/note/social

ロシアの対日不安定化工作に利用される文春の誤報と、文春を支える詐欺広告

要約:

■ 1. 記事の主題

  • 文春オンラインなどの日本メディアがロシアの対日不安定化工作に利用されている可能性を指摘
  • 文春の誤報がロシアのネットワークを通じて拡散され、日本の政治に影響を与えている疑惑

■ 2. 主要な問題点(7つの重要指摘)

  • (1) 危険な広告ネットワーク: 文春オンラインなど無料ニュースサイトの裏で個人データ収集・不正リダイレクト等が行われている
  • (2) ロシアからの収益: 文春系媒体の広告収益の約半分がロシア起点と見られる広告エッジから不正に流入。年間2億円程度かそれ以上の収益をロシアから得ている可能性
  • (3) 悪性広告: 低品質CMS・偽装企業・ウイルス警告・IQテスト誘導など、クリックを誤誘導する悪性広告が中心
  • (4) マルバタイジング: クレカ盗難や不正利用に繋がるマルウェアを送り込むアドフラウドにリダイレクトしている
  • (5) 政治的拡散: 文春の政治関連記事をロシア側が厳選して拡散。政治局面に連動した出稿ピークなど国家攪乱・プロパガンダ目的の疑念
  • (6) 広範な影響: 文春だけでなく日刊ゲンダイ、シェアードニュースジャパンなど広く利用されている
  • (7) 3ve事件との類似: 2015-18年にアメリカでロシア人ら8名を起訴したデジタル広告詐欺スキーム「3ve(イヴ)」と酷似

■ 3. 具体的な誤報事例

  • 牧島かれんステマ疑惑(2025年10月2日):
    • 文春が報じた内容: 小泉進次郎陣営の牧島かれんさんの事務所が高市早苗さんを「ビジネス似非保守」と酷評する書き込みを支持者に広めるよう指示したという記事
    • 実態: これは支援者に対する普通の応援のお願いであり、金銭も発生しておらずステマですらない。合法的な活動
    • 「ビジネス似非保守」という記載は高市さんや小林鷹之さんに対するものではなく、参政党や日本保守党、NHK党などのインディー政党への牽制
    • 影響: ほとんど勝ち確と見られた小泉進次郎陣営を大きく失速させ、ガセネタで自民党総裁選に介入し結果を左右させた可能性
    • 当初は大きな話題になっていなかったが、何者かがこのガセネタをネットで拡散させた
  • 岸田翔太郎公邸スキャンダル(2023年5月24日):
    • 内容: 総理秘書官だった岸田翔太郎さんが総理公邸で友人と忘年会をし、赤じゅうたんの敷かれた会談で酔っ払って寝そべるなどのスキャンダル
    • 当初はそこまでアクセスを集めていなかったが、記事公開から14時間ほど経過してから突然ネットで「公私混同だ」との炎上が始まった
    • 最終的に政治問題化して翔太郎さんの秘書官辞任に発展
    • 親ロシア系アカウントとネット上での拡散が行われた形跡がある

■ 4. ロシアの対日情報工作の経緯

  • 2015年以降の推移: 安倍晋三政権末期から菅政権までは官邸に今井尚哉さんや前田匡史さんら親ロシア派の重鎮がいたためロシアにとって好都合だった
  • 岸田文雄さんがウクライナ大統領ゼレンスキーさんを支援する立場を強く表明した後、岸田さんに対するネットでの工作がその宣言を境に4.8倍に激増した

■ 5. 技術的な仕組み

  • ASN「SERV.HOST GROUP LTD」:
    • ロシア発の大量アクセスを文春に流すASN(Autonomous System Number)
    • 主にVPN、proxy、VPSなどの用途
    • 2016年から存在する老舗のロシア系詐欺広告・ボットファームのURL
    • AS202422, AS204957, AS207957などがSilverCom関連のものとして相互接続
  • 広告の仕組み:
    • このロシア発ASNで貼られている文春の広告を踏むと「Russianturkie.com」など悪意リンクの塊(CMS的なもの)に飛ばされる
    • さらにリダイレクトされ、有害なマルバタイジングの置かれたサイトに飛ばされる
    • 粗悪なCMSサイトに飛び、その後マルバタイジングに飛ぶか、Windowsウィルス入ってる警告サイトに飛ぶ
  • マルバタイジングの危険性:
    • マルウェアの拡散や不正なサイトへのリダイレクトを目的とした悪質なWeb広告
    • 日本人が踏むとクレデンシャル(ID、パスワード、暗証番号、生体認証情報など)が抜かれる恐れがある
    • Windows PCや古いAndroid端末では閲覧ブラウザ経由で端末の外から操作される可能性のある隠しファイルをダウンロードさせられる

