■ 1. 突然の強制送還 - ハサンさん一家のケース
- 出頭したまま帰らぬ父: いつもの定期的な入管への出頭日、父親はすぐに帰ってくるはずだった
- 誕生日の花束: 翌日は父親の誕生日で、子どもたちはお祝いの花束を用意していた
- トルコへ強制送還: しかし父親はついに帰ってこず、日が変わり誕生日も深夜になってやっとつながった電話で「トルコに強制送還された」と告げられた
- 非人道的な追放: 長年住み慣れた日本から親が、子どもが突然追放される非人道的なことが起きている
- 不法滞在者ゼロプラン: 出入国在留管理庁(入管庁)が5月に「不法滞在者ゼロプラン」を発表して以降増えた動きである
■ 2. 難民申請者の恐怖
- 体重10キロ減: 「収容された8カ月間で体重は10キロ減った。収容所には戻りたくない」
- 息を潜める生活: 母国での迫害を逃れた難民申請者もゼロプランのため再収容や強制送還を恐れて息を潜めて生きている
■ 3. 子どもや重病者も対象
- 11年間の生活: 8月には11年前から埼玉県で暮らしていた中学生と高校生のきょうだい3人と両親がトルコへ強制送還された
- クルド人一家: 一家は少数民族クルド人で、3回目の難民認定申請中だった
- 部活から直接連行: 中1の長女は部活動から帰宅したところ、そのまま入管に連れて行かれた
■ 4. 重病のMさんの強制送還
- 1万人以上の署名: 在留特別許可(在特)を求める署名が1万人以上集まっていた男性も強制送還された
- 20年以上の在住: クルド人のMさんはトルコで自宅に火を付けられるなど迫害から逃れて20年以上日本で暮らした
- 6回の不認定: 6回の難民認定申請は全て不認定だった
- 仮放免者: 一時的に入管施設への収容を解かれて社会で暮らす「仮放免者」となり、不安定な生活が続いていた
- 重い病気: 近年は胆石症や狭心症などの重い病にも苦しんでいた
■ 5. 別れも許されず
- 荷物も取れず: 着替えや薬が入ったバッグを取りに行くことも、家族や支援者への別れも言うこともできないまま突然送還された
- 到着後の拘束: Mさんはトルコの空港に到着後、警察に拘束されて長時間の事情聴取を受けた
- 胆石症の痛み: 胆石症が痛み「これ以上話せない」と訴えると解放され、現在は親族の元に身を寄せている
■ 6. 不法滞在者ゼロプランの内容
- 国民の安全強調: 入管庁は「ルールを守らない外国人により、国民の安全・安心が脅かされている」と強調
- 半減目標: オーバーステイなどで国外退去が確定した外国人は2024年末に3122人で、2030年末までに半減させることを目指す
- 強制送還の増加: 運用を開始した今年6~8月で強制送還した外国人は計2120人で、前年の同時期より98人増加
- 護送官付き送還の倍増: このうち護送官付きの送還は119人で、前年同期の58人から倍増した
■ 7. 改正入管難民法の影響
- 2024年施行: 2024年施行の改正入管難民法は、難民申請を3回以上繰り返した場合、審査中でも送還可能にするなど非正規滞在者への対応を厳格化した
- 極めて低い認定率: 日本の難民認定率は1~3%と非常に低く、適正に在留資格が出ているとは言いがたい
- 批判の声: ゼロプランには「正当に保護されるべき外国人までをも排除しかねず、極めて問題だ」などと支援団体や識者から批判が相次いでいる
■ 8. ハサンさんの家族背景
- 2012年来日: ハサンさん(15)は2012年、両親と妹の計4人でトルコ政府の迫害から逃れ来日した
- トルコの記憶なし: まだ幼かったためトルコの記憶はない
- 5人家族: 来日後妹(7)が生まれ5人家族になった
- 日本語の生活: 妹2人はトルコ語を話すことができず、兄妹の会話は日本語である
- サッカー選手の夢: ハサンさんの夢はサッカー選手になることで、「FCクルド」と県内のクラブチームに所属して週に6日練習に励んできた
■ 9. 父親の立場
- 仮放免者: 父親は難民認定申請が認められず、Mさんと同じ仮放免者だった
- 定期出頭: 数カ月ごとに東京出入国在留管理局(品川入管)へ出頭しなければならなかった
■ 10. 父親が消えた日
- 8月中旬の別れ: ハサンさんが最後に父親を見たのは今年8月中旬、父親が入管に出頭した後連絡が取れなくなった
- 翌日の訪問: 翌日ハサンさんは学校を休んで母親と品川入管を訪れた
- 淡々とした告知: 職員は淡々と「トルコに送還されました」と告げた
- 母親が倒れる: 母親はショックでその場に倒れ込んだ
■ 11. 父親の証言
- 深夜の電話: 深夜、トルコに到着した父親とようやく電話がつながった
- そのまま収容: 出頭してそのまま入管施設へ収容されたという
- 未明の強制送還: 「未明に突然起こされ、強制送還すると告げられた。拒否したが10人ほどの入管職員に囲まれ身動きが取れず、無理やり飛行機に乗せられた」
- 誕生日の花: この日は父親の誕生日で、ハサンさんは花を準備していた
- 人生の破壊: 「全部無駄になってしまった」「人生を破壊された」
■ 12. トルコへの帰国決定
