■ 1. 2025年の戦争情勢の特異性
- 40以上の戦争を取材してきたBBC世界情勢編集長が2025年ほど気がかりな年は見たことがないと指摘
- 複数の大規模紛争が同時進行している点よりもウクライナ紛争の地政学的重要性が突出している点が問題
- ゼレンスキー大統領はウクライナ紛争が世界大戦にエスカレートする可能性を警告
■ 2. ロシアによる西側への脅威
- NATO諸国は海底ケーブル切断の可能性に対して厳戒態勢を敷いている
- ロシアのドローンがNATO諸国の防衛を試している
- ロシアのハッカーが諸外国の省庁や緊急サービスや巨大企業を機能停止に追い込む方法を開発
- ロシアから西側へ逃れる反体制派をロシア諜報機関が殺害している
- 2018年ソールズベリー事件の独立調査はプーチン大統領自身が攻撃に合意したと結論
■ 3. 2025年に進行中の三つの主要戦争
- ウクライナ戦争:
- 国連によると1万4000人の民間人が死亡
- ガザ紛争:
- 2023年10月7日のハマス攻撃で約1200人が殺害され251人が人質に
- イスラエルの軍事行動によって7万人以上のパレスチナ人が殺害されたとハマス運営の保健省が発表
- 死者には3万人以上の女性と子どもが含まれる
- スーダン内戦:
- 二つの軍事派閥が激しい内戦を展開
- 数年間で15万人以上が殺害され約1200万人が家を追われた
■ 4. ウクライナ戦争の特異性
- 中東の紛争とは別次元の重要性を持つ
- 冷戦を除けば過去の紛争のほとんどは小規模で世界全体の平和を脅かすほど深刻ではなかった
- ヴェトナム戦争や第一次湾岸戦争やコソヴォ紛争も最終的には拡大しなかった
- 大国は局地的通常戦争が核戦争に発展する危険性を恐れていた
- 2026年にロシアはこれまでより圧倒的な勢力伸長を追求する用意と意欲がある
■ 5. プーチンの発言と行動
- プーチンはヨーロッパと戦争するつもりはないが欧州が望むなら今すぐ戦争する用意があると発言
- 相互尊重があれば新たな特別軍事作戦はないと主張
- ロシアはウクライナを侵略し膨大な数の民間人と軍人の死を引き起こしている
- ウクライナはロシアが少なくとも2万人の子どもを誘拐したと主張
- ICCはプーチン大統領の逮捕状を発行しているがロシアは容疑を否定
- ロシアはNATOの侵食から自国を守るためと主張する一方でロシアの勢力圏回復の動機も示している
■ 6. アメリカの姿勢変化
- 第2次世界大戦以来続いた戦略体制にアメリカ大統領が背を向ける事態
- プーチンはこの状況をありがたく認識している
- アメリカ政府はヨーロッパを守りたいかどうか定かでない
- トランプ政権の国家安全保障戦略は欧州が文明の消滅という展望に直面していると主張
- クレムリンはこの報告書を歓迎し自分たちの見解と一致すると評価
■ 7. ロシアとヨーロッパの経済・人口比較
- ロシア国内ではプーチンが内政反対派を沈黙させている
- インフレ率は鈍化しているが再上昇の可能性
- 石油収入は減少し政府は戦費調達のため付加価値税を引き上げ
- EUの経済規模はロシアの10倍でイギリスを加えればさらに大きい
- ヨーロッパの総人口4億5000万人はロシアの1億4500万人の3倍以上
- 西ヨーロッパは快適な暮らしを失いたくない様子でアメリカに防衛を依存し自国の防衛費負担に消極的
■ 8. アメリカの孤立主義化
- 今のアメリカは影響力が低下し内向きで以前とは様変わりしている
- 1920年代や1930年代のように自国の国益に集中したいと考えている
- トランプが中間選挙で政治的影響力を失っても国の針を孤立主義へ大きく振りすぎた可能性
- 2028年により親NATO的な大統領が誕生してもヨーロッパ支援は難しいかもしれない
■ 9. 2026年の展望とエスカレーションリスク
- 2026年は重要な年になる
- ゼレンスキーはウクライナ領土の大部分を割譲する和平合意に応じざるを得ないかもしれない
- プーチンが数年後にさらに領土を要求して戻ってくるのを防ぐ十分な保証があるか不明
- ウクライナを支援する欧州諸国は自分たちもロシアと戦争状態にあると考えている
- アメリカがウクライナに背を向けるなら欧州の負担は巨大な重荷になる
- 核兵器による対決に発展する可能性について:
- プーチンは賭けに出ることがある
- 側近たちは新兵器で欧州諸国を地図から消し去ると脅すがプーチン自身は自制的
- アメリカがNATO加盟国として活動し続ける間はアメリカの核報復リスクが大きすぎる
■ 10. 中国と台湾の状況
- 習近平国家主席は最近台湾への脅しをあまりしていない
- 2年前にバーンズCIA長官は習近平が台湾侵攻準備を2027年までに整えるよう命じていると発言
- 中国が台湾掌握の決定的行動を取らないと弱腰に見えると習主席は考えるかもしれない
- 中国は強大で裕福だが国内世論を気にしている
- 1989年の天安門事件以来中国の指導者は国民の反応を徹底的に監視
■ 11. 天安門事件の実態
- 1989年6月4日の出来事は武装兵士が非武装学生を撃ち殺すだけではなかった
- 北京をはじめ中国の多くの都市で一般労働者階級が当局への攻撃を共産党支配打倒の機会にしようとした
- 天安門事件の2日後に少なくとも5カ所の警察署と3カ所の公安本部が焼け落ちていた
- 怒る群衆が警官に火をつけ焼け焦げた遺体を壁に立てかけていた
- 軍は学生デモ鎮圧だけでなく普通の中国人による民衆蜂起を踏みつぶしていた
■ 12. 中国政府の統制体制
- 中国の政治指導部は36年前の出来事の記憶を葬り去ることができず政府に反対する世論の台頭を警戒
- 法輪功や独立系キリスト教会や香港の民主化運動や地元の腐敗への抗議などすべてが強力に踏みつぶされる
- 習近平のライバルだった薄熙来は選挙で選ばれたわけではない政府がどれほど不安を抱えているか語った
- 薄熙来は収賄や横領や権力乱用で有罪判決を受け2013年に終身刑
■ 13. 2026年の総合的展望
- 中国の力は増し台湾掌握に向けた習近平の戦略がいっそう明確になる
- ウクライナ戦争はプーチンにとって有利な条件で決着するかもしれない
- プーチンは用意が整い次第さらにウクライナ領土を奪うため戻れるようになるかもしれない
- トランプは中間選挙で失速する可能性はあるがアメリカをヨーロッパから遠ざける
- ヨーロッパの視点から見れば見通しは極めて暗い
■ 14. 第3次世界大戦の新たな形態
- 第3次世界大戦は核兵器の撃ち合いではなくさまざまな外交的・軍事的駆け引きの集合になりそう
- その末に専制政治が栄え西側の同盟を分裂させる恐れがある
- このプロセスはすでに始まっている