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なぜダラダラ働くほうが得なのか?働き方改革が進んでも、長時間労働が変わらないワケ

要約:

■ 1. 日本の労働時間規制の構造的問題

  • 2019年の労働基準法改正により、米国型の残業割増賃金規制に加え、欧州型の労働時間総量規制が導入された
  • 欧米では専門職に対する労働時間規制の適用除外制度が機能しているが、日本ではほとんど活用されていない
  • 現行制度では、個人裁量の高い専門的業務においても工場労働と同様の規制が機械的に適用される
  • 長時間をかけて成果を達成するほど報酬が増えるという非効率な構造が生じている

■ 2. 裁量労働制・高度プロフェッショナル制度の限界

  • みなし労働時間を適用する裁量労働制が設けられているが、深夜・休日には残業割増賃金が強制適用されるため、欧米のような完全な適用除外にはなっていない
  • 高度プロフェッショナル制度(年収1075万円以上等の要件を満たす職務を労働時間規制から除外する制度)は、適用条件が厳しくほとんど利用されていない
  • 職務範囲が不明確な日本では能力の高い個人に仕事が集中する傾向があり、残業割増賃金の完全撤廃が困難とされている

■ 3. 「稼ぎたい自由」と規制緩和の方向性

  • 高市政権下で、労働時間規制が長時間労働で高収入を得たい労働者の「稼ぎたい自由」を損なうという主張が高まっている
  • 現行の労働時間上限はすでに高い水準にあり、上限引き上げよりも適用除外対象の拡大を検討すべきとされている
  • 労働者の健康確保がデジタル技術等の別の手段で担保され、自由意思が明確であれば、労働時間規制の弾力化は可能とされている

■ 4. 労労対立: 多様な労働者間の利害衝突

  • 日本的雇用慣行を「公平な仕組み」とする評価は、正規社員の視点に偏っている
  • 企業内訓練による熟練労働者の形成は効率的だが、以下の労働者間で利害の対立が内在する:
    • 大企業と中小企業の雇用者
    • 正規雇用者と非正規雇用者
    • 男性と女性
    • 中高年齢層と若年層
  • 政府は伝統的な「労使対立」の枠組みにこだわっており、多様な労働者間の「労労対立」への対応が不十分である
  • 大企業では経営陣と正規雇用者の距離が近い分、正規と非正規、大企業と中小企業の雇用者間の事実上の「身分差」が広がっている

■ 5. 解雇の金銭補償ルール制定の政治的困難

  • 欧州型の解雇金銭補償ルールの制定は政府にとって緊急課題だが、政治的に困難な状況にある
  • 現状で利益を得る集団が改革に反対している:
    • 大企業の労働組合: 労組支援による長期裁判で青天井の補償金を得られる可能性がある
    • 中小企業の経営者: 現状の低補償水準での解雇が可能な状況を維持したい
  • 現状の被害者は以下の層である:
    • 補償金が少ない中小企業の労働者
    • 能力不足での個別解雇が困難なため定年年齢で一律退職を迫られる労働者

■ 6. デジタル化と労働市場の変化への対応

  • 現行の労働基準法は、大企業による需要独占市場を前提とした労働者保護を目的としているが、現実の労働市場は競争的になりつつある
  • 労働力人口の急減・高学歴化により労働者の交渉力が高まっており、低賃金・劣悪企業から高賃金企業への移動促進が経済効率化に貢献する
  • 流動的な労働市場とは転職頻度が高い市場ではなく、優秀な人材が働き続けたい企業に集まる市場を意味する
  • 長時間労働(インプット)ではなく仕事の成果(アウトプット)を基準とする企業が共働き世帯を活用することで好循環が生まれる
  • 急速なデジタル技術の普及により、過去の熟練が一挙に陳腐化するリスクが生じている
  • 女性、高齢者、外国人等の多様な雇用者を活用するために、労働市場の変化に中立的な制度の維持が政府の重要な役割となる