- 殺風景な部屋: 9月、取材に訪れたハサンさん一家のアパートの部屋は殺風景だった
- 物を減らす: 「トルコに行くから、少しずつ家にある物を減らしているんだ」
- 母親の在留資格: 母親は「経営・管理」の在留資格(ビザ)があり、子ども3人はその家族として滞在していた
- 来年3月の予定: 父親を追って来年3月にトルコに向かうことに決めた
- ビザ更新不許可: 取材後の10月上旬、母親のビザの更新申請が不許可になった
- 11月に前倒し: 急きょ出国を11月に早めることに決めた
■ 13. 子どもたちの夢の終わり
- 友達との別れ: ハサンさんからは一言「友達と離れるのが悲しい」とメッセージが来た
- サッカー推薦: ハサンさんには埼玉県内の高校からサッカー推薦が出ていたが断らざるを得なかった
- 妹の部活断念: 家事を担うために中学2年の妹(14)はバスケットボール部をやめた
- 本当はやめたくなかった: 小学生から続けており「本当はやめたくなかった」と小さな声でつぶやいた
■ 14. トルコでの危険
- 母親の逮捕状: 母親はトルコで逮捕状が出ている
- テロ扇動の容疑: 日本でクルド人の新春の祭り「ネウロズ」に参加し「テロを扇動した」ことが理由とされる
- 弾圧の継続: トルコではクルド人への言論や文化の弾圧が続く
- 見えない先行き: 帰国後の先行きは見えない
- ハサンさんの憤り: 「入管に進路も夢ももてあそばれた。トルコに行っても、せめてサッカーだけはあきらめたくない」
■ 15. 難民認定の壁
- 厳格化と高い壁: 非正規滞在者への対応が厳格化されたにもかかわらず、同時にハードルを下げるべき難民認定の壁は高いままである
- デボラさんの恐怖: 東アフリカ・ウガンダでの弾圧を逃れ来日したデボラさん(43)が窮状を訴える
- 厳しい審査: 「日本の審査はとても厳しいので怖い。母国の仲間たちは今、誘拐、殺害されている。送還されたらどうなるのか」
- 低い認定率: 日本の難民認定率が低いと聞き、不安を抱えながら暮らしている
■ 16. デボラさんの背景
- カンパラ出身: デボラさんはウガンダの首都カンパラ出身である
- 野党メンバー: 最大野党「国民統一プラットフォーム」のメンバーとして活動中、警察に拘束された
- 刑務所での拷問: バスで連れて行かれた刑務所では拷問を受けた
- 重傷: 暴行で脚の骨を折る重傷を負い、感染症に侵された
- 2023年冬来日: 「命を守るためには国を出るしかないと決意した」弾圧を逃れ来日したのは2023年冬である
■ 17. 収容所での苦難
- 即座の収容: 成田空港に着いてすぐ保護を求めたが、品川入管に収容された
- 最悪な状況: 「心身は最悪な状況だった」
- 脚の痛み: ひどい痛みから脚をひきずるようになった
- 精神的ストレス: 言葉の壁や閉鎖的な環境に重なるストレスで心もすり減っていった
■ 18. 監理措置制度の困難
- 監理人が見つからない: なんとか外に出ようと「監理措置」制度を利用しようとしたが、困難にぶつかった
- 申請要件: 監理人を見つけることが申請要件だが、来日直後で知り合いはおらず、引き受けてくれる人を探しても見つけられなかった
■ 19. 監理措置制度の問題点
- 長期収容問題への対応: 収容施設での長期収容問題を受けて導入されたのが監理措置である
- 制度の説明: 生活状況などを把握する監理人の下、入管施設に収容せずに国外退去手続きを進める制度で、仮放免制度に代わるものという触れ込みだった
- 運用の失敗: しかし運用はうまくいっていない
- 自力で見つける必要: 収容者は監理人になってもらう知人や支援者を自力で見つける必要があるが、監理人の引き受け手は少ない
- 罰金のリスク: 虚偽の届け出をした場合「10万円以下の罰金」が科される
- 関係性崩壊の懸念: 外国人の生活を「監督」することで関係性が崩れる懸念がある
- 制度からの脱落: 監理人が見つからず、保護されるべき人が制度からこぼれ落ちる可能性があるのが現状である
■ 20. デボラさんの仮放免
- 2024年8月釈放: デボラさんはなんとか支援者の助けを得て2024年8月に仮放免で外に出ることができた
- 条件付き釈放: だが入管から提示された条件は「仮放免中に監理措置制度を申請すること」だった
- 繰り返される確認: 出所後は入管から繰り返し監理措置の申請状況を確認される日々
- 絶望: 「必死に捜して見つけられなかったのにと絶望していた。監理人が見つからなければまた収容される。怖かった」
- やっと見つけた監理人: 友人の紹介でやっと依頼できる人を見つけた
■ 21. 消えない恐怖
- 再収容の恐怖: いつ再収容、送還されるか分からない状況は同じである
- 不眠: 「薬を飲まないと眠れない時もあった。こんな暮らしは苦しい…」
- 帰国できない状況: 母国の友人や家族と連絡を取り合うが、帰国できる状況にはなっていない
- ただ願うしかない: 「国に戻って家族に会いたいけれど、命が危険にさらされる。十分な審査がなされ、認定されるのをただ願うしかない」