■ 1. ロシア崩壊の2033年問題の概要
- ロシアの余命は8年後の2033年頃だと予測される
- これは適当な予測ではなく様々なデータを組み合わせた時に浮かび上がってくる1つの可能性のピークである
- 現在ロシア経済は戦争中にもかかわらず好調であるように見えるがその水面下でロシアは着実に腐りつつある
- ロシアが8年後に危機となる3つの理由がある
■ 2. 理由1:独裁体制の限界と後継者不在のリスク
- 現在のロシア体制はプーチンという1人の強力な指導者の上に成り立っている
- プーチン大統領の突然の退任や死亡はそのまま体制の危機に直結する
- 特に彼が明確な後継者を育ててこなかったことがこの問題を深刻にしている
- 彼がいなくなった瞬間これまで抑えられていたエリート層が一斉に次の権力の奪い合いを始める可能性が極めて高い
- 権力闘争が始まれば中央政府の統制力は一気に弱まり最悪の場合内戦状態に陥ったりロシア連邦そのものが政治的に分裂したりする危険性すらある
- 米国の有力シンクタンクであるアトランティック・カウンシルが2023年に世界の専門家167人に対して行った調査では回答者の実に46%が「革命・内戦・政治的崩壊といった理由によってロシアが2033年までに内部から分裂する」と予測している
■ 3. 歴史的事例:独裁者の死後の混乱
- 旧ユーゴスラビアのチトー大統領のケース:
- チトーは強権的な指導力で多様な民族が暮らす複雑な国家をユーゴスラビアという1つの旗の下にまとめていた
- 1980年に彼が亡くなるとその箍が外れた瞬間に各民族間の対立が噴出した
- その結果1990年代にはヨーロッパで第二次大戦後最悪と言われる悲惨な内戦と国家の解体へと突き進んだ
- ウズベキスタンのケース:
- 2016年に長年独裁体制を敷いていたカリモフ大統領が死去した
- この時も後継者を巡って治安機関トップや首相たちの間で激しい権力闘争が巻き起こったとされている
- 結果的に後継者がスムーズに決まり内戦には至らなかったが一歩間違えば国内が深刻な状態に陥っていた危険性はあった
- ロシアはユーゴスラビアよりもはるかに多様な民族を抱えウズベキスタンとは比較にならないほど多くの軍事力を持つ大国である
■ 4. プーチン大統領の生物学的タイムリミット
- WHOのデータに基づくとロシア人男性の現在の平均寿命はおよそ68歳である
- プーチン大統領は1952年10月生まれで現在73歳でありすでにロシア人男性の平均寿命を5年も超えて生きている
- ロシアにおいて60歳に達した男性がそこから平均であと何年生きるかという平均余命のデータはおよそ16.8年である
- 60歳に16.8年を足すと76.8歳ざっくり77歳になる
- 現在73歳のプーチン大統領がこの77歳のボーダーラインを超えるのはあと4年後で2029年から2030年にかけての時期にあたる
- ロシア人男性のうち80歳まで生きている人の割合は統計的に見て25%程度つまり4人に1人に過ぎない
- 彼が4人に1人の生存者にならなければならない80代という次のハードルがまさにこれから8年後2033年頃にやってくる
■ 5. 長寿への執着と後継者不在の現実
- 2025年9月にはプーチン主席と中国の習近平国家主席との会話が話題になった
- 習近平は「人間は150歳まで生きられるだろうか?」と尋ねプーチンは「今世紀中に150歳まで生きられる可能性があるという予測もある」と答えた
- これは2人の独裁者の長寿への執着が垣間見える一幕だった
- 現在のロシアには後継者が存在しない
- プーチンは自分の地位を脅かす可能性のある強力な政治家を徹底的に排除してきたからである
- プーチン死後のロシアは権力を巡る熾烈な争いの時代に突入する可能性が極めて高い
- 2033年頃というのはプーチンが高齢化によって権力を失う可能性が高まるタイミングと重なる
■ 6. 理由2:世代交代による世論の劇的な変化
- プーチン大統領だけでなく彼を熱烈に支持してきた国民たちもまた寿命を迎えていく
