事支援を凍結させているためウクライナへの軍事支援の拡大、そして自国の防衛のためにも防衛費を増額させる必要が出てきている
- ウクライナとロシア: ウクライナ軍とロシア軍は当然交戦国なので軍事的経済的疲弊が続いている
- 共通する苦境: どの国もうまくいっていない
■ 15. 中国の一人勝ち
- 棚からぼた餅: アメリカがロシアに組みしたことで中国がウクライナやEUへの再接近が可能になれば、政治的にも軍事的にも経済的にも中国が享受できるメリットは大変大きくなる
- 風向きの変化: つい最近までは中国製の監視カメラにセキュリティ上の懸念があるからとして欧州もウクライナも中国製品を締め出す方向に舵を切っていたところだった
- トランプの影響: トランプ政権のあまりにも唐突な政治的方針変更により中国が得が大いに生まれている
- 濡れ手に粟: それは言うならば棚からぼた餅、濡れ手に粟とすら言える状態
■ 16. 中国軍駐留の可能性とその影響
- 兵器輸出: 中国軍がもしウクライナに駐留するなんてことになろうものなら中国製の兵器がウクライナ軍に採用される可能性も出てくる
- ロシアへの輸出継続: ロシアにはこれまで通り輸出することも可能
- 台湾有事への影響: 一連の動きで中国にとって最大の好機が訪れることになると言えるのは台湾有事について
- EUの不干渉: このまま中国がEUと接近しアメリカとEU諸国との亀裂が深まろうものなら、EUやウクライナは台湾に干渉しない可能性だって出てくる
- 最悪のシナリオ: 困るのは台湾とアメリカ、そして同盟国である日本に限られるなんて最悪のシナリオが残酷にも近づきつつある
■ 17. 日本への影響
- トランプの不確実性: 今の調子だとトランプが台湾有事の時に助けてくれるのかどうかさえ不透明
- 最悪のケース: 最悪何もしないなんて可能性すらある
- 停戦交渉の真の受益者: トランプ政権を中心とするロシアとウクライナの停戦交渉で実利が得られそうになっているのはアメリカでもなければアメリカが組みしつつあるロシアやプーチンでもない、中国である