■ 1. 人類の多様性と現在の状況
- 人類はホモ・サピエンス以外にも、ホモ・ネアンデルタール、ホモ・エレクトスなど多数存在していた
- 現在生き残っているのはホモ・サピエンスだけである
- ホモ・サピエンスが他の人類を大体殺し尽くしてしまったため、唯一生き残った
- 教科書に載っている人類の進化の絵(猿から順に進化した図)は誤りである
- 実際には約250万年前に様々な人類が同時多発的に地球上のいろんな場所で生まれた
- 人類学はこの15-20年でものすごく進歩したが、教科書にはまだ反映されていない
■ 2. 人類の初期の特徴(250万年前)
- 約250万年前に人類(ホモ属)が誕生した
- 全ての人類に共通する特徴:
- 脳が大きかった
- 道具が使えた
- 複雑な社会機構を持っていた
- 脳が大きいため出産が大変で、未熟児のまま生まれてくる
- そのため2-3年は母親が世話をしなければならない
- 本能が中途半端に生まれてくるため、親や仲間がいろんなことを教える必要がある
- 結果として社会性がすごい豊富な種族になった
- これらの特徴はホモ・サピエンスだけでなく人類全ての特徴である
■ 3. 200万年間の停滞期
- 250万年前に人類が誕生してから約200万年間、ほとんど何もしなかった
- 食物連鎖では中の下、真ん中あたりの、ものすごく地味な生物だった
- 主に虫や木の実、動物の死体などを食べていた
- 脳が大きく道具が使えたが、200万年間ダラダラ生きていた
- ホモ・サピエンスは生まれてすぐに地球を制覇したわけではなく、200万年間地味な種族だった
■ 4. 火の発見(約30万年前)
- 約80万年前から一部の種族が火を使うようになった痕跡がある
- 約30万年前にはホモ・エレクトス、ネアンデルタール、ホモ・サピエンスなど多くの人類が日常的に火を使うようになった
- 火の発見の重要性:
- ライオンなどの捕食者を追い払うことができる
- 森を焼き払って環境を変化させることができる
- 食べられなかったり食べにくかったりする食物が食べれるようになった
- 噛む時間と消化時間が大幅に短縮された(チンパンジーは1日5時間噛む必要があるが、火で調理すれば極端に短くなる)
- 火で調理すると腸が短くなり、エネルギー消費が減る
- 火を使う前の人類は毎日5時間獲物を探し、5時間噛み、5時間消化するために休む必要があった(合計15時間)
- 火によって武器と防具、土地と時間を手に入れることが可能になった
■ 5. 火の発見後も続く停滞
- 30万年前に火を使えるようになったが、やっぱりサピエンスは雑魚キャラだった
- 基本的には虫や木の実を食べるのが当たり前だった
- そんな暮らしを20万年ぐらい続けた
- ネアンデルタール人はホモ・サピエンスより大きな脳、すごい運動能力、体力が与えられた
- 単体で勝負したらホモ・サピエンスは勝てない
- ネアンデルタール人はホモ・サピエンスより賢くて強かった
■ 6. 人間の本能について
- 火の発見から高々30万年しか経っていない
- それまでの250万年間は火がない食事をしていた
- 人間のDNAに完全に組み込まれている本能は火がない時代のもの
- だから食べたら5時間ぐらい寝なきゃいけないという本能が組み込まれている
- 人間がだらするのは当たり前である
- 怠け者は人類史的に言えば正しい
■ 7. 認知革命(約7万年前)
- 10万年前、ホモ・サピエンスの集団がネアンデルタール人の縄張りを襲ったがボロ負けだった
- しかし7万年前に同じネアンデルタール人の集落を襲った時は今度勝った
- 7万年前からホモ・サピエンスの快進撃が始まった
- 地中海どころか中東からアジアまでネアンデルタール人を全部追い払った
- 4万年前には太平洋を渡ってオーストラリアに行き、船やランプ、弓矢、針などを全部発明して使いこなすようになっていた
■ 8. 認知革命の正体
- 脳が大きくなったわけではない(他の人類種もみんな脳が大きかった)
- 道具が使えるからでもない(100万年前にはほとんどの人類種は道具を使っていた)
- 火を使いこなしたからでもない(30万年前からいろんな人類種が火を使っていた)
- 言葉も人類だけのものではない(蜂もイルカも言葉を持っている)
- サバンナモンキーの例:
- 「気をつけろライオンだ」という言語を持っている
- 「気をつけろワシだ」という言語も持っている
- この2つの鳴き声が別で、録音して聞かせると適切に反応する
■ 9. 言語の使い方の変化
- 7万年前に起きたのは遺伝子の突然変異によって脳内の配線が変わった
- 言葉の使い方が変わった(言語自体は他の動物も持っている)
- これを認知革命と呼ぶ
- サバンナモンキーは「気をつけろライオンだ」とは言えるが「もう大丈夫だ。ライオンはもういない」とは言えない
- しかしホモ・サピエンスは:
- 「ライオンはもういない」と言える
- 「朝ライオンがいたけどもう今はもういない」と言える
- 「川には今ライオンがいるということは森は今大丈夫だ」と言える
- 言葉を繋いでいって論理的な構造がつくれる
■ 10. 噂話の重要性
- 「あいつはライオンを倒した」という噂話ができる
- それを見たものや近くにいたものしか知らなかったことが、噂話で広められる
