■ 1. 「JTC」が新たな批判の的に
- 2010年代半ばをピークに「ブラック企業」への批判は低下傾向にある
- 代わりに「JTC」(Japanese Traditional Company)への批判がここ数年で上昇し、「ブラック企業」に接近しつつある
- 人々の不満の矛先が「ブラック企業」から「JTC」へシフトしつつある
■ 2. 「JTC」の定義と特徴
- 「JTC」は日本企業の伝統的なカルチャーへの違和感・嫌悪感を表明する文脈で使われる略語
- 具体的な特徴:
- 上意下達を当然とする企業風土
- 意志なき伝言ゲーム
- 縦割り組織
- 過剰な忖度
- 硬直的で変化を好まない日本的な企業体質
■ 3. JTCエピソードの具体例
- 紙資料のホチキス止めの位置・角度を上司に注意される
- 文書システム更新後の印刷方法の変化に役員が激怒する
- 社長を待たせる時間を削るために従業員が資料を抱えて数百メートル全力疾走することが事務マニュアルに記載されている
- 判子を上席者の方へ傾けて押す「謎文化」が15年以上経っても消えない
- 新入社員に宴会での一発芸を強いる文化はほぼ消滅したが、15年かけてその程度の進展に留まる
■ 4. JTCカルチャーを見直すべき理由
- 人手不足・人材獲得競争が激化する中でもJTCカルチャーは見直されていない
- 若年層の獲得・定着のためには見直しが必要であり、賃上げと比べてコストが小さいにもかかわらず手が付けられない状況が問題の根深さを示している
- 「上意下達」「縦割り組織」の是非はケースバイケースだが、いずれ見直しが必要になる
- 「伝言ゲーム」「過剰な忖度」は明らかに無駄で生産性の低下に寄与している
- 「過剰な忖度」により真実が捻じ曲げられ正確な情報がトップに上がらなくなることは、企業の破滅につながる極めて危険な状態である
■ 5. 日本企業の従業員エンゲージメントの低さ
- 大卒新社会人の3割が3年以内に離職するという問題は以前から指摘されている
- 近年は中堅クラス(30代〜40代前半)の離職が増加し、企業の危機感が高まっている
- ギャラップの調査(2025年版)では日本のエンゲージメントスコアは7%で、世界平均(21%)を大きく下回り世界最低レベルが続いている
- 多くの企業がエンゲージメント向上のためのアンケート調査等に取り組んでいるが、実効性のある施策には至っていない
■ 6. エンゲージメント向上が困難な理由
- 従業員にとってプラスなことは経営者にとってマイナスになるというゼロサム性がある
- 経営者と労働者のパワーバランスに大きな変化が生じない限り、実効性のある対策は打たれない
- 世代間の価値観ギャップが拡大している:
- 中高年層(経営層): 会社と自分を一心同体と考える
- 若年層(労働組合員層): 会社への帰属意識が薄い
- 両者の板挟みとなる中間管理職世代は強いストレスを感じ、FIRE願望が高い傾向にある
■ 7. 「静かな退職」と「リベンジ退職」
- 「静かな退職」: 会社に所属しながら最低限の仕事しかしない行動
- 欧米の非エリート層においてはむしろ一般的な労働スタンスとされる
- 「リベンジ退職」: 会社や上司への不満・怒りを晴らすために意図的に組織に損害を与える形で退職すること
■ 8. 不満の声が出なくなることの危険性
- 不満を声に出して言っている従業員はまだ会社にとどまる意志と改善への期待を持っている
- 苦痛を感じているはずの人が何も言わなくなる時が最も危険で、会社への見切りをつけた可能性が高い
- 「特に大きな不満の声はないが淡々と人が抜けていく」状況は、「この会社と対話すること自体無駄」と従業員に思われている危機的な状態である