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高市首相に「連立離脱」を迫っていたのに…「衆院定数削減」問題で露見した与党・維新の“力量不足”

要約:

■ 1. 記事の概要

  • 高市早苗政権の至上命題だった衆院議員定数削減問題は実現の見込みがないまま越年する
  • 日本維新の会の吉村洋文代表は当初強く迫っていたにもかかわらず政権から離脱することはないとの考えを明らかにした
  • 与党維新の力量不足が露見した

■ 2. 吉村代表の方針転換

  • 吉村洋文代表は12月20日衆院定数削減法案の臨時国会成立を強く迫ったにもかかわらず来年の通常国会で法案の成立を目指すが成立しなくても政権から離脱することはないとの考えを大阪市内で記者団に明らかにした
  • 自民党が高市総裁のリーダーシップで法案をまとめ共同提出したこと自体を評価した
  • 拍子抜けと言っていい

■ 3. 維新の当初の主張

  • 吉村氏は衆院定数削減を改革のセンターピンと位置付けていた
  • 藤田文武共同代表が比例選だけで50議席減がスピーディーでシンプルだと豪語したこともあった
  • 12月5日に臨時国会に共同提出された法案は小選挙区で25議席比例選で20議席を削減するという内容
  • 吉村氏は1年以内に結論を出せなかった場合自動的に議員定数を削減するという条項を捻じ込んだ
  • 野党や自民党の一部から乱暴だとの声が上がっていた

■ 4. 維新による連立離脱カードの使用

  • 吉村氏は12月12日結論が出るまで会期を延長するべきだ結論を出さずに終わるこんな政治はまっぴらごめんだと語気を強めていた
  • 15日の参院予算委員会では片山大介氏がこの法案は連立政権の発足の要件だけでなく存続の要件でもあると高市首相に迫っていた
  • 政府与党内調整や与野党間の合意形成の仕組みや段取りに通じていないただのお騒がせ男の独り相撲なのか
  • それとも何かと連立離脱カードを切るという猿芝居を見せつけられていたのか

■ 5. 自民党と国民民主党の急接近

  • 吉村氏が通常国会で衆院定数削減が実現しなくても連立離脱しないと言明したのは12月18日に自民党と国民民主党が急接近したのと無関係ではないだろう
  • 高市首相は所得税の非課税枠年収の壁の引き上げで現行の160万円から178万円に引き上げるという国民党案を丸吞みした
  • 国民党の玉木雄一郎代表は25年度補正予算に続いて26年度予算案の成立にも協力する考えを明らかにした
  • 23日の講演では連立政権入りを模索していると述べている

■ 6. 維新の戦略

  • 維新の藤田共同代表は12月25日国民民主党の連立入りをウェルカムだとしつつ自維連立合意文書に明記された政策を全て受け入れることが条件であるとの考えを示した
  • 副首都構想などが念頭にある
  • 自維国連立政権を視野に重点政策の主導権争いが始まっているとも言える
  • 維新が閣外協力を続けるのは高市内閣の支持率が高水準を保っていることもある
  • 言い換えれば首相の求心力を利用して自民党の譲歩を引き出そうという企みでもある

■ 7. 高市内閣の支持率

  • 12月の読売新聞世論調査で高市内閣の支持率は73パーセントで10月の内閣発足以降最高を更新した
  • 内閣発足直後から2か月後も支持率70パーセント以上を維持したのは大平正芳内閣以降では細川護熙小泉純一郎両内閣に続く3例目
  • 衆院議員定数削減については賛成78パーセント反対13パーセント
  • 石破茂前政権がどよーんとした感じで何にも動かないという感じがあったのに対し高市政権は明るいイメージで何かやってくれるという期待値が高まっている

■ 8. 政治情勢

  • 閣外協力の維新と部分連合を目論む国民民主党が政策実現のために自民党との距離の近さを競う合うという政治情勢に入っている

■ 9. 臨時国会での経緯

  • 自維両党によって12月5日に提出され衆院政治改革特別委員会に付託された衆院定数削減法案は審議入りもせずに継続審議となった
  • 特別委は立憲民主党の伴野豊氏が委員長で企業団体献金の受け手規制を強化する政治資金規正法改正案が先行審議され先入れ先出しの原則に沿ったもの
  • 15日には特別委での参考人質疑が終わった時点で維新の会の浦野靖人理事が突然政治資金規正法改正案の質疑打ち切り採決を求める動議を出し野党の反発を招く事件も起こしている
  • 継続審議は当然の結末だった

■ 10. 定数削減の問題点

  • 衆院議員定数は民主主義の土台である選挙制度の根幹にもかかわらずなぜ1割削減なのかなぜ政党交付金や議員報酬の削減ではないのか維新から本質的な説明はほとんどなかった
  • 現在の衆院議員定数は465で人口が7000万人余だった終戦直後の466と同水準
  • 人口比では主要国よりも少ない方
  • これ以上の削減は国会に多様な国民の声が届かなくなる恐れがあるほか法律の制定や行政の監視といった機能に支障をきたしかねない

