■ 1. 2040年への視点と世代間認識
- 2040年までに仕事、生活、国際情勢において未体験の変化が次々に起こることは間違いない。
- 15年後に自分が生きているかどうかはわからず、なんとかいまの生活を続けて逃げ切ることができるのではないかと思う人も少なくない。
- 15年後にアラフォーになるZ世代('90年代後半〜'10年代前半に生まれたデジタルネイティブ世代)の若者たちが「2040年のリアル」をどう受け止めているのかを考える必要がある。
■ 2. Z世代の未来観と刹那的価値観
- 24歳の映画監督・木村ナイマ氏の見解:
- 遠い未来のことはあまり考えないようにしている。
- このままいけばいま以上に少子化が進んで、現役世代には金銭的な負担がのしかかる。
- いまより良くなる未来は見えず、考えても意味はないと感じている。
- 木村氏は自身も歌舞伎町のガールズバーで働き、同僚の若い女性たちへの取材を経て『天使たち』などの映像作品を発表してきた。
- Z世代をひとくくりにすることは難しいが、日本社会の未来にあまり希望が持てないと思っている人は一定数いる。
- 取材をしている若い世代の子たちの多くが貯金はせず、「どうせ明日が今日よりも良い日にならないなら、いま楽しいことを好きなだけやる」というような刹那的な価値観を持っている。
■ 3. 2040年の日本が抱える統計的現実
- 若者たちが明日に希望を持てない理由は、各種統計が示す2040年の日本の姿を見れば明白である。
- 総務省や内閣府などが発表した資料に基づく15年後の日本が抱える難題:
- 生産年齢人口(15〜64歳)は現在の約7400万人から約6000万人にまで落ち込む。
- 一人当たりの社会保障費は現在から約60万円増えて、年間171万円も負担しなければならない。
- 2000年の日本の一人当たりGDPは世界2位で、G7ではトップに上り詰めた。
- 現在は韓国や台湾にも抜かれ、38位にまでランクを落としている。
- かつての経済大国はG7のなかで最も貧しい国となり、今後はさらなる下降が確実視されている。
■ 4. Z世代の諦観の背景
- 実業家の岸谷蘭丸氏(24)によるZ世代の諦観の説明:
- Z世代は高度経済成長もバブルも経験していない。
- 物心ついた時から「失われた30年」の真っ只中にいた。
- 過去15年を振り返っても、東日本大震災にコロナ禍とネガティブな出来事ばかりである。
- 社会が良くなるイメージなんて持てなくて当然である。
- 技術革新に対する認識:
- かつてはテレビや車といった新しい産業製品がその時代を生きる人たちを熱狂させた。
- いまの技術革新に若者たちはワクワクできない。
- AIはたしかに便利だが、それが若者たちの仕事を奪っていくだろうという不安のほうが大きい。
- これからの時代、技術が進歩しても幸せになれるわけではないと、みんな薄々気づいている。
- だから怒りも生じず、ただ諦めが先に来てしまう。
■ 5. 怒りではなく諦めが先に来る理由
- 過去の世代との比較:
- 過去を振り返れば、若者たちは上の世代に対する不満を感じ、その怒りを社会にぶつけてきた。
- それは怒りをぶつけることで、親世代が創ってきた社会の仕組みを壊し、自分たちにとってより良い時代が創れるという確信があったからである。
- Z世代の特徴:
- Z世代はそもそも「未来がいまより良くなる」という実感が持てない。
- 生まれたときから日本は下り坂で、「自分たちの親世代がその原因を作った」とも思えない。
- チェーンストア研究家・谷頭和希氏(28)による分析:
- 理屈で考えれば、年金制度の破綻も国の莫大な借金も、少子化対策の遅れも、上の世代が何も手をつけてこなかったツケが回ってきていることは理解できる。
- ただし、その根本的な原因が自分たちの親世代よりもさらに上の世代にあることもわかっているので、どこにも怒りの向けようがない。
■ 6. 社会運動の無力感とSNSの影響
- 2015年に盛り上がったSEALDsをはじめとした同世代の社会運動(民主主義を守るため、安全保障関連法などに反対した活動)も間近に見てきた。
- 若者たちが声高に叫んでも何も変わらなかったという無力感がある。
- 「声を挙げて社会を変えるには遅すぎた」という実感が先に来る。
- SNSなどを中心に社会を変えたいという声が一時的に盛り上がることはあっても、「どうせ何も変わらないんだから」と熱はすぐ冷めてしまう。
- SNSでは声を挙げてもすぐに反論が出てきて潰される。
- 反論に対しても「多様な意見の一つだから、認めなければいけないよね」と思ってしまい、一つの正しさを信じて変革を起こすような原動力がうまれない。
- このまま進めば2040年の日本が悲惨になることはわかっているが、どうせ変わらないなら、この停滞した日本の中でせめて自分だけは静かに幸せに暮らしたいと考えている人が多い。