■ 1. 裁判の経緯と判決
- 被告人質問最終日(12月4日)、裁判長から「パイプ銃製造過程での葛藤の有無」を問われた山上被告は、統一教会への感情から銃を製造したと述べたが、安倍元首相が「殺害されなければならなかったのは、間違いだった」と語った
- 検察は動機について「安倍氏を選定した理由に論理的飛躍がある」として無期懲役を求刑した
- 弁護側は「最長でも懲役20年が相当」とする最終弁論を行った
- 山上被告は最終陳述を拒否し、動機の核心を法廷で自ら語ることはなかった
- 1月21日の判決公判にて、検察の求刑通り「無期懲役」が言い渡された
- 裁判長は不遇な生い立ちの影響を一定程度認めながらも、「殺人の意思決定に至ったことには大きな飛躍がある」と認定した
- 動機面における「飛躍」を埋めることができなかった点が、無期懲役の判断に大きく影響した
■ 2. 面会での発言と仮説の形成
- 判決前の1月14日と16日、鈴木エイト氏は大阪拘置所で山上被告と面会した
- 山上被告は「僕は右翼なので」「結局、国益なんですよ」と複数回発言した
- 事件前にXの二つのアカウントが極右的な投稿を理由に凍結されていたことも自虐的に明かした
- 判決後、弁護士を通じてテレビ報道された「自分のせいで安倍元首相を失ったことで『国益』を損なった。非常に大きな責任を感じています」という発言が、鈴木氏に仮説をもたらした
- 鈴木氏は、被告人質問での「間違いだった」という発言が、安倍氏の死そのものへの言及ではなく、「安倍氏が統一教会と深い関係を持ってしまったことへの言及」を含むダブルミーニングだったと推測した
■ 3. 真の動機の確認
- 1月26日の面会で、鈴木氏が法廷発言を印刷したA4用紙を示しながら仮説を提示すると、山上被告は沈黙の後「いろんな意味を込めました」と語り、仮説を裏付けた
- 山上被告のアンビバレントな立場:
- 統一教会に家庭を破壊された被害者としての側面
- 安倍元首相の信奉者・崇拝者(右翼)としての側面
- この相容れない矛盾を解消する唯一の手段として、安倍氏の命を奪うことを選択したことが「動機の核心」である
- この動機は、検察が指摘した「安倍氏をターゲットにした論理的飛躍」と、奈良地裁が認定した「不遇な生い立ちから殺人の意思決定への飛躍」の両方を埋めるものとなっている
■ 4. 山上被告の現在の心境
- 山上被告は「全面的に謝罪するわけにはいかない。全面的な謝罪というのは、少し違うと思います」と語った
- 安倍氏の殺害を反省・悔いているが、それは「国益」を損ねてしまったためである
■ 5. その後の展開と著者の見解
- 弁護団は2月上旬に控訴手続きを取った
- 鈴木氏は3月上旬(東京高裁が統一教会に解散命令を下した時期)に改めて面会し、内容の公表について山上被告の了承を得た
- 著書「アンビバレント 山上徹也が私だけに明かした謎の核心」(講談社、5月27日刊)において、法廷での発言を全て再現し「動機の核心」に迫る過程を詳述している
- 刑事裁判は法を破った被告人に国家が刑罰を与えるシステムに過ぎず、事件全体の構造を示すことがメディアにかかわる者の役割であると鈴木氏は主張する
- 鈴木氏は山上被告の量刑軽減を目的とするのではなく、審理が尽くされたうえで量刑判断がなされるべきとの立場をとる
- 「真の動機」の公表が控訴審における弁護団の立証方針に与える影響は未定である