■ 1. 立憲民主党と公明党の合流の背景
- 政策面からは両党の合流はさほど不思議ではない
- 両党のターゲット支持層は中の下程度の経済階層である
- アジャイルな資本主義に適応しきれていない有権者が対象である
- 高齢者やデジタル社会で情報取得が苦手な層が支持すべき政党である
- 共産党は他の二党より急進的と位置付けられる
- 二党でまとまること自体は悪くない
- 問題は前者の立場に中道改革と名づけるセンスである
■ 2. 情報化社会に適応した層の支持政党
- より情報化社会に適応した人々は減税や効率化といった小さな政府路線を喜ぶ
- 知識があれば積極的に取りに行けるNISAやふるさと納税のような制度を喜ぶ
- そういった層は国民民主や維新を支持している
- この対立が選挙で明白になるのは決して悪いことではない
■ 3. 中道が世界的に死にゆく勢力である理由
- 中道ないし新しい左派のブーム起源:
- 1993年から二期アメリカ合衆国大統領を務めたビル・クリントンが掲げた
- 1992年の選挙でクリントンは二期目を目指すブッシュ大統領を下した
- 1988年大統領選では労働組合支援を受けた左派的デュカキスがブッシュに敗北した
- デュカキス敗北後に民主党内左派は勢いを失った
- 中道的な第三の道を掲げるクリントンらのグループが台頭した
- クリントン政権の政策:
- マイノリティ権利向上では従来型リベラルな政策を進めた
- 経済ではグローバル化と規制緩和を推進しレーガンのネオリベラリズム路線を継承した
- 1994年北米自由貿易協定NAFTA発足が象徴である
- メキシコから安い製品が大量流入し米国内労働者の立場が弱化した
- 労働組合と環境保護団体を怒らせた
- メキシコでは農村が米国の巨大農場産安価農作物との競争を強いられ反対運動が活発化した
- 1994年1月NAFTA発足に合わせたメキシコ・チアパス州先住民反乱が最初の批判運動である
- 反グローバル化という用語が作られた
- 反グローバル運動の頂点:
- 1998年シアトルでのWTO閣僚級会議への反対運動が頂点である
- WTOは経済自由化を地球レベルで行う組織である
- 環境保護団体と労働組合は基本的に犬猿の仲であった
- シアトルで経済グローバル化という共通の敵を見つけた
- 環境保護団体・消費者運動・労働組合・第三世界農民などが会場を取り囲んだ
- 各国代表団の会場入りを阻みWTO活動を阻んだ
- 左派の分裂:
- 世界の左派はグローバル市場支持の第三の道派と批判する急進左派に分裂した
- 情報化社会やバイオ産業隆盛はクリントンら中道派の功績である
- 規制緩和は多くの国で公共事業民営化を促進し貧困層の生活を悪化させた
- 1990年代はクリントン・ミッテラン・ブレア・シュレーダーなど改革中道左翼が経済グローバル化を推進した時代である
- 米国での左派への反発:
- ラストベルトで左派への反発が高い
- クリントン路線がマジョリティ労働者層を軽視し性的・民族的マイノリティや台湾・インド移民を厚遇しているように見えた
- 日本での状況:
- 日本では第三の道派が政権をとったことがない
- ガイアツや時流に乗る形で改革を受け入れてきた
- 小渕恵三首相は第三の道路線のための委員会を作った
- 現在の中道勢力への批判:
- 各国で大きな批判にさらされている
- マイノリティ優遇面を批判すると急進右派になる
- 経済自由化を批判しユニバーサル人権を政府の役割と規定すると急進左派になる
- 英国では急進左派コービンが若者の大支持を得て労働党党首に着いた
- 座は中道派に奪い返されたが中道的労働党からの若者支持は離れている
- フランスでは社会党が壊滅寸前で急進派メランションが勢いを得ている
- クリントン時代と違いもはや中道はかっこいい存在ではない
- 中道改革の意味:
- 中道保守は現状維持を旨として政治を行うニュアンスである
- 中道改革は何かを変えていくことになる
- イデオロギーに寄らない改革だと経済成長や効率といった指標追求のクリントン的ネオリベ政策に寄る
- 公共サービス民営化・効率化で小さいながら効率的な政府を作りマイノリティや移民権利向上で経済活性化という主張はあり得る
- しかしそれが立憲民主党後継政党の仕事ではない
- 振興政党の名前として中道を選ぶセンスは世界トレンドから外れている
