■ 1. 生理痛体験プログラムの概要
- 近年日本の教育現場および企業研修において生理痛体験と呼ばれる新たな教育プログラムが急速に普及の兆しを見せている
- このプログラムはフェムテック技術の進展を背景に開発されたピリオノイド等の専用デバイスを用い男性の腹部に電極パッドを装着し電気刺激によって筋肉を痙攣させることで月経困難症や生理痛に近い身体的苦痛を人工的に再現するもの
- 具体的事例:
- 広島学院中学校・高等学校におけるイグナチオ・リーダーシップ・プログラムの一環としての導入
- 通信建設大手エクシオグループにおける男性社員向け研修としての実施
- 表向きの目的は女性の健康課題への理解促進他者の痛みへの想像力の涵養生理休暇の取得促進といった人道的かつ進歩的な目的
- 経済産業省のフェムテック等サポートサービス実証事業費補助金の採択事業として実施されるケースもあり国策としての女性活躍推進と深く結びついている
■ 2. 根本的な問題点
- 教育の名の下に行われる身体的侵襲の正当性
- 共感という概念の恣意的な運用
- その背後にある男性=特権階級/加害者女性=被抑圧者/被害者という固定的ドグマの権力性
- 苦痛による思想誘導はヤバイこと自体は自明
■ 3. 隠されたカリキュラム
- 教育社会学における隠されたカリキュラムとは教室と社会環境の両方で伝わる規範価値観信念など学校現場で学んだものの明示的に意図されていない教訓を指す
- 生理痛体験授業が参加者に学習させているのは単なる生理痛のメカニズムや痛みそのものではない
- それは男性の身体ないし精神/或いは両方はそのままでは女性の苦しみを理解できない欠陥を抱えており肉体罰による矯正が必要であるというメッセージの打ち込み
- 広島学院の事例では寄り添う対象として特権的に選ばれているのは女性の痛みであり男性固有の痛みではない
- エクシオグループの事例では男性社員が動けなくなるほどの痛みに顔を歪める様子が公開されそれが理解の証として称揚された
- 人間が苦痛を感じる様子が否定すべき姿ではなく肯定すべき姿として捉えられるのはどう言葉を取り繕っても懲罰以外の説明は不可能
- 懲罰の対象は男性属性自体以外の答えはない
■ 4. スレーブ・カテキズムとの類似性
- カテキズムとはキリスト教の教義を質問と回答の形式で暗記させる教育手法
- 白人の宣教師や奴隷主達は特定の教義を反復させることで思考の枠組みそのものを支配しようと試みた
- 最大の特色は問答でありながら一つの答えを言う事しか許されず奴隷が自主的に答えを言ったり覚えたりするまで肉体罰を下された事
- カテキズムは単に命令に従うことを教えるのではなく服従=善反抗=悪という道徳的等式を奴隷の精神に焼き付ける役割を果たした
- 白人は黒人が自ら鞭打ちを懇願し頭を下げ自身の不徳を告白し贖罪を申し出ることによってその完成を図った
- このスレーブ・カテキズムと生理痛体験の酷似性は言うまでもない
■ 5. 対称性の欠如
- スレーブ・カテキズムは問答でありながら奴隷が尋ねる事は許されていない
- 奴隷が自らの不徳を告白しても主人は罪を告白する必要はない
- この対称性の欠如こそスレーブ・カテキズムの最大の欺瞞であり権力による内心の自由の侵害の証
- 生理痛体験に対する最も根源的な批判はその非対称性
- 男女間の相互理解が真の目的であるならばそこには痛みの交換における互恵性が存在しなければならない
- しかし現状のプログラムは一方通行であり男性に対してのみ女性の痛みを身体的に体験することを求めている
■ 6. 思考実験による非対称性の露呈
- 男性が女性は男性の痛みを知るべきだとし労災死の男女比率が24:1であることを理由に女性にソリッドビジョンで死の体感させたりあるいは過労死の男女比率が12:1であることを理由に女性に死亡寸前状態まで働く体験を企業研修や学校授業に盛り込んだらどう思うか
- また精巣への打撃による痛みがコメディとして消費されてる事を指してミサンドリーを矯正するとして女性に電気刺激で精巣痛を再現する装置を装着させようとしたらどうなるか
- それらは即座にミソジニーハラスメント暴力的と指弾されるだろう
- この非対称性は現代社会において女性の痛みは政治的・道徳的資源となるが男性の痛みは無価値自己責任あるいは娯楽であるという苦痛のカースト制度が確立されていることを示唆
