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外資は逃げ、経済はどん底に……景気低迷する中国で習近平主席が決断した「大路線転換」

要約:

■ 1. 4中全会での注目点

  • 2024年10月20~23日に北京で4中全会が開催
  • 世界の中国ウォッチャーが注目した3点:
    • 習近平総書記の後継者が擁立されるか
    • 経済発展最優先の路線が継続されるか
    • 中央軍事委員会の欠員3人が補充されるか

■ 2. 後継者擁立の見送り

  • 後継者の擁立は見送られた
  • 2022年10月の第20回共産党大会で習総書記は引退を拒否し3期目に突入:
    • 有力な後継候補の胡春華副首相を党中央政治局委員から中央委員に格下げ
    • バックアップしていた胡錦濤前総書記を議場から追放
  • その後中国経済はさらに悪化し習主席の健康問題も取り沙汰されている
  • 後継者擁立見送りは習総書記が4期目も続けると内外に宣布したに等しい
  • 4期目が終わるのは2032年で習総書記は79歳

■ 3. 続投の正当な理由

  • 現在の中国経済は低迷していて総書記続投を望む声は聞こえてこない
  • 総書記を続ける正当な理由が必要
  • 3期目続投時に北京の西側外交筋の間で飛び交った話:
    • 習総書記が祖国統一を果たすのにあと5年いただきたいと長老たちに直訴
  • 4期目続投を目指すなら祖国統一が最もありうべき理由
  • 習総書記は早く台湾統一に着手しないとと焦燥感にかられている可能性

■ 4. 路線変更の経緯

  • 2022年の暮れに3年に及んだゼロコロナ政策を停止
  • 2023年3月に3期目の習近平政権が正式に幕開け:
    • 政策の一丁目一番地に掲げたのは総体国家安全観
    • すべての分野で安全を優先するという社会主義的政策
    • 2023年7月に反スパイ法を改正
    • 国内の監視体制が一層強化され外資は逃げて経済はさらに低迷
  • 2024年3月の全国人民代表大会で約3000人の代表が地方の窮状を訴えたことがきっかけで経済回復優先に路線変更

■ 5. トランプ政権発足後の対応

  • 2025年1月に2期目のトランプ政権が発足しすさまじい関税攻勢に出た
  • 中国は味方を増やす必要性にかられ習主席が4月8~9日に中央周辺工作会議を招集
  • 日本を含めた周辺諸国との微笑外交を推し進める方針を打ち出す
  • 以後石破茂政権との友好関係が強化された

■ 6. 4中全会での再度の路線転換

  • 10月の4中全会で示されたのは再び安全優先路線
  • 2年後につつがなく総書記4選を果たすにはドン底の経済を立て直すよりガチガチに監視体制を強化したほうがよいと判断
  • 外交路線も微笑外交から戦狼外交へと先祖返り
  • 4中全会開催中に発足した高市政権と衝突するのも必然

■ 7. 中央軍事委員会の問題

  • 第20回共産党大会で習近平中央軍事委員会主席は中央軍事委の定員7名のうち人民解放軍の実力派3人を引退させ代わりにお友達を抜擢
  • この人事が軍内部で不評を買いお友達3人が次々と失脚に追い込まれた
  • 4中全会で欠員3人の補充はなかった
  • ヒラの委員だった政治将校の張昇民上将を定員2人のうち1名欠員だった副主席に格上げさせただけでお茶を濁した
  • 習主席が信頼できる部下がいない状況であり200万人民解放軍を完全に掌握しきれていないことを意味

■ 8. 習主席の軍への対応

  • 習主席は2024年11月5日に進博会の開会式を欠席
  • 代わりに海南島の海軍施設で3隻目の空母福建に乗り込み2000人以上の軍人を甲板に直立不動にして就役式典を挙行
  • ウクライナのゼレンスキー大統領が昨年5月に大統領の任期切れを迎えたがウクライナ有事を理由に1年半以上も大統領職を続けている
  • 同様に習近平総書記も台湾有事と総書記4選を絡めるかもしれない

■ 9. 2027年の3つの追い風

  • 2027年夏頃には習総書記にとって3つの追い風が重なる可能性:
    • 第一に2026年11月の米中間選挙で共和党が大敗すればトランプ大統領がレイムダック化しアメリカは次期大統領選も絡んで国内問題に忙殺されるので台湾有事に関わるリスクも軽減される
    • 第二に2026年11月の台湾統一地方選挙で民進党が大敗すれば天敵の頼清徳総統もレイムダック化し親中派勢力の最大野党国民党は2025年10月18日の主席選挙で最も親中的な鄭麗文候補が勝利し台湾を内部から変える準備を着々と整えている
    • 第三に2027年8月1日に人民解放軍が創建100周年を迎え習主席はこの時までに奮闘目標を達成すると明言しているので台湾統一へ向けて習主席と軍が一体化しやすい状況となる

■ 10. 高市首相発言の評価

  • 高市首相の存立危機事態発言は後の歴史家が的を射た発言だったと評価するかもしれない