■ 1. コメ騒動と戦後日本の農業政策
- 今回のコメ騒動は戦後から一貫して続いた流れの最終段階である
- 戦後日本は主食米であるコメの消費を次第に減らしていった
- 日本はアメリカの思惑を活用し、自動車で儲けて農業を犠牲にしてきた
- この流れがいよいよ最終段階に入ってしまった
■ 2. ザイム真理教による農業破壊
- 故・森永卓郎氏は緊縮財政が不可欠と信じ込ませる財務省の洗脳を「ザイム真理教」と揶揄した
- ザイム真理教が発信するメッセージを誰も疑わず、多くの人々がマインドコントロールされてしまった
- 本来であれば農家の疲弊を緩和する政策を日本政府はどんどん打ち出さなければならなかった
- にもかかわらず無為無策の日本は十分な手立てをこれまで講じてこなかった
- 日本の農業はますます疲弊していった
■ 3. 稲作ビジョンの欠如
- 米価が下がった結果農家が生活していけなくなれば、主食のコメさえも国内で作れなくなってしまう
- 国内の農家を支え、コメの生産を国内で継続できるようにするための「稲作ビジョン」を政府はなぜ打ち出さないのか
- コメ騒動への手当てとして備蓄米の価格破壊と輸入米の流通増加を進めても、それで終わりではいけない
- 今こそ国内の稲作をどう位置づけ、どういう政策でコメ作りを支えるのか政府が発表するべきときである
- 日本はいつまで経ってもそうしたメッセージを国民に発表しない
- 理由は財務省が「カネを出さない」と突っぱねているからである
- 農業は財源を切っていくためのバッファー(緩衝領域)となり、他に回すための予算の源泉になっている
■ 4. アメリカの占領政策の帰結
- コメをめぐる現下の状況はアメリカによる日本の占領政策の行き着く先である
- 国内の自動車産業を守るため、アメリカから迫られれば何でも買い入れてあげる姿勢である
- 日本が緊縮財政に陥ったとき、一番の切りどころが農水予算である
- 歴史的にこうした状況が続き、日本の農業は苦しくなっていった
- 稲作ビジョンを打ち出さずこのまま放っておいたらますます絶望的になる
- 今の財務省のやり方に誰も歯向かえず、アメリカにも歯向かえない
- こうした日本の現状が「令和のコメ騒動」を通じてますますはっきり見えてきた
■ 5. 農協悪玉論の強化
- コメ騒動を利用して農協悪玉論を強化しようとするストーリーが見えてくる
- 小泉氏が自民党の農林部会長として過去に取り組んだ「農協改革」が頓挫したことに対するリベンジだとも指摘されている
■ 6. 農協改革の本丸
- 農協改革の本丸は以下のプロセスで進められようとしている:
- 農林中金の貯金100兆円とJA共済連の共済55兆円の運用資金を外資に差し出す
- 日本の農産物流通の要である全農をグローバル穀物商社に差し出す
- 独禁法の「違法」適用で農協の共同販売と共同購入を潰す
■ 7. 大臣発言の誤り
- 「農協は共販でなく買い取りに」「農協が金融をやる必要はない」といった大臣発言は間違いである
- 歴史的経緯:
- 個々の農家が大きな買い手と個別取引することで農産物は買い叩かれた
- 個々の農家が大きな生産資材の売り手と個別取引することで資材価格は吊り上げられ、苦しんだ
- それに対抗するため農家が農協を作って結集し、共同販売と共同購入が開始された
- 歴史に逆行する共販潰しは農協を協同組合でなくし、全農を株式会社化して穀物メジャーに差し出し、農産物の買い叩きを助長することにつながる
■ 8. 農協の金融・共済事業の必要性
- 歴史的に農家は高利貸しに苦しめられ、いざというときの生活保証も不十分だった
- そのため農家自らで貯金・貸し付けを行い、相互扶助の共済事業が展開されてきた
- 地域の皆に信用事業や共済事業を利用してもらい、その利益を営農指導(持ち出しの赤字事業)に回すことで農業振興が可能になる
- 経済事業も多くが赤字だが、中間マージンを減らして農家と消費者に還元しているからである
- 農協を核にして地域の農と食と暮らしが循環する
- 信用・共済事業がないと農業振興ができなくなるため、「農協は信用・共済を切り離して農業振興を」という論理は成立しない
- 信用・共済の分離は、農林中金の100兆円と全共連の55兆円の運用資金を外資に差し出す流れにつながる