赤穂市民病院で2020年1月、医療用ドリルを用いた手術中のミスで患者の神経を損傷して全治不能の傷害を負わせたとして、業務上過失傷害罪に問われた元脳外科医の松井宏樹被告(47)に、神戸地裁姫路支部は12日、禁錮1年、執行猶予3年(求刑禁錮1年6か月)の有罪判決を言い渡した。
医療行為における業務上過失障害罪で有罪判決が下されるのは極めて異例だ。
判決で佐藤洋幸裁判長は、本件医療事故が発生した原因を「止血の回数が少なすぎたため、術野に血液等が貯留し、どの部分を切削しているのか理解困難な状況の中、なおもドリルで切削を行った結果」と認定した。
助手を務めた科長の吸引や指示が不適切だったために事故が起きた、などとする被告及び弁護人の主張を「被告の供述は信用できない」などと退け、「仮に科長の作業が不適切ないし不十分なために十分な止血措置ができなかったのであれば、ドリルによる切削を中断して、科長による作業の進捗を待つなどすべきだった」と一蹴。「業務上の注意義務の違反に他ならない」と被告の過失を指摘した。
さらに、こうした被告の主張について、「科長に一部責任を転嫁するかのような発言」とした上で、「自身の過失の結果として被害者に多大な苦痛を与えているという現実に真摯に向き合えているのか、疑問なしとはいえない態度」と咎め、「罰金刑程度にとどまる事案とは到底言えない」と述べた。
一方、求刑から減刑して執行猶予を付けた理由として、被告が医師として就労することが事実上不可能な状態になっている点や、民事訴訟判決により被害者側への賠償に応じていること、法廷で過失を認めて謝罪したことに加え、「経験の乏しい被告をバックアップすべきチームが機能していなかった面は否めず、被告に刑事責任を問うにも限度がある」とし、被告を取り巻いた病院や診療科のチーム医療の不備にも言及した。
判決言い渡しの最後に佐藤裁判長は「未熟だったことを反省すると同時に、大きな障害や痛みを負った被害者に申し訳ないという気持ちを決して忘れずに」と諭した。
判決を受け、被害患者の家族は「執行猶予付きとはいえ、刑事罰が下され、大きな節目を迎えました。医療事故は立件、起訴のハードルが非常に高いと言われる中、長期にわたり慎重に捜査してくださった警察、担当の検察のみなさんに心より感謝を申し上げます」とコメント。患者の代理人弁護士は「一般的な医療事故とは一線を画した、ずさんな手技だと裁判所が認めた」と判決を評価した。
一方、松井被告と代理人弁護士は報道陣の取材に応じなかった。
▼牟礼正稔市長の談話=「市長として厳粛に受け止めている。患者様とご家族に心よりおわびとお見舞いを申し上げる。今後も赤穂市民病院の医療安全体制の強化並びに再発防止に取り組み、信頼回復に努めていく」