■ 1. 辺野古沖転覆事故と沖縄タイムス炎上の経緯
- 3月16日、沖縄県・辺野古沖で小型船2隻が転覆し、同志社国際高校の女子生徒を含む2人が死亡
- 5月1日付の沖縄タイムス朝刊オピニオン面に読者投稿が掲載され、女子生徒があたかも抗議活動の参加者であるかのような内容がSNSを中心に炎上
- 投稿末尾には「天国から二人の声が聞こえてくる。『誹謗中傷にめげず、抗議行動を続けてほしい』と」との文言が含まれていた
- 女子生徒の遺族はnoteで「基地をめぐる抗議活動に参加していたわけではない、誤った認識が拡散するのを防ぎたい」と表明しており、投稿はその内容と真っ向から反する不適切な断定だった
- 投稿者は過去に相当頻度で沖縄タイムスに採用されてきたとされ、実在性を含む苛烈な批判が続いた
- 沖縄タイムスは謝罪する事態となった
■ 2. 山口真由氏(信州大学特任教授)による分析
- ファクトチェックを怠った事実を問題として指摘
- 「天国から~」の部分は読者の言葉を借りて情動に訴えるものだと指摘
■ 3. 新聞とSNS時代の歴史的文脈
- SNSによる情報の民主化により、左派系の新聞はしばしば守勢に回っている
- 18世紀末のフランス革命期における新聞の役割:
- 貴族のサロンに独占されていた政治的議論を広く民衆に開いたのは当時急速に普及した新聞だった
- マラーの『人民の友』は事実の正確性より大衆の怒りを煽る過激な手法でギロチンすら動かした
- 読者獲得をめぐる熾烈な競争は現代のSNSにも通じる
- 現代の新聞の状況:
- 記者クラブ制度などの特権により「報道貴族」と揶揄される
- 大衆よりも特定のコミュニティを囲い込む様子はかつてのサロン化に似ている
■ 4. 新聞がサロンから学ぶべき点
- 情報の鮮度でSNSに勝てなくなった現代においても、かつてのサロンの存在意義に学ぶべき点がある
- 報道倫理の共通基盤:
- サロンでの議論のエチケットは現代の報道倫理に通じる
- 辺野古沖事故での実名報道基準の明示など、現代新聞の共通基盤として評価できる部分がある
- キュレーション能力:
- アジテーションに特化した当時の新聞に対し、サロンはキュレーション能力に秀でていた
- 今回の投稿はファクトチェックを怠り情動に訴えるものであり、キュレーション能力の欠如を示す
- コミュニティの包容力:
- サロンに人が集まったのはつまるところ、自らを価値ある人間と感じさせてくれる主宰者の包容力ゆえだった
- 忠実な貢献者であった投稿者を「内容は極めて不適切」と切り捨てた事実は、今後のコミュニティ形成に影響すると指摘する