- 倒してもないのに「俺ライオン倒したよ」と言うこともできる
- 「あんなこと言ってるけど本当か」と言うこともできる
- 人類学者の間では、ホモ・サピエンスが認知革命以降話してきた言葉の大半は噂話らしい
- SNSで噂話をしたりしょうもない話を拡散するのは人類の根幹にかかる行動であって当たり前である
- 噂話が実は人類を人間たらしめてる要因だと言われている
■ 11. 虚構の力
- さらにすごいのは「ライオンは我が部族の守護神だ」という虚構である
- 虚構はホモ・サピエンスの群れのサイズを大きくすることができる
- チンパンジーの群れのサイズは大体20頭から50頭で、それを超えると秩序が不安定になる
- 100頭を超える群れはチンパンジーではほぼ野生では確認されていない
- ネアンデルタール人ですら群れの数は150が限界であった
- この150をダンバー数という(類人猿が脳のサイズから石統一がなんとかできるギリギリの数)
- これを超えると集団は分裂して近くにいる集団同士は殺し合ってしまう
■ 12. ダンバー数を超える組織
- 虚構(我々の守護神だとか我々は神に守られてるという概念)を入れることによってダンバー数を超える、150を超える組織が可能になった
- よその部族であっても聖なる誓いという約束や神の啓示によって手を組むことができる
- ライオンが守護神の部族とワシが守護神の部族が共闘して共に戦ったりもできる
- お互いの守護神(トーテム)を褒め合ったり互いの娘を交換して嫁にやったりできる
- ダンバー数を超える数の集団は生理的には本来受けられないはずだが、虚構を入れることによって大きい集団が可能になった
- 現代でも野球チームのファンであったり日本人であったり県民であったりという連帯感を感じることができる
- しかし日本人という物理的なものは何もない、県民もない
- 全部そこで生まれたという現象なだけだが、連帯感を感じることができるのは虚構の力である
■ 13. ホモ・サピエンスの勝因
- 噂話によって実力以上の力がホモ・サピエンスは出せるようになった
- 例:「守護神に選ばれたものがこの戦いで死んだら地上よりもっと素晴らしい場所に生まれ変わることができる」と言えば、それを信じて死ぬまで戦うことができる
- 「戦いに負けたらお前の家族はみんな敵に皆殺しにされる」という未来のこと(わからないこと)でも、その言葉を信じて戦うことができる
- これがネアンデルタール人に勝てた理由である
- ネアンデルタール人は力が強くて運動能力が高くて手先も器用だが、知ってるもの同士しか信頼できない
- 群れの数の限界は150程度で、それ以上になるとお互い反発してしまう
- 守護神やあの世を信じてないので負けそうになるとネアンデルタール人は撤退してしまう
- 種族の誇りとか家族のために命を落とすようなバカは1人もいない
- 結果としてネアンデルタール人たちが撤退して撤退して撤退して、それを効果的に追跡していったホモ・サピエンスたちにやられてしまった
■ 14. 他の人類の絶滅
- インドネシアにいたホモ・ソロエンシスは5万年前に突然姿を消した
- オーストラリアにいたデニソア人(ホモ・デニソア)もサピエンスが大洋を渡ると同時になぜか姿を消した
- ネアンデルタール人も3万年前に全部絶滅した
- 最後に残ったホモ・フローレシエンシスは1万3000年前にホモ・サピエンスがジャワ島を発見して移民した瞬間になぜか消えてしまった
- 以後1万年以上、人類といえばホモ・サピエンスだけになった
- ホモ・サピエンスが行ったところで他の人類は全部絶滅している
- ホモ・サピエンスが行ったところでは他の人類は全て大体1000年もかからず滅んでいる
■ 15. 絶滅の理由
- 人類学者の中でも様々な説がある:
- ホモ・サピエンスたちの豊かな社会で文明のショックを受けて生活力を失って死んだ
- ホモ・サピエンスに滅ぼされた
- ホモ・サピエンスに食われた
- 様々な化石が見つかっており、戦闘して死んだ化石もあれば衰弱して栄養不足で死んだものもある
- 殺人の動機は、おそらくホモ・サピエンスが気の荒い種族で他の種族の匂いを気に入らなかったからではないか
- 「彼らは殺して構わない、殺さないといけない」という虚構や神話を無理やり作ったのではないか
- かつて自分たちより強くて賢かった他の人類を殺し尽くしてしまったという罪悪感や思い出がそんな伝説(暗闇の恐怖、化け物の伝説など)を作ったのではないか
■ 16. 貨幣経済の力(風の谷のナウシカの例)
- 風の谷のナウシカの2巻に、トルメキアの同盟国のセムの町が出てくる
- その町では宇宙船を解体して売っている
- トルメキアとドルクが戦争してくれたおかげで町が豊かになってきた
- 虫使いたちが来て金貨で酒を買う
- その金貨はドルク(敵国)の金貨だが、店の親父は「金の質はトルメキアのよりいいくらいだ」と言って受け取る
- どの国であろうが関係なく金の質さえ良ければ受け取る
- 貨幣経済が伸びてくると宗教的・思想的な対立よりもどちらの国が豊かにするのかという経済力による差になってくる
- 虫使いたちも文明に接して貨幣を使うようになるとどんどんその貨幣経済に侵されてトルメキアの一部になってしまう
- 貨幣、宗教、帝国という概念が人類を統一する普遍的な力である