■ 1. 義務教育の本質的目的
- 教育の歴史的経緯: 子供に教育を与えるという思想が出現してから約200年しか経過していない
- 産業革命との関連: 義務教育は工場労働者を育成するために設計されたシステムである
- 学校教育の裏の目的: 19世紀のイギリス社会学者アンドリュー・ユールは、若者を産業制度用に育てれば後の仕込みの手間が大幅に省けると述べた
- アルビン・トフラーの分析: 公共教育には表のカリキュラムと裏のカリキュラムが存在する
- 裏のカリキュラムの内容:
- 時間を守ること
- 命令に従順なこと
- 反復作業を嫌がらないこと
- 義務教育の真の意図: 流れ作業を前提とした工業労働者特別養成システムであった
■ 2. 義務教育制度の成立背景
- 子供の教育権ではない: 義務教育は子供が教育を受ける義務ではなく、親が子供に教育を受けさせる義務を課すものである
- 家庭からの引き剥がし: 産業革命時代のイギリスで、子供を家庭教育から引き離すためのツールとして義務教育が誕生した
- 産業革命以前の状況: 子供は家庭で育てられ、親が読み聞かせや算数を教え、昼間は農場や漁業の手伝いをしていた
- 労働者養成の必要性: 親に育てられた子供は後に工場に連れて行っても労働者にならないため、学校教育が必要とされた
- 親の義務の二択: 高い金を払って家庭教師を雇うか、ほぼ無料の公共学校に行かせるかの選択肢しかなかった
- 階級による教育の差: 富裕層は家庭教師を雇い、労働者階級の子供は公的教育を受けた
■ 3. 工業社会における教育の機能
- 農業社会の崩壊: 義務教育制度によって農業社会や職人社会が崩れ、工業社会の足がかりとなった
- 親の役割の変化: 子供は農業の師匠であった親から仕事を教わる関係が失われた
- 尊敬の対象の転換: 親への無条件の尊敬が減少し、学校の先生や社会の偉い人、会社の上司や社長を尊敬するようになった
- 人材への変換: 教育によって人間を工場で働ける人材に変換することが目的であった
- 中国工場の事例: 15年前の中国深圳の工場では、電気のスイッチの使い方から洗面台の使い方まで一から教える必要があった
- 産業社会での必要性: 産業社会で働くために一人前の姿になるための知識詰め込みが教育の役割であった
■ 4. メルカリの道徳教育事業
- 小学校での事業展開: メルカリが小学6年生にアプリを使ったいらないものの売り方を教える事業を実施した
- シミのあるTシャツの課題: シミのあるTシャツを出品する際に写真に映さなくてもいいかという倫理的課題が出された
- 子供たちの結論: 曖昧にすると後でトラブルになるため、正直にしないと損をするという結論に達した
- IT企業による道徳教育: 学校の先生よりもIT企業のトップメンバーがアプリを使って教える方が子供の感性や理性に届く
- 道徳教育の変容: IT企業が国家に代わって道徳を教える時代が到来した
■ 5. 教育の定義と社会的機能
- 教育の本質的定義: 教育とは子供を型にはめて社会の都合のいいように書き換えることである
- 子供の自由の否定: 子供が自由に育つべきならば、学校や読み書きは不要であり、家庭の都合で育てればよい
- 社会資産としての子供: 18世紀末頃から子供は親の所有物から社会資産へと変化した
- 産業革命以前: 親は子供を自由に売ることができ、余分な子供はよそに売られたり都市に働きに行かされた
- 教育の必要性の発生: 産業革命により工場ができ、子供を一箇所に集めて教育することが必要になった
- 人材化の過程: 教育によって野生児のような人々を机に座って決まった作業をする人材の状態に持っていく
■ 6. 評価経済社会への転換
- 工業社会の終焉: 19世紀から20世紀の1960~70年代まで続いた工業社会が崩れつつある
- 自由洗脳競争社会から評価経済社会へ: 貨幣経済社会からどのように注目と評価を集めて影響力を持つかという競争社会へ移行した
- 前澤友作氏の事例: 元ゾゾタウン社長の前澤氏が100万円のお年玉を1000人に配るなど、お金を注目や評価という21世紀型通貨に換金している
- 換金率の問題: お金を評価に換金する換金率は非常に悪く、10億円使ってもあの程度しか目立たない
- 尊敬の対象の変化: 子供たちは金儲けの師匠である会社の上司や社長を無条件で尊敬できなくなった
