■ 1. 騒動の概要
- SNS上で、カルトや陰謀論をウォッチしてきた論者たちがALPS処理水をめぐって対立している
- 物理学者・菊池誠は「基準値以下に希釈すれば安全」という科学的コンセンサスに立つ
- 選挙ウォッチャーのちだいは「薄めても総量が増えれば環境への影響がある」と主張する
- 科学的見地からは菊池の立場が妥当であり、ちだいは量の概念の理解に問題がある
- ちだいと共著を出した黒猫ドラネコは「デマを批判する本をデマを広める人と書くこと自体がおかしい」と批判されている
■ 2. 「全面的な信頼・不信」という思考の罠
- 前提として、誰もすべての領域で正確な認識を持てるわけではない
- 各論者の専門領域:
- 菊池誠: 放射線科学において卓越した知見を持つ物理学者
- ちだい: 選挙の現場取材に強く、立花孝志周辺への突撃記事は高評価
- 黒猫ドラネコ: トンデモ集会への潜入レポートを長年継続
- ある人が「X分野では信頼できる」が「Y分野では疑わしい」というのは当然の事実である
- 誰かを「全面的に信頼できる人」か「全面的に信用できない人」かに二分するのは思考の罠である
- 是々非々の原則:
- 正しいと思えることは、それが嫌いな人物の発言であっても受け取る
- 正しくないものは、それが親しい人の発信であっても礼儀正しく距離を置く
■ 3. 共同作業がもたらす是々非々の歪み
- 長年一緒に活動してきた仲間と本を出すことは人間として自然な営みである
- しかし第三者からは「是々非々の矩を超えた」と見られるリスクが生まれる
- 人は誰かと共に仕事をする中でその人の誠実さに触れ、誤りを庇う方向に動いてしまう
- これは認知的不協和を避けるための無意識の補正であり、本来の是々非々とは相容れない
- 人柄への敬意と主張への評価は切り離さなければならない:
- 「あの人はいい人だから正しいはず」は論理ではない
- 「信頼している人と仲が悪いから間違っているはず」も論理ではない
- 講演・同席・共通の知人などで「ズブズブの信頼関係がある」と思い込む現象も同様の単純化である
■ 4. 「礼儀正しく無視する」技術
- 間違っていることを見かけたとき、常に全力で叩く必要はない
- 批判の作法:
- 「この点については同意できない」と明示した上で深追いしない
- 相手の人格を否定せず、論点だけに絞る
- 科学的に正しいことと、それを伝える作法は別の話である
- 菊池誠の例:
- ALPS処理水については科学的に妥当な主張をする物理学者
- 同じアカウントで財務省陰謀論(「財務真理教」「日本最大の破壊的カルト」等)を展開する
- 専門外の領域では別人のような認識を示す典型例となっている
■ 5. 結論: 是々非々は自分への問いから始まる
- 「陰謀論批判を生業にしてきた人たちが陰謀論的かどうかで内輪揉めしている」という皮肉な構図
- 陰謀論・カルト宗教に警鐘を鳴らしてきた当該人物らの社会的貢献は間違いなく大きい
- 人間はすべてにおいて正しい情報だけを発信できるわけではないという当然の理屈がある
- 情報を受け取るにあたって「自分は是々非々でいられているか」を問い続けることが重要
- 答えを持つ前に問い続けることが唯一の道である
■ 6. 補遺: 実績ある人物の専門外における誤認という普遍的問題
- 投資家・経営者・政治家など優れた実績を上げた人物でも、別の話題では全く賛同できない主張をする場合がある:
- 例: 「徴兵制にするべきだ」「アポロ11号は月に行っていない」「コロナウィルスは人工兵器」等
- 酒席でスルーしても後で真剣に蒸し返されるリスクがある
- 経営や特定政策で抜群の成果を上げた有力者が、専門外では誤った認識を持つのは普遍的である
- 「どんな実力者でも、知らない分野で自分の考えを貫こうとすると周辺が幸せにならない」ことへの対処が社会的課題となっている