■ 1. 評価経済社会の構造とパレートの法則
- 個人トークン・評価経済が一般化しても、誰もが影響力をお金に変えられるわけではない
- パレートの法則により、上位1%のインフルエンサーが富を独占する構造は今後さらに強化される
- 名もなき個人は自分のトークンを発行して競争するのではなく、誰のトークンを運用するかを判断する「投資家」として立ち回ることを強いられる
- 「推し」が暴落・スキャンダルを起こすと、推していた側の評価も一気に暴落する
- 評価経済の根本は「評価」が中心であり、貨幣経済とは並立する別軸として機能する
■ 2. テクノロジーの本質: 特権の民主化
- テクノロジーとは、それまで貴族・大金持ち・王族の特権だった楽しみを一般庶民に解放するものである
- 音楽の民主化の歴史:
- 中世: 貴族が自宅で楽団を雇い、食事のペースに合わせて演奏させる形で楽しむものだった
- 19世紀: コンサートホールが登場し、都会の一般市民も音楽を聴けるようになった
- 20世紀: レコード・ラジオにより誰でも音楽を楽しめるようになった
- 21世紀: 配信によりほぼ無料で楽しめるようになった
- チョコレート・海外果物も同様に民主化され、現在はコンビニで24時間購入できる
- テレビ出演の夢は動画配信で、居酒屋での演説衝動はX・YouTubeで、誰でも実現できるようになった
- テクノロジーは「能力の権力者」(作曲できる人・歌がうまい人・容姿に恵まれた人)の特権も一般市民に解放し続ける
■ 3. 個人トークン発行と評価経済
- 個人トークンの発行は、国家・財閥が独占してきた通貨発行権を個人が行使できるようにするもの
- 新しい権利は新しいリスクも生む:
- TikTok・インスタでの発信はストーカー被害のリスクを伴う
- Xでの政治的発言は炎上リスクを伴う
- 個人トークンは炎上・信用失墜により価値が暴落し、保有者も損失を被る
■ 4. 無名個人が価値を創出する方法
- 広さではなく「価値の深さ」を伸ばすべきである
- 自分が所属するマイクロコミュニティにおいて、嘘をつかない・約束を守るといった行動を継続することで個人の信用を構築する
- 透明度が極まった社会では、マスへの発信による評価向上よりも、過去の行動履歴の透明性・精錬性そのものが信用担保として機能する
- これが岡田斗司夫氏の言う「ホワイト社会」の概念である
- 岡田氏の著作:
- 1995年: 「僕たちの洗脳社会」で評価経済の概念を提唱(現在は全文を無料公開)
- 2011年: 「評価経済社会」として当時の言葉に翻訳・書き直した
■ 5. AIによる創作の変容とミュージシャンの衰退
- AIがDJ的な作曲を行い、著作権が整理された音源をシャッフルして新たな音楽を生成する時代が来る
- 1日に何百もの音楽が人間の手を介さずに生まれ続ける
- ミュージシャンという職業が大量に絶滅する時代が到来する
- テクノロジーは作曲・歌唱・表現等における「才能の特権」を崩壊させ、それらを一般市民に解放し続ける
■ 6. 流通のパワー拡大とクリエイター・芸能界の変化
- 大きな流れとして、クリエイターと消費者の力が弱まり、流通(Netflixなど)のパワーが拡大している
- コンビニがエロ本を取り扱わなくなったことで成人雑誌が廃れた構造と同様のことがエンタメ業界で起きている
- 芸能界の変化:
- 2020年: タレント事務所のパワーが失われ、有名タレントの独立が相次いだ
- 2021年: 放送局・スポンサーが大きく力を失う時代に入った
- Netflixモードは有効な戦略だが、巨大化しすぎたNetflix・Amazon・ディズニー等は数年内に空中分解が始まる見込み
- LGBT問題・特定人種の配役問題・芸能人スキャンダルへの対応がさらに巨大メディア産業を分解へ向かわせる
■ 7. ボランティアとセーフティネットの関係
- フリーランスのゲストが語る内容:
- 年間約300時間をNPOへの無償サポートに充てている
- 動機: フリーランスで倒れた際に生活保護を受けられない可能性があるため、恩を配ることでセーフティネットを構築している
- 地域コミュニティでのボランティアの課題:
- 参入障壁が高い
- 選択肢の種類が少ない
- タイミングのマッチングが難しい
- ネット上で薄く広く活動することで上記課題を回避しているが、注意力をネット上に「クラウド化」している状態である
- ウィスコープ等のツールにより、地域の困り事を可視化するマッチングが可能になりつつある
■ 8. 「助けてほしい」の可視化・定量化と助け合いの構造
- 困り方を可視化・定量化できる人が強くなる社会になる
- 弱者の方が強い理由:
- 「感謝」という支払いと「生きるに値する実感」を与えられるから声を出せる
- 助ける側にとって、助けることそのものが「消費品」として価値を持つ
- 悩みを持つ学生がFacebookの非公開グループに参加したところ、「答えたい」大人も大量に集まった
- 困り事を可視化・定量化し、それに応じたマッチングの仕組みを作るほどうまく機能する
- 近くの人を助けつつ遠くの人も助ける二重の助け合いが今後生まれてくる
■ 9. 新しいビジネスモデルの構想
- 「奢る酒場」モデル:
- 困っていて腹が減っている人に食事を奢り、複数の大人が悩みを聞く
- 時間制限を設けて解散することで依存関係を防ぐ
- 相談する側は無料で食事を得、相談に乗る側は役に立てる実感を得る
- 「第三の場所」として食事・避難所・古着・書籍を提供するメタ学校・メタ家庭的な機能を持つ
- 「おまけ」課金の発想:
- 日本人はコンテンツそのものへの課金を嫌い、付随サービス(食事・場所等)への課金を受け入れやすい
- 海洋堂のフィギュアのおまけ事例: 食べ物がおまけ化し、フィギュアが主目的になった
- 相談そのものへの課金ではなく、食事・場の提供に対して課金する構造が有効
- 「人を助ける権利」の商品化:
- 相談に乗る側から年会費を徴収し、その一部を困っている人への支援として積み立てる
- 年会費の内訳を透明化することで信頼性を担保する
- 助けることへのクラス・ステータスを付与する仕組みが機能する
■ 10. 評価経済が機能する規模と個人通貨の可能性
- 評価経済は数万人単位では機能しにくく、1,000〜2,000人規模の小グループで機能しやすい
- 資本貨幣経済が大規模であればあるほど法律化されるのに対し、評価経済は細かい単位の小グループに分けてこそ機能する
- 個人通貨(時間・スキルの交換)の可能性:
- 料理教室の例: 1人3,000円×10人で料理室を開くような個人間の小さな経済圏
- 「時間券」の発行: 3,000円の料理教室を受けた対価として「お手伝い3時間券」を発行する
- 関係性が絶対的な基準: 同じ1時間でも相手によって換算率が変わる(評価経済の固有の問題)
- 歴史的な時間紙幣の試み:
- ソ連または中国で労働時間を通貨とする試みが行われた
- すべての労働者の1時間を等価とするという共産主義的前提のもとで試みられたが機能しなかった