■ 4. 中道改革が有権者に有意な情報を提供していない理由
- 大抵の人は自分の意見こそが中庸だと思っている
- 問題は何と何の間かということである
- XX主義と言えば通常は目指す方向性を示す
- 有権者はその方向性に共感できれば応援し間違っていると思えば批判すればよい
- 選挙は市民のハンドルのようなものであるべきである
- 政治家や政党が主役ではなく一般市民こそが主権者である
- 経済政策における右と左:
- 右は資本主義的市場競争が公正で障害なく行われることが社会を進歩させるという市場原理主義的立場である
- 左は市場原理主義だと格差が増大しハンディキャップを持った人中心に生活が成り立たなくなるので再分配強化と公平性高い社会制度構築を目指す立場である
- どんな経済右派でも子どもの栄養不良を放置すべきとまでは思っていない
- どんな左派でも能力や労働時間に関わらず全労働者同一給料とは思っていない
- 現状を見て規制緩和や福祉縮小で競争性を高めるべきか格差是正で貧困世帯支援を強めるべきか考える
- 重要なのは政党の立ち位置が現状より右か左かがわかることである
- 有権者こそが自分にとっての中道の位置を決める権利がある
- 有権者の多くが左方向に大改革を望むなら左派政党がより多数を占める
- 市民が迷い急進的改革は好ましくないと考えるなら与野党議席差は小さくなる
- 市民にとっての中庸な政策は市民自身が決めるべきである
- 私の政策こそが中道ですと政党が押し付けるべきではない
■ 5. 中道の暴力という問題
- 公平でバランスの取れた視点の定義:
- 本来はさまざまな意見を持つ人々が熟議を重ねてたどり着く見解であるべきである
- 人間は要素に分解し要素ごとに二項対立になる問題設定をしその結果を組み合わせる作業をしている
- 政策議論では細かい言明について一つ一つ肯定・否定の立場に立って確認する作業が必要である
- 確認には多様な視点が参加する方が好ましい
- 政党は綱領に賛同する人が自発的に集まる組織なので一定のバイアスは避けられない
- 国会の機能:
- 様々なバイアスのかかった意見に票数という形で重み付けをした議席を割り振る
- それらの意見を国民の代表が多角的に検討することで暫定的に中道な政策を規定する
- 中道な意見は手続的にのみ正当化される
- 最初から中道な意見があるわけではない
- 偏った意見への忌避:
- 偏った意見を言うこと自体が忌避される風潮がある
- 偏った意見主張は場の和を見出し時間を浪費させ議論を正解から遠ざける悪いことと考えられる
- 実際は偏った意見を吟味した結果ではない意見は古い常識の維持や多数派の思い込みや権威主義や日和見主義の結果である
- 無条件に正解だと見做せるものではない
- 健全な結論を見出すための条件:
- 参加者の多様性を高める
- 異論が権威的に封殺されないように配慮する
- 敢えて反論を出してみる悪魔の代理人を誰かが引き受ける
- これは政治のみならず企業会議でも配慮されるようになってきている
- 中道称揚の問題:
- 中道を称揚し極端な意見を嫌う風潮は本来議論の俎上にのせるべき少数意見を見ないものあるいは見るべきでないものとする
- 単に考えるのが面倒なので常識的見解を中道としている場合がある
- こうした力学を積極的に使って社会問題から目を背けさせようという意図がある場合もある
- 過激中道という批判:
- こうした中道勢力を欧米では近年過激中道と批判的に分類している
- 我々はイデオロギーから自由であり効率を重視しエヴィデンスのある政策のみを実施すると主張する
- しかし主張するのは大抵ネオリベラリズム経済の延命である
- 減税は経済活性化のエヴィデンスがある・健康保険や年金は維持不可能で不効率・公共資産は不効率なので企業に譲渡すれば経済効果が見込めるという議論である
- 経済活性化と社会効率化という常識が振り翳されることで人類がなぜ社会や共同体を発展させてきたのかや個々人の幸福とは何かといった根源的な問いが封殺される
■ 6. 結論
- 論争において自分が中道であるという宣言は避けるべきである
- 世界では左右二大政党の間に小規模な中道政党が存在しキャスティングヴォートを握る形で影響力を示すケースもある
- しかし政権を中心的に担う政党として左右の別を明らかにしない中道宣言が政党政治において機能するとは思わない