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【ゆっくり解説】やべえ極右テロリストのバイブル…「ターナー日記」解説

要約:

■ 1. ターナー日記の概要と世界観

  • 作品の形式と性質:
    • 主人公の日記という体裁で物語が進行するディストピア小説である。
    • 作者はウィリアム・ルーサー・ピアース(物理学博士号を持つインテリ)である。
    • 国によっては発禁処分を受けている、現代の過激派極右の行動に大きな影響を与えたとされる作品である。
  • 物語の舞台と時代設定:
    • 著者が執筆した当時から見て近未来にあたる1990年代初頭のアメリカである。
    • 物語は、白人至上主義者による世界的大革命が成功した100年後の未来社会を前提に、革命の殉教者とされる人物「ターナー」の日記が発見されるところから始まる。
  • 腐敗した社会体制「システム」:
    • アメリカ政府は「システム」と呼ばれる体制に完全に支配されている。
    • システムとは、議会、メディア、教育、司法といった統治機構が腐敗し、思想統制と情報操作を通じて白人社会を抑圧する巨大な仕組みである。
    • システムの裏側にはユダヤ人支配層がおり、有色人種官僚がその手先として働くという設定である。
  • 白人社会の抑圧と崩壊:
    • システムは表向きは人権・平等・民主主義を掲げながら、実際は徹底した思想統制社会であり、人種主義的思想は弾圧される。
    • 法律の運用は人種によって歪められ、非白人による犯罪行為は擁護される一方、白人の自衛行動は人種差別として糾弾される。
    • 銃器没収を定めた「公園法」により、アメリカ人は自衛および権力に抗う最後の手段を奪われる。
    • 社会は多文化強制の名のもとに性的快楽や無秩序が蔓延し、家族、節度、信仰、愛国といった伝統的価値観は崩壊する。

■ 2. 革命の勃発と結末

  • 抵抗組織「ザ・オーダー」の設立とテロ活動:
    • 主人公ターナーは、国家の再生は革命と破壊によってのみ可能だと確信し、「組織」と呼ばれる地下グループに属し抵抗を準備する。
    • 組織の活動は、連邦政府の施設、電力系統、メディア施設の襲撃、要人の暗殺といった本格的なテロ戦争へと発展する。
    • ヒューストン爆破事件(2日間で14件の大規模爆破、4000人以上死亡)が革命の転機となる。
    • 組織は軍基地を襲撃して核弾頭を奪い、米国内で核爆弾を起爆することで内戦を白人革命戦争へと変貌させる。
  • 世界規模の戦争と浄化:
    • 組織の謀略によりソ連やイスラエルを巻き込む国家間戦争が勃発し、米ソ間で全面的な核の応酬が起こり大都市が壊滅する。
    • 組織は混乱に乗じて支配地域を拡大し、「ロープの日」と呼ばれる一連の処刑を実行する:
      • 政治家、官僚、報道関係者、教育者などが標的となり絞首刑にされる。
      • 有色人種との関係を持った白人女性も「人種の裏切り者」として処刑される。
      • 遺伝子的に価値のない白人も人種的選別を受ける。
    • ターナーは革命を宗教的次元に高めた秘密組織「ザ・オーダー」に加入する。
  • ターナーの最期と革命の完成:
    • ターナーはペンタゴン攻撃の特攻任務に志願し、作戦を決行して命を落とす。
    • エピローグでは、ターナーの死から100年後、白人による世界支配が確立した未来が描かれる:
      • 組織はユダヤ人支配体制を打破し、北米に白人支配を確立する。
      • 白人の中から残存していた望ましからぬ人種的要素の最終的な粛清が行われる。
      • ユーラシア大陸では組織による科学・生物・核兵器を用いた大規模な殲滅作戦により中国軍が完全に殲滅される。
      • 最終的に白人が全人類を支配し、白人文明以外のすべてが排除された真の白い世界が到来する。
    • ターナーは革命を導いた殉教者として神格化され、その日記は最重要の歴史的文献として崇拝される。

■ 3. 現実社会への影響とテロ事件

  • 「革命の設計図」としての評価:
    • ターナー日記は推定で数十万部を売り上げ、現代では「革命の設計図」あるいは「白人過激派のバイブル」と評価されている。
    • 著者のピアースは、当初「娯楽を通じて思想を吸収させる実験」として執筆し、特定の暴力行為を扇動する意図はなかったと主張していた。
    • しかし、その内容は暴力革命の手引きのような役割を果たし、模倣犯を生み出している。
    • FBIの報告書「プロジェクト・メギド」では、右翼テロ組織にとって「行動の動機付けの源泉であり続ける」と評価された。
  • 影響を受けた主な事件:
    • 出版以来、この本の影響を受けた人物によって少なくとも200人がヘイトクライムやテロ攻撃で殺害されている。
    • ザ・オーダー(ロバート・マシューズ)事件(1983年~1984年):
      • ターナー日記に登場する組織と同じ名を名乗り、人種革命と白人分離主義拠点の設立を目標とした。
      • 資金調達のために連続銀行強盗、シナゴーグの爆破、複数の殺人などの極悪行為に手を染めた。
      • マシューズは日記を「我々のバイブル」と呼び、新メンバーに読むように強く勧めていた。
    • オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件(ティモシー・マクベイ)(1995年):
      • 米国内で9/11テロ以前で最悪の犠牲者(168人死亡)を出した事件である。
      • 犯人のマクベイはターナー日記の熱心な愛読者であり、「聖書のように信じ、爆破テロ計画の青写真にした」とされ、特に「人々の安心感と政府の無敵性に対する信念を破壊することによって動揺を生み出すのだ」という部分を切り抜いて所持していた。
    • その他の事件:
      • ジェームズ・バード・ジュニア殺害事件(1998年、テキサス州):加害者が「俺たちはターナー日記を前倒しで始める」と口にした。
      • ロンドン爆破テロ事件(1999年、イギリス):犯人が「ターナー日記を読んでいれば2000年には人種戦争が展開されると分かる」と供述した。