■ 1. 退職勧奨の背景
- 大手専門商社の人事部員が、人事部長よりA氏(生産管理部所属)への退職勧奨を命じられた
- A氏は20代半ばからうつ病を患い、会社の休職制度を利用して7回にわたり休職を繰り返した
- 当時の休職制度は、最長4年間の休職を認め、復職後6カ月間のフルタイム出勤継続で休職権利がリセットされる仕組みであった
- A氏はこのサイクルを繰り返し、30年超にわたり休職と復職を反復した
■ 2. A氏の状況と社内での位置づけ
- 社内では「4年に一度オリンピックのように戻ってくる」と揶揄される存在となっていた
- 復職のたびに受け入れ現場が困惑し、組織の機能不全を引き起こしかねない状況にあった
- 面談時点でA氏は57歳であり、30年以上を休職制度の狭間で費やした
■ 3. 退職勧奨の経緯と条件
- 面談は会議室で実施され、人事課長が現状の継続が持続不可能であることを直接伝えた
- 会社は社外専門機関による3カ月間の「復職支援プログラム」修了を条件として提示した
- プログラムを完遂できない場合は就労不可能と認め退職に同意する旨の誓約書への署名を求めた
- 複数回の面談を経てA氏は誓約書にサインし、プログラムへの参加を開始した
■ 4. 結末
- プログラム開始から1カ月後に遅刻が増加し、2カ月目中盤に通所を断念した
- 最終面談においてA氏は「本当は、もっとまともに働きたかった」と述べ、涙を流した
- 退職手続きが進められ、30年以上に及ぶA氏の会社員生活が終了した
■ 5. 教訓と考察
- 休職制度の問題点:
- 会社の休職制度はセーフティネットとして機能する一方、制度の盲点にはまることでキャリアを消費させる結果をもたらした
- 制度の要件を機械的に満たし続けることが、当事者の長期的な利益にならない場合がある
- 人事部門の責任:
- 人事部門が「ルールの要件を満たしているから」と機械的に処理し、A氏個人の人生に真剣に向き合わなかった
- 事なかれ主義が問題の長期化を招き、A氏からキャリアを奪う要因となった
- 早期介入の重要性:
- 50代以前に適切な対応を取っていれば、A氏が別のキャリアを選択できた可能性がある
- 真に社員の人生と向き合うことが人事の本質的な役割である