■ 6. 他の媒体への影響

  • 文春をメインとして日刊ゲンダイやECナビなど幅広く日本のサイトに対してマルバタイジング系の違法広告を流している
  • シェアードニュースジャパン、newsphere.jp、タイコエ(thainokoe.com)、coki.jpなど一般のニュースサイトにも広告が配信されている
  • 各媒体がGoogle Adsenseなどアドネットワークの広告を貼っており、問題があると知らずに違法広告が配信されてしまった場合も多々ある可能性

■ 7. ロシアからのアクセスブースト

  • 広告主から文春オンラインほか文春系各媒体に対してロシアからブースト的なアクセスが来て、それなりに高額の広告費がロシアから文春に落ちている可能性が極めて高い
  • ロシアから流された不正なアクセスで文春の記事はブーストされ、ロシア製ボットファームと一部連動して文春の記事が大量にSNSやSlackなどにばら撒かれる
  • さらに文春の記事にアクセスが集まり多くの人が読んだ結果「炎上を作り出すことができる」

■ 8. ダークパターンの広告

  • 記事本文下に「続きを読む」とボタンが置かれているようなロシア製広告
  • 「あなたの知能指数は?」「ADHDで悩んでいませんか」など知能指数や性格で生きづらさを感じている読者をターゲットにクレデンシャルを集めている
  • 社会や人生に不満を持っている読者をかき集めて大量のアクセスを文春に流し込んでネットを炎上させる技法

■ 9. 3ve(イヴ)事件との類似性

  • 3ve事件とは:
    • 2018年に米司法省が摘発した大規模なデジタル広告詐欺事件
    • オンライン広告のサプライチェーンを悪用
    • 広告配信と閲覧の偽造、資金の洗浄、国際的なネットワーク犯罪の複合モデル
    • FBIと司法省が広告詐欺として本格的に刑事立件
    • 主犯格のアレクサンドル・ジュコフさんは逮捕起訴されて10年の懲役判決
  • 日本での類似性:
    • 今回日本国内で観測されている事象(ロシア起点と疑われるトラフィックが政治的影響力の大きい日本語ニュースサイトに大量に誘導され、広告入札とリダイレクトチェーンの深層で詐欺的要素を含むASNに着地する)は3ve事件と技術面の骨格が酷似
    • 同じことをもっと洗練されたやり方で再度やられて日本人がロシア方面に資金や個人情報を貢いでいる
    • TiktokやTwitter(X)、Youtubeなどのガセネタ政治情報のブーストもSNSや動画サイトのアルゴリズムをハックして不正にトレンドに乗せアクセスを集める手法として極めて似ている

■ 10. 調査の経緯と方法

  • 著者は6年近くそれなりに費用をかけて文春をウォッチし続けてきた
  • 月額2千万円ぐらい支払って法人で利用しているASM(Attack Surface Management)やADネットワーク監視ツールなどの情報を使用
  • 国内では違法だが海外では適法な手段を通じて得ている情報を組み合わせた結果
  • 日本のセキュリティコミュニティ、ホワイトハッカー集団の一角である「クロマティ高校自宅警備部」のモヒカン系ネット技術者との共同作業
  • 然るべき当局には通報を行い共同で情報収集を現在も行っている

■ 11. 文春への情報提供

  • 著者は2025年10月3日に文春オンラインに「ロシアからの不正なアクセスが文春系各サイトに着弾しているよ」という話をした
  • 守秘義務を守りつつもロシアのサーバーリストやヒートマップつきで情報を示し、改善を促してきた
  • ひと月が経過して現段階でもますます元気いっぱいに詐欺広告を文春に振り撒いている
  • いまだに林芳正さんのセクシーヨガ記事がロシア人対日担当のお気に入りなのか日々ブーストされている

■ 12. 今後の対策

  • 政府が対策を打ち始めており、高市早苗政権でも前任の治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会で明確に方向性を示してきた内容を敷衍するだろう
  • 必要なことは情報収集と評価、それを行うための人員と予算そして法律
  • ロシアのサイバー攻撃やアドフラウド、違法広告により日本人クレデンシャルが奪われ、企業にサイバー犯罪が起きたり、政府組織や地方自治体、各企業や大学・医療機関および電力水道ネットなどのインフラで潜伏している隠しファイルが大量に送り込まれたりする
  • 旧式android搭載テレビが勝手に踏み台にされDDoS攻撃の櫓になったり一日3回文春オンラインを観に行くテレビになったりする可能性
  • 政府が統括的に対策を打つことは極めて困難で、国民が状況を知らずにいろんな広告を踏みまくっている時点で3ve的なアドフラウドやFIMI的な不安定工作の一助となってしまう

■ 13. 著者の立場

  • 著者は長く文藝春秋社にお世話になってきて、顕名でウェブ連載も持たせていただいていた
  • 文藝春秋社の皆様には恩義を感じており深く感謝している
  • このような指摘をしなければならないのは躊躇も強く感じる
  • 52歳にもなって年齢に応じた責任を背負うポジションになったため、個人的には卒業論文のようなものと考えてずっとウォッチしてきたものを放流する

MEMO: