■ 1. 日本の中小企業政策の根本的特徴
- 日本の中小企業政策は「淘汰を前提としない」点で他国と決定的に異なる
- 市場経済本来の新陳代謝メカニズム(競争→退出→資源再配分)が日本では機能していない
- 「延命」が政策の中心となり、競争力のない企業が市場に留まり続ける構造が形成されている
■ 2. 淘汰が機能しない三つの理由
- 政治構造:
- 中小企業は日本企業の99%以上を占め、雇用の約7割を担う
- 巨大な票田であるため、政治的に「守るべき存在」と位置付けられてきた
- 淘汰や再編を正面から語ることが政策上避けられてきた
- 金融システム:
- 金融機関は不良債権化を避けるため既存の貸出先を延命させる動機を持つ
- 資金を成長企業へ集中させる資源配分機能が弱く「ゾンビ企業」が生まれる
- 企業退出を促すインセンティブが金融機関に存在しない
- 社会的価値観:
- 「会社を潰すこと」が失敗や責任と強く結びついている
- 廃業が経営者にとって名誉の問題となり、金融機関や取引先も退出を避けようとする
- この文化が必要な退出を遅らせる要因となっている
■ 3. 海外との比較
- ドイツ:
- 競争力のある企業を徹底的に育成する一方で、弱い企業の市場退出を前提とする
- アメリカ:
- 挑戦と失敗を制度的に支え、破産を再挑戦のプロセスとして位置付ける
- シンガポール:
- 国家の競争力に資さない企業は支援の対象外とする
- 共通点:
- いずれの国も「選別」を政策の前提としている
- 日本のみがこの原則の例外となっている
■ 4. 淘汰不在がもたらす経済的帰結
- 競争力のある企業への資源集中ができず、経済全体の生産性が停滞する
- これはすでに日本経済が直面している現実である
- 淘汰の議論そのものが政策から消えていることが本質的問題である
■ 5. 必要とされる政策転換
- 「守る政策」から「選ぶ政策」への転換が必要
- どの企業を伸ばし、どの企業を再編し、どの企業に退出を促すかの判断が求められる
- 政治・金融・社会すべてにわたる淘汰回避の構造に手を付けない限り日本の停滞は続く