■ 11. 野党の批判

  • 立民党の斎藤嘉隆参院国対委員長は12月12日吉村氏のまっぴら発言をめぐって多少会期を延長したとしても成立は100パーセント無理だと述べた
  • 本当に法案を通したいなら各党にも説明を尽くす必要があるし必要なプロセスを踏んで提出するのが当たり前だ
  • 必要なプロセスを全く踏まずに採決をしないのはけしからんと言うのは無知の極みだ
  • ここは国会であって無理を通せば道理が引っ込むような世界ではない
  • この法案については顔を洗って出直された方がいい

■ 12. 公明党の批判

  • 公明党の斉藤鉄夫代表は17日の記者会見で自民維新の新しい政権与党の進め方は少し強引だ別の言葉でいうと乱暴すぎたのではないかと述べた
  • 今回審議が進まなかった責任が野党にあるかのような言説は本当に許せない

■ 13. 公明党の立場

  • 連立を離脱した公明党は定数削減問題のキープレーヤー
  • 創価学会は10月22日に方面長会議を開き今後衆院選は比例選に特化していく小選挙区は現職を除いて撤退し他党とは地域ごとの人物本位で推薦などの選挙協力とするとの方針を決定
  • 重要なのはその裏で自民党が維新と共同で衆院比例選の定数削減法案を提出したら自民党には選挙協力しないことも申し合わせたこと
  • 公明党創価学会のメッセージは国会地方議員から自民党に陰に陽に伝えられた
  • 公明党は企業団体献金規制などへの対応をめぐって日に日に野党色を強めていく

■ 14. 自維非公式協議

  • 自民党内に衆院定数削減に応じる空気は薄かった
  • こうした事態を打開しようとしたのが11月30日衆院議員赤坂宿舎での自維非公式協議
  • 自民党の木原稔官房長官萩生田光一幹事長代行維新からは藤田共同代表遠藤敬国会対策委員長阿部圭史代表幹事室長が顔をそろえた
  • 自民党は衆院定数削減の基本方針を定めたプログラム法案の共同提出を提案
  • 遠藤氏がうちは企業献金で自民党に譲ったんやそこを汲んでもらわんと吉村や藤田が持たん定数削減するっていう実効性の担保が必要やと切り返した
  • プログラム法案に同調する代わりに1年後に結論を出せなかった場合の担保として自動削減条項の導入を強く求めた
  • 萩生田氏が自動削減条項を受け入れたうえで野党の協力を求めるには比例選のみ50減ではなく小選挙区25比例選20の計45減とすべきだと説き最終決着を導いた

■ 15. 法案提出の経緯

  • 12月1日の自維党首会談はこうした衆院定数削減法案の内容で合意
  • 自民党は3日の総務部会政治制度改革本部合同会議で加藤勝信本部長に取り扱いを一任し異論が多かった自動削減条項を含む法案の了承に漕ぎつけた
  • 維新の閣外協力からの離脱を防ぐことが最優先だったのだろう
  • 5日の総務会は総務の1人が反対の意思を示すために途中退出したが最終的に法案を了承した
  • 10月に交わされた自維連立合意書には臨時国会に法案を提出し成立を目指すと記されている
  • 永田町文学で成立を目指すは法案を提出すれば目指すことになる約束を守ったという解釈が成り立つらしい

■ 16. 熱量の差

  • 自維両党が5日に衆院定数削減法案を共同提出した後維新の浦野氏が成立までが仕事だと意気込んだのに対し自民の加藤氏は我々のミッションは法案提出で一区切りだと述べ熱量の差をうかがわせた
  • 維新の馬場伸幸顧問は9日のBS11番組で定数削減法案が成立しない場合に首相は衆院解散総選挙に打って出るべきだと主張
  • 自民党の中に獅子身中の虫がいるとも述べ高市降ろしの兆しがあるとの見方も明らかにした

■ 17. 維新の成功体験と問題点

  • 身を切る改革を掲げる維新には大阪府市議会で議員定数削減を実現し支持を伸ばした成功体験がある
  • 大阪府議会は定数が109だったが2011年に88に22年に79に削減され36選挙区が1人区となり過半数を握る維新にとってさらに有利になった
  • 大阪市議会でも23年に定数を81から70に削減する改正条例が成立
  • 結果的に維新の支配が強まる一方で他党の身を切る改革になった面もあるのではないか

■ 18. 参院での多数派工作

  • 自民維新両党は衆院で与党会派が過半数に達したが参院は過半数に6議席足りない少数与党
  • 法案を成立させるためには国民民主党か参政党かに賛成に回ってもらうなどの多数派工作が必要になる
  • 藤田氏は12月4日参院で15議席を持つ参政党の神谷宗幣代表と国会内で会談し衆院定数削減法案への協力を要請
  • 神谷氏は賛意を示しつつ協力の条件として中選挙区制導入や公設秘書の増員スパイ防止法制定を挙げたため話がまとまらなかった

■ 19. 結論

  • 政治を前に進めるには与野党や利害関係者の間で小さな合意形成を積み重ねる必要がある
  • そこに向けての説得の技術は論理や物心両面の支援飲み食いを含めて関係者が納得でき行動に移すようもっていく政治家の力量に通じるもの
  • 維新にとって来年の通常国会で衆院定数削減や副首都構想を実現するにはこうした技術を磨くことも必要なのではないか