■ 7. 共感の帝国主義
- 対照性を欠いた共感教育は真の相互理解ではなく一方の性別が他方の性別の定義する現実に従属することを強いる共感の植民地化に他ならない
- エクシオグループの事例において参加した男性社員は動けないほどの痛み女性はこれを毎月耐えていてすごい尊敬するという感想を述べている
- これは一見すると共感の成功例に見えるが構造的には男性の免罪符獲得儀式
- 男性は自らの身体を一時的に差し出し痛みに耐えるパフォーマンスを行うことで女性の苦しみを理解しない鈍感なマジョリティというスティグマから解放され道徳的な承認を得る
- このプロセスにおいて男性自身の抱える固有の痛みや困難について語る余地は完全に排除されている
■ 8. 任意性の幻想
- 建前上は例えば広島学院はワークショップ参加は必修だが体験は任意だが学校や企業という閉じた社会空間における権力力学を考慮すればその任意性は極めて脆弱あるいは幻想に過ぎない
- アーヴィング・ゴフマンが提唱した全体的施設の理論を適用すればこうした空間において構成員の行動は管理され集団規範への同調圧力が極めて強く働く
- 広島学院では生理痛体験は人の痛みに寄り添うという道徳的な大義名分のもと高校3年生の必修プログラムの一環として位置づけられた
- 企業の生理痛体験に至っては論外で日本の企業社会という共同体においては会社が企画した研修プログラムへの参加拒否は人事評価や職場内の人間関係に直結するリスクがある
■ 9. ハラスメントとしての側面
- 生理痛体験は法的なハラスメントの定義さらには身体的完全性の侵害に抵触あるいは踏み抜いてる可能性が大
- 厚生労働省によるパワーハラスメントの定義は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害されること
- 電気を流して筋肉を痙攣させ激痛を与える行為は客観的に見て身体への攻撃に該当しうる
- なぜ生理痛体験においてはこの明白な身体的攻撃及び精神的攻撃が許容されるのかそれは目的の正当性が手段の暴力性を覆い隠しているからに他ならない
- これが通るのは女性が男性にやる攻撃だから以外で説明する事は不可能
■ 10. アカハラと体罰
- 学校教育法第11条は学校における体罰を厳格に禁止している
- 体罰とは身体に対する侵害を内容とする懲戒であり肉体的苦痛を与えることを含む
- 生理痛体験授業において生徒に電気刺激による痛みを与える行為は教育的指導の一環として意図的に苦痛を与える行為は教育基本法が定める個人の尊厳の尊重に反する疑いがある
- 生理痛体験はセクシャル・ハラスメントという側面も多分にある
- ピリオノイドの使用に際しては下腹部の子宮の位置という極めてプライベートな部位にパッドを貼る必要がある
■ 11. 内心の自由の終焉
- 生理痛体験プログラムが真に恐ろしいのはそれが良かれと思って行われている点
- かつての奴隷主が奴隷の魂を救済するためにカテキズムを強いたように現代の啓蒙者たちは男性の鈍感な魂を救済する為に電気ショックを正当化する
- ここにおいて個人の身体はもはや本人だけのものではなく社会的な正しさを証明するための実験台あるいは政治的メッセージを刻み込むためのキャンバスへと変質している
- これは男性の身体の雌有化とも呼ぶべき事態
- 生理痛体験は痛みを理解しているフリでは許されず物理的な苦痛を神経系に直接流し込み生理的な反応を引き出すことで内面的な反省を強制的に外部へ出力させる
- これは近代が守り抜いてきた内心の自由に対する技術的・道徳的な手段を用いた蹂躙
■ 12. もたらされる結果
- 相互理解を掲げながらこのプログラムが実際にもたらすのは男性の怨嗟と女性の凶暴化
- 男性は口では女性の大変さが分かったと言うだろうが内面では何故自分が性別自体を理由に不当に身体を痛めつけられ加害者扱いされねばならないのかという不条理感を蓄積させる
- 女性にとってもこのような儀式によって得られた相互理解が真に血の通った共感であるとは信じられず苦痛を与えなければ理解出来ない存在として男性を蔑視する構造を補強しより男性を痛めつけよう方向に進む
- 生理痛体験という名の現代版カテキズムが広く受け入れられている現状は我々の社会が他者の尊厳を肉体的制裁によってしか処理出来なくなってる精神的退廃の証に他ならない