- 現在のプーチン体制を支える最も強力な基盤はソ連時代を知っているあるいは1990年代の混乱の時代を経験してきた中高年たちである
- 特に年金生活者を中心とする圧倒的な高齢層は「プーチンが強いロシアを取り戻してくれた」という記憶を持っておりプーチン大統領に対して固い支持を続けている
- しかし当然ながらそのような古い世代は毎年確実に人口を減らしていく
- プーチン氏が大統領の座についた2000年頃に物心ついていた世代は全員2035年頃には50歳以上に突入する
- ロシアの混乱期を覚えている世代は全員が60歳以上の高齢に差しかかる
■ 7. Z世代の台頭と既存体制への冷ややかな視線
- 2000年代生まれのいわゆるZ世代たちが2020年以降続々と20代になり選挙権を持って社会の主要な担い手となり始める
- 2030年に差しかかると社会の中のZ世代の数は相当なものになる
- 彼らはソ連の崩壊やロシアの暗黒時代を知らない
- プーチン氏が大統領の座についた1999年末にはまだ生まれていなかった世代である
- そんな彼らにとってプーチン体制は鬱陶しい既存の存在であり感謝の対象ではない
- 彼らは物心ついた時からインターネットとSNSに触れ西側の情報や文化にも日常的にアクセスしている
- カーネギー国際平和基金の2025年の調査によるとロシアのZ世代の多くは政治イデオロギーに対して批判的思考を持ち現体制に対して疑問を抱いている
■ 8. 政府の情報統制の限界とミレニアル世代
- ロシア政府は学校教育で愛国主義教育を強化したりインターネット規制を強化したり反体制派を弾圧したりとあらゆる手段を使って若い世代の思想をコントロールしようとしている
- しかし21世紀の情報化社会において完全な情報統制はもはや不可能である
- 無料VPNを使えばロシアからでも海外のサイトにアクセスできしTelegramなどの暗号化メッセージアプリを通じて情報は意図も簡単に拡散される
- ロシア人の知人のうちでVPNを使っていない人は0だと断言できる
- 今40歳になるくらいの世代までならほとんど全員がVPNを使いこなし自由にYouTubeやTikTokやInstagramの情報に浸って暮らしている
- ミレニアル世代でもすでにロシアのイデオロギーに興味を持たないかあるいは懐疑的・嫌悪的な態度を取ることが支配的になっている
■ 9. 若者の戦争支持率の低さと価値観の変化
- ウィルソンセンターの2024年の調査によると実際にロシアの若者の間では戦争支持率が他の年齢層よりも明らかに低い
- 今の40代以下で本気で現在のロシアのイデオロギーに同調しているような人といえば都市部では探すのが難しいくらいのものである
- 特に都市部の若い世代はプーチン政権のプロパガンダに対して冷めた目を向けている
- Z世代たちが求めているのは偉大な国家や軍事的な勝利ではない
- 彼らにとっての関心事は国家の偉大さやイデオロギーではなく給料・物価の安定・自由な海外旅行と買い物・キャリアアップなどといった個人的な幸福である
- 2024年11月の世論調査ではロシア国民の実に57%がウクライナに対する勝利よりもウクライナとの停戦交渉を支持していた
- 一方で戦争継続を支持したのはわずか35%である
■ 10. 理由3:戦争による国力の衰退と経済的限界
- ウクライナ戦争はロシアに膨大な人的資源の損失をもたらしている
- 死者と重傷者の数を合わせれば2025年10月までにロシア軍は約100万人の損失を出しているという統計がある
- 働き盛りの男性ばかりがその被害者である
- 戦争が始まってから最初の1年間でロシアを出国したロシア人の数は推定で100万人最大で130万人にも上るとされている
- 出国している人は徴兵される可能性の高い働き盛りの男だったりロシアから国外へ出るだけの資金をすぐに準備でき外国へ出てからも稼いでいける技術や知識を持った人たちである
- そのような人材がざっと100万人ごっそりとロシアから抜けた
