■ 1. イタリアの脱原発の経緯
- 1986年のチェルノブイリ原発事故を契機に国内4基の原発を1990年までに閉鎖
- 脱原発後から慢性的な電力不足に陥り経済低迷の一因となった
- 右派政治家は長年にわたり原発再稼働を模索してきた
- 2011年の国民投票では福島第1原発事故の直後という時期が影響し94%が再稼働反対票を投じた
- その後は再生可能エネルギー発電の普及に舵を切り2024年時点で電源構成の50%を占めるに至った
■ 2. メローニ政権による原発回帰への動き
- 2022年10月就任のメローニ首相がEUの原発活用推進の潮流を受け再稼働の是非を国民に問う姿勢を強めている
- EUは原発を脱炭素化と脱ロシアの両面に適う電源と位置づけ利用推進を鮮明にした
- 2025年2月のイラン発エネルギーショックにより原発回帰の動きが加速した
- 3月にイタリア当局者がカナダを訪問しフランス当局者と原発に関する協議を行い協力を要請した
- 4月22日にジョルジェッティ財務相がエネルギーショックへの対策として原発再稼働が重要な選択肢と公言した
■ 3. 再稼働を阻む技術的障壁
- 停止から約40年が経過し設備の老朽化が進んでいるため再稼働には細心の注意が必要
- 長期停止により国内の技術者・ノウハウが失われており海外人材への依存が不可避
- 老朽施設より新型のSMR(小型モジュール炉)やAMR(新型モジュール炉)の導入が望ましいとされるが実用化の目途が立っていない
- 原発の新設は10年がかりのプロジェクトであり世界的な需要増でヒト・モノ・カネが逼迫している
- 結果として老朽施設の再稼働が消去法的に選択肢として浮上する構造的ジレンマがある
■ 4. 送電網の未整備と国民世論
- 世論調査(SWG 2024年11月)では回答者の48%が原発新設に賛成し反対は24%にとどまる
- 回答者の80%以上が電力価格の高騰に不満を持ち電力価格低下を条件に新型原発を容認する傾向がある
- 地域差が存在し北部の産業地帯は原発に寛容であるが南部の農業地帯は不寛容な傾向がある
- 南北を貫く送電網が未整備のため南部の再エネ余剰電力を北部に送電できない構造問題がある
- 送電網整備のメガプロジェクトが始動しているが本格稼働までには相当の時間を要する
■ 5. 急進的脱原発がもたらす帰還不能点
- イタリアはドイツと同様に急進的な脱原発の問題点を体現する事例となっている
- ノウハウが失われることで政策の見直しが困難になる「帰還不能点」に早期に到達してしまった
- 漸進的な脱原発であれば再稼働への転換が容易であったと考えられる
- 2027年12月までの総選挙で原発再稼働が争点となる見通しだが政治的意思だけでなく経済的・技術的条件の整備が別途必要
- 今後の課題として原発継続の場合はSMR・AMRの新設推進と原発の有無を問わず再エネ送電網の整備が急務である