- セレブやYouTuberへの注目: 尊敬の対象は注目や評価を集めている人に向くようになった
■ 7. 評価経済社会のカリキュラム
- 工業社会カリキュラムの変化: 時間を守る、命令に従順、反復作業を嫌がらないという価値観が自動的に変化する
- 評価経済社会の新カリキュラム:
- 約束を守ること(できないことは約束しない)
- 質問に答えること(メルカリで質問があったらちゃんと答える)
- 自分や他人に正直であること(服にシミがあったらちゃんと写真に撮って見せる)
- メルカリの役割: これらの評価経済社会のカリキュラムはメルカリでないとなかなか教えられない
■ 8. 国民教育から市民教育への移行
- 国民教育の特徴: 国民全体に同じものを教え、服従心と団結心を与えることが目的であった
- 市民教育の特徴: 個性と競争を重視し、上昇志向を持つことを奨励する教育である
- 世代間の相互不理解: 国民教育世代から市民教育世代はわがままに見え、市民教育世代から国民教育世代は個性がないように見える
- 市民教育世代の特徴: 政治意識に目覚め、運動し、社会の中で金を稼いでのし上がることを志向する
■ 9. 繋がり世代(フラタニティ世代)の出現
- 新世代の特徴: 優秀な能力を上昇志向に使うのではなく、水平方向の他者との繋がりに使う
- 市民教育世代からの誤解: 繋がり世代はやる気がない、覇気がない、何がやりたいか分からないように見える
- 繋がり世代からの視点: 市民教育世代はなぜあんなに言い合うのか、奪い合うのか、独占して上がるのか理解できない
- シェアの重視: 繋がり世代は一人一人が冷蔵庫を持つより、スマホ程度の個人所有でその他はシェアした方が楽だと考える
- 優秀な人の無理な上昇志向の欠如: 優秀な女性が総合職よりも一般職を選ぶなど、競争で自分をすり減らすことを嫌う
■ 10. 世界的な構造変化
- 資源の限界感: 無限に石油があるわけではなく、原子力も万能の回答にならないという認識が広がっている
- 経済の停滞:
- 世界中で徹底的に貧しいところがなくなり、南北の格差が解消されつつある
- 簡単でうまい儲け口がなくなった
- ITの力で既存ビジネスを破壊して単純化することで新しい富が生まれる構造
- デフレの世界: 100万人が失業してITの力で5万人程度が職を得る、仕事の数が減ってもコストが安くなる世界
- 人口減少: 先進国から順番に人口が減り、中国も30年前の独り子政策により5~10年後から人口減少が大問題になる
- 縮小・維持する世界: 消費ではなく継続・維持するサステイナブルな考え方が求められる
- 分配と協調: 奪い合って誰かが豊かになるのではなく、分け与えあってみんなが豊かになることを目指す世界
■ 11. 美人の社会資本化とアイドル現象
- 所有から分配への転換: 美人やイケメンは独占や所有の対象から社会資本へと変化した
- アイドルの本質: アイドルとは美人の社会資本化された状態である
- 恋愛禁止の理由: アイドルは社会資本であるため、人権の一部を剥奪され恋愛が禁止される
- 社会的優遇: 美しいことやかっこいいことに関して、他の人間では思いもつかないような高い位置や喜びを与えられる
- 親の意識変化: 子供が人より美しかったりスタイルが良かったりすると、親が積極的に芸能界を応援するようになった
- 支配層の変化: 支配層は世襲による王様、エリート、競争の勝者から美しい者たちへと変化している
■ 12. フラタニティ教育の展望
- 新しい教育の必要性: 国民教育や市民教育とは異なる、繋がり世代に対応したフラタニティ教育が必要である
- 脱恋愛・脱家族・脱組織: 近くにいる人を大事にする思考であり、人間関係が全てであると考える
- ネットを利用した目立ち力: どれくらい自分に注目を集め、共感してもらえるかという力を与える教育
- 新しい読み書き: ブログ、Twitter、YouTubeなどのネットの表現力を教えることが新しい世界の読み書きになる
- クラウドファンディングの経済学: 多数の人々から様々な形で援助を受けてそれを社会に還元できるかという経済学を教える
- 教育の不可避性: 子供を社会資産にしたことで人権を得た代わりに、社会に貢献する義務としての教育が課される
- 次世代教育の模索: 次の社会が見えていないと次の教育制度は見えないため、社会の変化を考えながら教育のあり方を模索する必要がある