■ 11. 労働力不足の深刻化と経済的限界の予測
- 戦争に多くの男性が取られ国外にも逃れロシア国内では労働力不足が深刻になった
- 米アリゾナ州立大学の研究ジャーナル「Small Wars Journal」は「もしこの戦争が2027年以降も続いた場合ロシアは人材的に崩壊レベルに達する」と予測している
- ロシアはこの戦争でウクライナの非武装化やウクライナ東部・南部4州の完全な併合といった非常に高い目標を一貫して掲げている
- しかしこれらの目標を軍事的に達成するのは現実問題として極めて難しい状況である
- エコノミスト誌はウクライナ侵攻を続けるロシア軍が現在のような非常にゆっくりとした進軍ペースを維持した場合ロシアがウクライナの4州を完全に制圧できるのは早くても2030年6月頃になるだろうという試算を出した
- 大方の専門家の見方ではロシアが現在の攻撃能力や戦時経済体制を無理なく維持できるのはせいぜいあと2年ほどつまり2027年から2028年頃までだという説が有力である
■ 12. 戦時経済の負担とインフレ・制裁の影響
- プーチンは一度この戦争を始めてしまった以上「負けました」とは絶対に言えない
- そのため国力をすり減らしながら無理をしてでも戦い続けることになる
- この戦時経済の継続が国民生活に非常に大きな負担を強いている
- 戦争が始まった直後にインフレ率は18%まで急騰しその後も10%前後という高い水準で推移している
- 経済制裁による外国企業の撤退も国民にとっては衝撃だった
- 日本企業の中からはトヨタ・日産・マツダといった全ての自動車メーカーやパナソニック・ソニー・任天堂・ユニクロなどが軒並みロシアから撤退した
- AppleやMicrosoft・Google・マクドナルドやスターバックス・IKEAやコカ・コーラといった欧米の有名企業たちもロシア市場から姿を消した
■ 13. エネルギー依存経済と地方・民族間の格差
- ロシアは総輸出額の6割以上をエネルギー資源の輸出に頼っている
- 世界全体が脱炭素化に向けて進んでいる中で化石燃料の輸出に依存するロシアの経済は時代遅れとなり徐々に国際的な競争力を失っていく可能性が高い
- パリ協定によって2030年は1つの節目と見なされておりそれに向けてエネルギー資源の需要は伸び悩んでいくかもしれない
- 2025年の1月から9月までの石油輸出収入は前年同期比で約20%減少しているとの報告がある
- 国際通貨基金の経済見通しによるとロシア経済は2025年の成長率がわずか0.6%2026年も1.0%そして2030年になっても1.1%程度に過ぎないという予測がされている
- 経済が停滞しモスクワから地方への富の再分配が滞るようになるとシベリアや極東など資源は豊富なのに貧しいままの地方やタタルスタン共和国やチェチェン共和国といった独自の民族的アイデンティティを持つ共和国たちが「なぜ我々はモスクワのために犠牲にならなければならないんだ」とロシアという国家構造そのものに疑問を抱き始める可能性がある
■ 14. 多民族国家の脆弱性と2033年問題の結論
- ロシア連邦は200以上とも言われる非常に多くの民族が暮らす巨大な多民族国家である
- 今回のウクライナ戦争では特に地方のそしてロシア民族以外の少数民族の人々が不釣り合いに多く動員され多くの犠牲を出している
- シンクタンクのジェームズタウン財団の分析によるとモンゴル系民族であるシベリアのブリアート共和国からの死亡者数はロシア全体の3倍に達し首都のモスクワと比べるとその差は30倍にまで膨らむと報告されている
- 戦争が中途半端に終わりロシアで戦時体制が解かれウクライナという敵がいなくなる時が来ると国内格差や経済の不調・政治的不正などあらゆる不満が露呈するはずである
- プーチンが抑えてきた民族間対立が激化しロシアという連邦国家の統合そのものが維持できなくなる可能性すらある
- ここまで話してきた全ての理由を総合するとロシアの崩壊あるいはプーチン体制崩壊の可能性は2033年頃に最も高まると言える