■ 1. アンダークラスの定義と概要
- 定義: 非正規労働者のうち家計補助的パート主婦・非常勤役員・管理職・専門職を除いた残りの人々
- 規模: 約930万人・就業人口の約15%を占め急速に拡大中
- 収入: 平均年収186万円・貧困率38.7%(女性は約50%)
- 職種: 販売員・料理人・給仕・清掃員・レジ係・倉庫夫・介護員・派遣事務員など
- 概念の由来:
- スウェーデン出身の経済学者ミュルダールが現代的意味で初めて使用
- 社会的・経済的移動が困難な人々が社会の大多数の下に位置するという概念
- 米国では「救済に値しない人々」というニュアンスに変質していった
■ 2. アンダークラスと労働者階級の相違
- 従来の労働者階級は正社員として安定した地位とそれなりの賃金水準を持つ
- アンダークラスは雇用不安定・低賃金・結婚や家族形成も困難であり「階級以下」の存在
- 職種構成の観点から労働者階級(ブルーカラー)と同一視できない
- アンダークラスには事務職(ホワイトカラー)も少なからず含まれる
- 学歴の観点からも単純に労働者階級とはいえない
- 中卒者が多い一方で大卒者も一定数存在する
- 日本のアンダークラスは零落した労働者階級だけでなく零落した中間階級・プチブル階級も多く含む
■ 3. 固有のハビトゥスや趣味の欠如
- アンダークラスに固有のハビトゥス(身体化された行動様式)や趣味が見当たらない
- ブルデュー『ディスタンクシオン』による各階級の特性:
- 支配階級: 実用性から距離を取った余裕ある趣味態度を持つ
- 中間階級: 上昇志向に基づく勤勉な趣味態度で卓越性を示す
- 労働者階級: 実用性に即した趣味により中間階級のモノサシから心理的距離を保つ
- 各階級固有のハビトゥスや趣味は社会的・心理的適応に貢献する側面を持つ
- アンダークラスの人々のハビトゥスや趣味は雑多で統一性がない
- 労働者階級的・中間階級的・ハビトゥスが失われた状態など混在
- 日本ではヨーロッパ的な階級意識がもともと乏しい
- 太平洋戦争後・GHQ施策等を経て「一億総中流」と呼ばれる状況が生じた
- 中間階級的上昇志向を内面化したままアンダークラスの状況に置かれることは精神的に過酷
- アンダークラスはメンタルヘルスの問題に直面する割合が統計的に高い
■ 4. 世代再生産の不成立と社会的帰結
- 従来の階級はハビトゥスや趣味の継承を通じて世代から世代へと続く
- アンダークラスは世代再生産が成立していない
- 特に男性において結婚・子育てが困難
- 世代を跨ぐことができないため階級たりえない
- 子育て環境の問題:
- 中間共同体の消失により育児のリソースは親からの直接伝授か金銭購入に限られる
- 資源が不足する場合は学力・スキル・ハビトゥスが乏しいまま子どもが社会・学校へ出ることになる
- アンダークラス家庭の子どもは学校や社会での不適応・メンタルヘルス問題を呈しやすい
- 経済問題とメンタルヘルス問題は相互に原因・結果の関係をなす
- 総合的な理解: 「経済・心理・社会的な諸資源の総合としての世帯が回らなくなるとアンダークラスという状況が到来する」
- セルフネグレクトの問題とアンダークラス状況は近接している
- 国・自治体・ボランティアによる支援は小回りがきかずプライバシーとの兼ね合いもあり限界がある