■ 1. イラン戦争をめぐる状況
- トランプによるイランへの爆撃が開始されてから約一ヶ月が経過
- イラン前政権は反政府デモ参加者3万人余りを虐殺しており介入の動機は存在した
- 他国による爆撃は国際法に反するため安易に賛同できない
- トランプによるイラン主要閣僚の殺害に賛同するイラン国民も少なくない
- 結果としてホルムズ海峡が閉鎖され国際情勢は悪化し国際法が機能しない世界に近づいた
■ 2. トランプの言動と報道の乖離
- 爆撃から一ヶ月が経過してもトランプの発言はその場しのぎの嘘が大半
- 老人の虚言に付き合わなければならない虚脱感と戦争の悲惨さとの釣り合いが取れていない
- 最も真剣に考えるべき人物が何も考えていないように見えるズレが生じている
■ 3. トランプ再選とアンチリベラルの帰結
- トランプ再選の直接原因は「リベラルが嫌い」という感情的判断
- リベラルの問題点:
- 多様性や進歩史観によるSDGsのような大きな物語の構築
- 上から目線の啓蒙主義・知性主義による市井の人々の軽視
- 結果としてリベラルは傲慢とみなされ選挙で支持を失い続けた
- アンチリベラルの結果:
- 国際法を無視した戦争の開始
- サプライチェーンの破壊
- 落とし前をつけないまま勝利宣言だけが声高にアピールされた
■ 4. 加速主義・新反動主義の責任
- 民主主義を一度壊して再構築するためにトランプを支持した加速主義者も同様の責任を持つ
- 愚かなリーダーを選んで社会に「気づき」を与えようとすれば人が死ぬ
- 戦争で犠牲になった遺族の「まずお前が死ね」というシンプルな問いに加速主義者は答えられない
■ 5. ポピュリズムと民主主義の変質
- MAGAはラストベルトの大衆感情を集め支持母体を拡大した
- SNSの登場により大衆の反応に敏感なその場しのぎの嘘つきがリーダーに選ばれるようになった
- 政治は複雑であるという前提が失われ素朴な大衆感情を出力するだけの装置となった
- アンチリベラル・加速主義・ポピュリズムが感情的判断を政治的に正当化したことで人々は感情で政治を判断するようになった
■ 6. 民主主義と有権者の無謬性
- 右も左も地位を失い「選挙に行きましょう」だけが民主主義の形となった
- 有権者はどの政党・政治家を選ぶかという判断に責任を感じることなく無謬とされている
- 個々人の投票が間違いでなくとも間違ったリーダーが選ばれることがあり遠い国の誰かが死ぬ
■ 7. 亜インテリと政治的議論の劣化
- 丸山眞男が指摘した亜インテリ(体系的知識を持たず耳で知った知識を話す人)がかつては存在した
- かつては亜インテリがキュレーターとして大衆に政治を説く役割を担い床屋政談のような議論の場があった
- 情報化社会においては知識へのアクセスは容易になったが動機づけやコミュニケーションによる自発性の獲得は難しくなった
- Google検索では商業サイトが上位表示されSNSのレコメンドはエコーチェンバーを強化するだけ
- イレギュラーな他者との対話が政治的議論として最も生産性が高いという点は今も変わらない
■ 8. 結論と日本への示唆
- 「愚かなリーダーをトップに据えると実際に人が亡くなる」が中心的主張
- リベラルへの批判は理解できるが戦争の悲惨さを前にすれば「できれば人が死なない世界を望む」という判断に帰着する
- 「議論で仇敵をやりこめる」「陣地争い」「直言による承認集め」「立ち回りによるプレゼンス向上」はくだらない
- 日本ではまだアメリカほどの分断はないが早晩同様の状況になりうる
- 今一度「政治の重大さ」というシンプルな問いを考える時